跳ねない球

囲会多マッキー

第1話

卓球とは、40ミリのボールを打ち合って勝敗を決める競技。他にもいろいろあるのだが、今はこれくらいにしておこう。きっとこの物語が終わる頃には基本的なルールは知ることになるだろうからだ。これは私が本当に経験した物語である。


何故だろう、ボールの跳ね方が違う。音はそんなに違和感はないのに⋯⋯。俺はその球を手で掴んだ。


「この球、割れてないか?」


これはダブルス(二人がペアとなり試合する形式)のパートナーとラリーをしていた時の話だ。確かに割れている音がする。卓球の球はヒビが入ったり、少しの風でさえも影響を受ける競技だ。台やラケット、ボールがほかの競技に比べて小さい分、色々と細かいことに気を配らなければならない。


俺達はボールが割れていないか、台の上にその球を置いてラケットをその上に乗せて少し力をかけて球を転がした。もし、割れていればこの時に「ピキッ」という音がする。


「あれ⋯⋯割れていないな」


しかし、そこからは全く割れている様子は感じられなかった。再びその球で打ちあうが、やはりおかしい。


「球、変えてみようか」


「そうだな」


俺たち二人は球を別の球にした。これで跳ね方がおかしいはずはない。おかしいはずがないのだが⋯⋯


────何故か跳ねなかった。


ならば、と思い台を確かめた。俺の学校の台は古いものだから台がおかしい(塗装が剥げたり、木材なので欠けたり、割れたり)ということはザラにある。

しかし、今回は台が原因でもなかった。


────ならば何が原因なのだろう。


「気温のせいじゃない?」


「多少はあるだろうけど、ここまで跳ねないってことはないでしょ⋯⋯」


「そうだよな⋯⋯俺らの回転がそんなにかかってるわけないし⋯⋯」


認めたくはないが、事実である。世界卓球というものを見た人なら分かるが、まず回転量や速度が違うのだ。学生があの回転を出すのは相当な練習量が必要になるだろう。


「もしかして⋯⋯」


彼はおもむろに上を見上げた。すると、エアコンが動いている。しかも冷房だった。その瞬間に、こいつが原因だと悟る俺たち。エアコンを切ると先程までの球はしっかりと跳ねるようになった。


────しかし、他にもいろいろあるのである。


それは次回のお楽しみです。

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跳ねない球 囲会多マッキー @makky20030217

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