第4話 平原の首領
全速力で色々遠回りをしながら、湖畔から逃げて来た。
木の上で、数分ほどの眠りにつくほどの休息を行っただけだ。
もうすぐへいげんに差し掛かる所だった。
「貴様ら何者だ!」
「ここはライオン様の縄張り...!」
黒と白の、角と武器を持ったフレンズが立ち塞がった。
「あぁ...?縄張りだぁ...?」
「うちらを邪魔すんの、やめてくんない?」
彼女らは不良の様であった。
服はヨレヨレに乱れ、すす汚れてる。
片方は目付きが悪く、鉄パイプを持っている。
もう片方は腕を組み細い目をしている。
「何だと...?」
「よくもそんな大口を...」
武器の矛先を向ける。
「やれんもんなら...」
ガンッ!!
鉄パイプで岩を叩いた。
「やってみろよ」
フレンズらしからぬその形相に、耳打ちした。
「やべぇよ・・・、あいつら」
「やべぇって言っても・・・」
"けものは居ても除け者はいない"
そんなクソッたれな理想、いや、自然法・・・
無くなっちまえばいいんだ。
私達を常識外れと見なして、無視するじゃないか...。
周りと間隔が"ズレ"ているだけでっ...!
ガンッ!
「ア゛ッ...」
「オ、オリックス!!」
鉄パイプで殴られたオリックスは倒れこんだ。
「バーカ!」
「無様だねー、へへへっ!」
「き、貴様らッ!!!
だ、大丈夫か、オリックス!!」
「頭が...、痛い...」
左肩に鉄パイプを担ぎ、広場に向かう。
「アイツの表情、最高だったよなぁ!」
右腕の肩をフェネックに回しながら質問した。
「マジでね。最高だった」
彼女も微笑んで答えた。
広場に出ると、数匹のフレンズがいた。
楽しそうに呑気に遊んでいる。
「楽しそうだねー、君たちー」
フェネックが声を掛ける。
タイリクは密かに後ろに鉄パイプを隠していた。
「ヘラジ...、カ様...」
「カ、カメレオン!?お前、どうした!!」
顔中痣だらけ、口からは少量の血を流している。
こんな形相の彼女は見たことがない。
「ひ、広場に...、イタタタ...」
「無理するな・・・。こんなことをしたのは、どこのどいつだ?」
「アッハハ、たのし~」
フェネックは恥じらいもなく、大股を広げしゃがむ。
「久々だよ、こんな愉快なのは。っふふふ!」
タイヤの上で足を組み、ゲラゲラ笑った。
目の前には、怪我をして伸びているヘラジカ達の仲間がいた。
パイプで殴ったり、直接だったりと、色々。
「君達か、こんなことしたのは」
「ウチの部下に手を出したのも君達なんだよね」
二人の目の前に現れたのは、この平原を支配するリーダー格だった。
「だからぁ?」
他人事の様な口ぶりで言う。
「ちょっと遊んでただけなんだけどなぁ...、不思議だねぇ。
気付いたら目の前に血だらけでフレンズが倒れてたんだ」
ケラケラとタイリクは笑った。
「けものは居ても除け者はいない・・・、この精神を忘れたのか?」
ヘラジカは睨みながら尋ねた。
「皆仲良く助け合って協力するのが、このパークの掟だろ!」
ライオンも声を低くして言う。
「はぁ~?何だそれ?
掟だの精神だのうっせーんだよ」
タイリクが鉄パイプを地面で突いた。
「私らはねぇ~、パークを支配するんだ。
弱い奴らに私らは強いって証明しとかないとぉ・・・」
「支配する・・・?ハッ、何かと思えば・・・」
「寝言は寝て言うんだな」
「随分舐められたものじゃないか、なぁフェネック」
「そうだねー。支配者の力を見せてやろうよ、タイリク」
「やめておけ。私は森の王、ライオンは百獣の王と呼ばれてるんだぞ」
「君達が勝てるわけない。そんな小道具を使ってもね」
二人はとても自信満々の様子だった。
「・・・上等だオラァ!!」
「ハァ・・・、意外としぶとかったな」
「だな・・・」
腰の上にライオンの片足を置かれ、髪を鷲掴みにされる。
「ウグッ...」
地に伏され、ボコボコにされたのはタイリクだった。
「てめえ・・・」
ヘラジカは、フェネックの襟元を持ち揺さぶった。
彼女もまたヘラジカとライオンに刃向かった。
「私の仲間もお前が今感じている痛さを、体感したんだぞ」
「ははっ...あはは...」
「何がおかしい」
「もう泣かないって決めたんだ...。支配者は強くないとダメだから」
涙目を浮かべつつ笑顔を浮かべていた。
その時だった。
「ア゛ア゛ッ゛...!!!」
ライオンの聞いたことのない声だった。
「ライオン?」
ヘラジカは振り向いた。
「・・・ばーか」
フェネックはヘラジカが余所見をするのを見計らい、
ある攻撃を喰らわせた。
「があ゛っ!?!?」
「さあフェネック...!一転攻勢だ...!」
「はいよ・・・」
「ああっ...、あああ....」
「ぁぁぁぁぁ....」
二人は唸り声を上げて悶絶していた。
その隙にボロボロになりながらも、
タイリクはフェネックを肩で支え、平原を歩き去ろうとしていた。
「楽勝・・・、だったね」
強気な発言をタイリクはした。
「あはは、そうだね...。
股と腹を蹴っただけであんなにのたうちまわるなんて...」
「いい悲鳴だよ...。どっかで傷を癒さないとね」
「うん...」
二人はパークを恐怖のどん底に突き落とすため、山を目指す。
負った痛みに耐えながら、闇夜に消えて行った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます