第10話 サプリメント
「今日の分飲んだか?」
「たぶん、飲んだ。かもしれない」
私には毎日飲んでいる薬がある。
寒がり、物忘れがひどいでお馴染みの病気。
主人は優しく聞いてくれるが、内心、自分で
管理しなさいと思っているに違いない。
飲み忘れ防止の為に、百円均一で三十日分の
プラスティクの薬入れを買った。
もう安心だ。日付けも油性ペンで書いた。
毎朝の確認会話の煩わしさも無くなる。
調子にのって、鉄剤だの、ビタミン剤だの余裕
があるので一緒に入れる。
更年期はただでさえ物忘れがひどくなる。
洗濯物の終了音が陽気なリズムで鳴る。
お疲れ様と洗濯機に挨拶し、これまた御陽気に
ふたを開ける。やっちまった。中味が空だ。
洗剤だけを垂らし込まれた洗濯機。
さぞかしビックリしただろう。
「 もう一度回って下さい」
また洗濯物を入れてピッと押す。その間、
お煎餅など食べませんからと約束して、薬と
サプリメントを摂る。健康のためのヨーグル
トも必要だと冷蔵庫に行く。
あっ、昨日りんご貰ったんだ。
食べかけのチョコレートもある。忘れてた。
それからやっぱり、紅茶も飲もう。
こたつの上が一人おやつタイム。
あらぁ、もうすでに今日の分のサプリメント
が空になっている。カレンダーを確認した。
せっかくマジックで書いたのに、日付を間
違えていたらしい。残念すぎる脳。
気持ち切り換えよう。幸年期だもん。
ハダカデバネズミは歯が丈夫だ。
大好物の塩煎餅も頂いた。
なんか遠くの方で洗濯機がガタガタと反乱の
脱水してる。
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