来訪者
前座
皆、オレが来るのを待っていた。
「遅くなってすまない。」
「いいさ。相変わらずお前は優しいな、いつも相談にのってやるなんてさ。」
「ああ・・・」
正直あの話は衝撃だった。あまり他人には話したくないし、第一その人と遭ってしまったらお互い気まずいと思う。今までの相談の中で一番(オレが)辛い話だった。
「そうか、そんなにきつい話だったのか。いいぞ、別に俺と共有してくれても。」
「それは、少々勘弁。」
「そうかい。」
「・・・」
「・・・」
コイツとは本当に小さい頃から一緒にいる。それだけにお互いに胸の内を吐露したり、お互いのしてほしそうなことが大体分かる。今さらながらいい友を持ったものだ。
「シュウナちゃん、ゴメン待っててもらっちゃって。」
「・・・いいよ、別に。」
彼女もクラスメートで、家も近いから一緒に下校する。だけど、彼女はあまり心を開いてくれない。少々喋りにくいカンジだ。
「じゃあ、皆また新学期に。」
「バイバーイ。」
「また、明日な。」
「おう。」
そういって別れ、ハツキちゃんと二人になった。
「ハジメくん、小さかった頃<路地裏軍>なんて組織作って遊んでいたの、憶えてる?」
「ん?そんなのやってたっけ?」
「憶えてないの?ほら、ハジメくんとリュウくんと私と、あと■■■ちゃんとその双子の■■■ちゃんの五人で、遊んでいたじゃない。」
不意にニシカタとの話の後、突然頭に浮かんできた少女のことを思い出した。
そうか、彼女はずっと昔、仲がよかったんだっけ。<路地裏軍>はある日、突然、何もなかったかのように消えた。もうあまり憶えていない。
「・・・ハジメくん?」
「ああ、いや大丈夫。なんか全く憶えてなくてさ・・・」
「・・・」
「じゃあ、新学期に。」
「うん・・・じゃあね。」
一人目
「ただいま。」
玄関のドアを開けオレはそう呟いた。誰もいない。良かった。
程なくベルが鳴り、迎え入れた。「白狐」の組織長ではなく、確かオレと同じクラスの・・・
「卜部賢太だ。どうぞよろしく。」
「お、おう。よろしく。」
軽く挨拶を交わし、相手を見る。一見普通の少年だ。だが・・・
「いきなり押し掛けて来ていきなり忠告だがな。
西方東哉とは関わらないほうがいい、いや関わるな。危険な目に遭うぞ。」
「・・・はい?」
何を言い出すんだコイツ・・・
「お前は知らないだろうが、あいつは人間としてこの社会に生きる上で最も危険な能力を所持している。お前が関わらないと約束するまで、俺はここから動かない。さあ、どうする。」
何だ?喋り方がいやに上からだし、重苦しいし、目の色が淀んでいる。正直お前こそ常人とは思えないな。
「わざわざ忠告に来てくれるのは嬉しいんだけど、生憎それはムリ。今日のところは帰っていただきたい。」
「何?」
「言ってることが分からないかな。あなたの言うとおりには出来ないって言ってんだよ!」
「・・・そうか。仕方が無い。」
彼は交渉決裂を悟ったようだった。
「なら憶えとけ。お前は明日、必ず死ぬ。と」
「・・・何だよ、それ。」
新手の脅しか?!
「こちらは本気だ。聞く所によれば、お前自身能力所持者だそうだ。特に何もしなければ何もしないだろう。だが、再度あいつと接触した場合、お前も同じものとして見なすが、それでもいいか。」
この不気味な少年は何が言いたいんだ?
「ああ、それでもいい。もともとこういう気質なんでね。忠告ありがとう。帰ってくれ。」
「・・・」
彼は、仕方なさそうに頷き、ドアへと向かった。
最後に一度振り向き、
「後悔しても遅い。」
と呟き、そのまま出て行ってしまった。
今日は冗談抜きで、おかしなことが起こる。まあ、もしかしたらオレの好きなアニメみたいに、なにか非現実的なことが起こるんだろうか・・・
そんな妄想をめぐらせていると、再び玄関のベルが鳴った。
「はーい」と返事しながら、次はどんな人が、オレの目の前に現われるのだろうか―
なんて考えていた。
二人目
玄関のドアを開け、瞬間オレはその異様な光景を目にすることになった。
「誰ですか、あなた。」
「え・・・ モエハちゃん紹介してくれなかったたんだ・・・」
ああ、てことは今度こそ白狐の・・・
そうか、そうだったんだ。でも・・・正直不審者にしか見えないな・・・
「んじゃ、どうぞ。中に上がって。」
「ええと、自己紹介。私は、松平結月。ユズって呼ばれているの。それから・・・」
「あ~待ってくれ。ほとんどの話はMから聞いてる。問題なのは、その・・・なんとかっていう能力のこと。それとオレがどんな関係にあるっていうんだ?!」
「それは、入ってくれないと教えられない機密情報。」
「あのなあ、オレはさ・・・ まあいいか。」
「・・・できればキミに仲間になってほしいんだけど・・・」
「・・・」
「・・・」
「・・・ああ。分かった。だけどもう少し時間が欲しい。」
「うん・・・、いいよ。でももう余り時間が無い。できるだけ早く決めてほしい。」
「ああ、そうするさ。態々ここまで足運んでもらっちゃって悪かったな。」
「うん、ありがとう。」
さて・・・これから忙しくなる。もう抜け出せない非日常に足突っ込んじまった。迷ってなんかいらんない。友達のために、この街、否この世界のために、まだよく分からないオレの能力がどう使えるのだろう。明日、オレは本当に日常を生きていられるだろうか。分からないや。もういい、面倒だから寝よう・・・
―オレの日常的な日々は、夏休みの開始とともに終わった―
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