わたし日記

こんぶ

第1話 東京タワー

目が覚めたら、東京タワーの上にいた。東京タワーの先端部分の尖っている部分、シャープペンの芯のような部分がなく、白い鉄板のようなものが敷かれており、私はそこに立っていた。白い鉄板は硬質で、高い場所になんの支えもなく立っている私を不安にさせるのに充分な冷たさだった。

「うわ、うわああ...」

下が見えないあまりの高さに平衡感覚もおかしくなり思わずふらつく。しかし人1人が直立出来る程度の広さしかない正方形の鉄板の上でそれは命取りだ。ふらふらと倒れそうな体をなんとか持ち直す。

誰か助けて。こんな所から落ちたらしんでしまう。恐怖から涙が溢れてくる。どうしようかと周りを見渡すと、少し下の方に急なカーブの高速道路が目に入った。こんな高さにある高速道路なんて思い返せば奇妙な世界だと思うものの、その時は特に不思議に思うことは無かった。そして、不思議な高速道路から大きな声が聞こえてきた。

「おーい!どこにいるんだ!」

高速道路を見ると、なんと母と某爆弾ゲームの白色のタイプのプレイキャラが車を運転しているじゃないか。母が私を探してくれている。その安心感に私は思わず手を伸ばしてしまった。

「あっ」

家族が見えた安心感からか、自分が板一枚置いただけの東京タワーに立っているということを失念していた。急な体制の変化に私は大きくぐらついた。そして、遂に落ちた。

「いやぁぁあああ!!」

まるでジェットコースターが降りる時のよう

な浮遊感。恐怖に体が強ばる。落ちている時間は何時間にも感じた。もしかしたら東京タワーと認識していた建物はもっと高かったのかもしれない。このままでは死ぬと思った。そう思ったら、体が勝手に動いた。くるっと一回転して足を下に持ってくる。そのまま私はコンクリートの上に着地した。一切の怪我を負うことなく。

「あ、あはは...はは...」

恐怖と極度の緊張から腰が抜ける。なぜ自分が生きていられたのかわからない、しかし私は生きているのだ。思わず笑い声が口から出る。

ふと正面を見ると見知らぬ銀行から、ピクルスを持ったある市の市長がこちらにやってくるのが見えた。人が居る安心感から視界がどんどん真っ暗になっていく。それが、私が最後に見た光景だ。気付いたら私はベッドの上で、あの時のようなことは無く、普通に生活している。

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