第4話 下心の末路

翔はあれから、まず自身の奇病について研究を始めた。

翔の奇病は『透結晶マッドスケープ』。半超能力が入ったような奇病で、透視能力に加え、水晶を出して攻撃もできるようだった。

彼自身コントロールが可能なため、

翔は寧ろこの奇病を飼い慣らし、喜んでいた。


そして、予想通りその女子高生は慶典大学生物学部に入学してきた。

僕は状況を見計らって夏頃にその子に近付いた。

「僕は法学部2年、東宮です。」

「生物学部1年、桜樹 未來です。」


まずは形だけ仲良くなり、夏頃に透視能力で未來が持っているであろう林檎を探した。

だが、一向に見つからなかった。


「なぜ…なぜなんだ…!」

翔もだんだんと焦りが募る。

そんなある日だった。

隣町の交差点で未來が男子高校生を助けたのを目撃した。


その時、彼女の腕からは植物が生えており、それが男子高校生を突き飛ばして事なきを得た感じだった。

未來は逃げ出していったが、翔はしかとその光景をこの目で見た。


未來が奇病患者であることを翔は知ってしまった。

そして、生えていたのが植物。

間違いなく、未來は林檎を持っていると翔は確信した。


だが…それと同時に翔の心にもう1つ感情が芽生えた。『怒り』だった。何もしていないのに愛する理解者を奪われた怒り。行きどころのなかった、ぶつけようのなかった憎しみ。その翔の負の感情の矛先は未來へと向いた。


(アイツを殺せば…優理は…)


翔の負の感情は、遂に全く関係ない人を巻き込んでいく。

翔自身も、その感情の渦に飲み込まれていった。


夏休みが明けてすぐ、翔は未來を自身の奇病能力で奇襲した。

「せ…んぱい?」

驚いた目をして振り返る未來。

「…!!」

未來の背中を狙ったつもりだった。

今、未來と翔の間には植物の壁がはばかっている。

「…うるさい!」

2人だけの室内で翔は声を荒らげた。

「や…やめてください!」

未來は椅子から落ち、後ろに後ずさっている。

翔はそんな未來を狙って鋭い水晶を放った。

それは未來の服を破き、未來を傷だらけにした。

逃げる未來を翔は追いかけ続け、2人は人気のない道路まで出た。

「せん…ぱい…殺さないで…」

涙を零し、ガクガク震える未來。

未來はなぜ今自分が襲われてるのかが理解出来なかった。

ただ、目の前に殺人鬼の目をした翔が立っているだけだった。


「終わりだ…!」

その低い声に未來の手が反射的に前へ伸びた。

「やめて…!!」

突如、あの日と同じように未來の手から。今度はもっと太い茎のようなものが生えて、翔を突き飛ばした。

翔は車道まで飛ばされ、ちょうど来た車に跳ねられた。


「ひっ…!!」

未來は自分がしてしまったことを見たくなくて、その場からよろけながらも必死に逃げた。


その後、病院に運ばれた翔は衝撃により、軽度の記憶喪失を起こし、未來を襲ったことを全て忘れてしまった。

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