第6話 彼女は生き写し
世界から医者が消えた。
だが、あの日以来、未來は十夜と
プライベートで会うようになった。
「未來。」「十夜くん」とお互い名前で呼び会う仲にまで発展した。
未來は、十夜に片想いをしていた。
一方、十夜も目の前にいる未來を好きだった。
10年間の想い人、イヴに似ているから。
声、仕草、外見、服装、性格、全てイヴに重ね合わせてしまう。
ある日いきなり、音信不通になり、もう手に入れられない人を手に入れた気分だった。
まだ出会って少ししか経ってないのに、十夜は早々に未來に告白した。
「好きだ未來。これからも俺の傍にいてくれ。」
ネットで調べあげた言葉を並べ、
十夜は最愛の人の生き写しに告白した。
「わ…私でいいの?/////」
思ったより急に言われたことで未來は戸惑いを隠せなくなっている。
十夜はその反応に未來のことを抱きしめた。
「愛してる。」
その言葉に「私も」と未來が返す前に、その口は十夜によって塞がれた。十夜自らの口で未來に深い深いキスをする。
(これは本当に現実…??)
慣れない初めてのファーストキス。
ボーッとしていく頭の中で未來は考えた。
ただ、ただ純粋に嬉しかった。
「十夜くん…ありがとう…/////」
「気にすんなって笑」
そう言って笑う十夜にひたすら未來は惚れていた。
「…ん?あれは…桜樹さんと…誰だ?」
車道を挟んだ反対側の道路からそんな2人を見ていたのは翔。
未來と一緒にいる十夜は、どこかで翔が見た事のある顔だった。
(こんなこと柄じゃないんだけど…)
翔は伊達眼鏡をかけ、バレないようにしながら、『透結晶』の透視能力で2人の動向を観察し始めた。
3時間ほど経ったあとだろうか。2人が噴水の公園で分かれたのは。
「桜樹さん!」
十夜が見えなくなった頃、そう言って翔は未來のもとへ駆け寄った。
「あ…東宮先輩。」
無意識に未來の身体が強ばる。
「今の男性は?」
息を切らしながら十夜は未來に尋ねる。
「あの…彼氏です。扇城大学の3年生の。」
次は何を深入りされるのか。未來は身構えていた。
でも、翔の反応は未來の予想と違っていた。
「そっか。急に話しかけてごめんな。あの人…どこかで見覚えがあるんだよ。」
あさっての方向を見ながら翔は言った。
「…どういうことですか?」
「聞きたいの?」
「まあ…はい。」
いろんな悪いことを考えた。
でも、遠い目をして呟くように言った翔は何か寂しさがあった。
(そういえば…先輩とはしっかり話したことは無かった…。)
未來は翔を許していない。
でも、あの行為が正当防衛だったとも思っていなかった。
「じゃあ、3日後の午後空いてるでしょ? そこで落ち着いて話そう。」
「分かりました。」
「あ、あと。」
「はい?」
顔を上げた未來の目には、紫色に光る目をした翔が映っていた。
「桜樹さんも、何か僕に話したいことあるんでしょ?」
それは翔が透視能力で未來の心を読んだから分かったこと。
そして、未來もその目を見て
再びこの人が奇病能力者なのだと実感した。
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