早朝の依頼人

 パッ 目の前が急に明るくなり、オレの頭に膨大な情報が流れ込んできた。しかしまずい事に気がついた。

 ・・・起きてしまった。基本1日10時間近く寝ないとポテンシャルが発揮できないこのオレが!!

 ああ、神よ。オレは一体どうすればよいのです?!・・・ああああ、いかん、やっぱりおかしくなってる。

 とりあえず布団を被ってみる。・・・ダメだ、眠れん。

 好きなアニメキャラの名前を数えてみる。

「姫乃●ちゃんが一人、姫乃●ちゃんが二人、姫乃●ちゃんが三に・・・

う~ん、かわいすぎ~・・・って、完全に目的変わっちゃってる!」

 ああ~ダメだ、こりゃ。今日は、学期末最大の試験だというのに・・・どうしたら良いんだよ~

 

 これがオレ、吉崎一の日常だ。けっしておかしな人ではない(と信じたい。)


 しゃあない。折角だし、姫乃●ちゃんの漫画でもみるか・・・

 ベッドに寝転びながら、脇のテーブルに手を伸ばし、スマフォを手に取る。そして起動した瞬間、なぜかぞわりとした感覚に襲われ、オレは身震いをした。なんなんだ、この感触。気持ち悪い。

 何かを感じてスマフォを覗き込むと・・・ああ、乗っ取られる!

 どうしよう、スマフォを起動しただけなのに・・・オレはこのテのことで基本 問題は起こさないから尚更だ。ああ、神よ。夢からなにから今日はなんと言う日だ!


「・・・あーちょっと、大丈夫~?」

「・・・んえ?」

 んん?誰の声だ??

 スマフォを覗き込むと、随分とヘンテコな格好をした少女がこちらを見上げて笑っている。・・・んん、カワイイ。

「っと、ようやくまともに喋ったね。」

「・・・は?」

 前言撤回。なんだ、この失礼な少女は。まともに話す気になれん。何だよ。初対面の男に「まともに喋った」なんて。

「いや、喋れないかわいそうな人なのかって思った。脳波を少し操作しただけで痙攣を起こすし、スマフォ乗っ取られた位で泣きそうな顔してるし、寝起きだからってひどい顔してるし。ほんっとかわいそうな人ですこと。」

「・・・クソ。この女・・・ お前一体誰なんだよ!大体お前のほうが変なカッコしてるじゃん。何だ、そのダサい服装。白いパーカーに白いズボン、ヘッドフォンなんてかっこつけやがって・・・それになんだ、狐のお面?!そっちの方がもっと変だぞ!!」

「ゴメンね。ちょっとキミの仕草がおかしくて・・・ププッ、失礼。

私はええと・・・ここではMとでも名乗っておこうかな。

この格好?ええ、これは私の属する集団のユニフォーム的なもの。それで・・・それで・・・」

 おお、いきなり人様のスマフォ乗っ取った上に人のカッコを散々批判したヤツが調子乗って喋りだしたよ。全く・・・昨日見た夢からなにから・・・もうなんなんだよ。

「それで、この集団、名前が白い狐と書いて白狐びゃっこというんですが・・・この町を救う為に作られたものなんです。

実はこの町って平和そうで裏ではこの世界の占拠しようとしている組織があって、その動きを食い止める為にっていう能力を持つ人間を探して彼らに協力してもらおうとしているのです。まあ、逆に組織側もそれを手に入れようとしていますが・・・

その能力を手にした人間がこの世界を自分の理想に動かすことができ、その人が死ぬまでその状態を維持することができるんだそうです。詳しくは知りませんが。」

 ・・・待てよ。彼女の話を踏まえると、昨日の夢でオレそっくりのAIが言っていたことが現実だったという話になってくる。てことはまさか・・・あれは現実だったってことか??!え・・・いやちょっと待て、そしたらオレは・・・何らかのその・・・とやらを所持してるってことになるよな!

 いや・・・まさかオレがそんな常人はずれいや常識はずれなモン所持していたとは・・・

「ンで、あんた方はオレに何をしてほしいんだよ。」

「あなたには・・・私達の集団に所属してもらいたいのです。」

 ・・・やっぱり。

「ンでも・・・オレ今までそんなもの知らなかったし、第一オレがどんな術を持っていてどんな使い方するかなんて全く知らないぞ。」

「それでもいいんです。彼らを止めることこそ我々の使命ですから。リクさんと・・・クロのね。」

「いや、やっぱムリ。信用して話してくれてるのはいいんだけどさ、ちょっとまだ決めにくいよ~」

「ですからそこを何とかしていただけないかと・・・」

「ムリ。」

「お願いですよぅ」

「・・・」

 ダメだ、こりゃ。話にならん。それに何だ・・・どういうわけかオレの心が揺れている!・・・そうか、オレ彼女いない歴=年齢並みの全くもてない男だったわ!同期のヤツらがどんどんリア充(使い方あってんのか?)になってく中、一人取り残されているような気が・・・いやいやしない!!断じてそんなことは無い。彼女いないとか関係ないから・・・

「あ、そうですか。じゃあもういいです、これから二度とあなたに依頼なんてしませんから。

もう・・・折角周りの人から優しくてすぐ相談に乗ってくれる人だって聞いて、期待してきたのに・・・」

 そんなこと、関係な・・・いや、ある。オレはその言葉にどうも弱い。

「・・・分かったよ。」

 うんざりした様に呟く。

「いいよ。考えとく。後でそっちに連絡するから・・・」

「そうですか。それじゃあ、放課後リーダーがそちらへ行きますんでどうぞよろしく。」

 おいおい。オレさっき少し考えさせてくれ、って言ったよな?!

「・・・そ、そう。分かった。」

「は~い。じゃあまた後、どこかで。お時間とご協力いただき誠に感謝!!

さよなら~。」

 ・・・・・・

 ・・・・・・?

 これは無い。いきなり人様のスマフォ乗っ取って、人様の顔散々言いまくって、勧誘していきなりいなくなった。最低だ。絶対モテねえぞ、アイツ。


 時間を見る。ええと・・・うお、もう2時間も経ってしまったじゃねえか!?時間ロスさせやがって・・・

「クッソ。あの女・・・。

しゃあない。学校のしたくでもするか。」

 一度伸びをしてベッドから起き上がった。そして・・・空腹の音を聞きながら、部屋を出た。

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