15. とても長く続きそうな

 朝からの雷雨だった。誰かの個人的な怒りをそのまま形にしたような雷鳴が、誰かの決して拭い去ることのできない苦しみや悲しみを体現したような重く分厚い雨の中に響く。

「すごい雨ね」母親が言った。

「僕に警告しているんだよ」息子が静かに返した。

 ――何があなたに警告なんてしたりするの? そう尋ねたい気持ちがあったが、母はとても恐ろしくて、そんなことを訊けはしなかった。

「ねぇリチャード。雨が弱まったら、母さんの買い物に付き合ってくれる? あなたが重いものを持ってくれたら、私とても助かるわ」

「いいよ。雨が弱まったらね」

 しかし昼過ぎになっても、雨は一向に調子を変えることはなかった。昼食に、マヨネーズとツナのスパゲティを食べている途中のこと、母と息子の家に、一本の電話がかかった。いつもと同じ電子音のはずだが、母親には、それが不気味な響きを持っているように感じられた。彼女は家主として、電話に出た。「もしもし、こちらウラノですが」

「こんにちは。奥様。リチャード・サンダンス様はご在宅でしょうか」老人の声だった。

 まず第一に、彼女は名実ともに独身者である。夫を失ってから「奥様」と呼ばれたことは一度もなかった。そして第二に、サンダンスは彼らの旧姓であって、夫かつ父であったジョージ・サンダンスが死んでからは、二人はウラノの姓を名乗っていた。二つの間違いを頭の中で指摘してから彼女は電話の声に応えた。

「どちらさましょうか」

「私どもは、雨男協会でございます」老人が言った。

 相手は当然のように名乗るものの、彼女はそんなへんてこな名前のなんとかなんて、さっぱり知らない。ただこの家に、自分の息子が帰ってきていることを、知っているなにかがいるということが、不気味だった。そこには脅威の匂いがあった。

「いません」彼女は嘘をついた。受話器の向こうでうふふ、と笑い声がした。

「おられるのは分かっておりますが」

 ミシェルは受話器を置いて、通話を終わらせた。恐怖が彼女にそうさせた。「どうしたの?」息子が訊いた。しかし彼には、なんとなく分かっていた。誰がどういう電話を掛けてきていたのかということについて。

「かけ間違いだったみたい」

「雨男協会というところからじゃなかった?」息子は、少し緊張した声で尋ねた。

 母親は、神経質に言った。

「そんなものは知りません」

「きっと僕にかけてきたんだ。彼らは僕を脅しているんだ」

「あなたを脅すひとなんかいません」

「彼らはひとじゃない。もっと嫌ななにかだよ」

「おかしなこと言うんじゃありません」

「母さん。恐ろしいかもしれないけど、彼らは本当にいるし、僕はあれらから目を逸らすことはできないんだよ」

「……リチャード、雨が弱まってきているのじゃない? 買い物にいきましょう。今日はたくさん買っておきたいのよ。あなたの食事のぶんも要るし……」

「きっとまた、電話がかかってくるはずだ」

 耐えきれなくなって、母親はヒステリックに叫んだ。

「お願いだから! ……お母さんをこれ以上、怖がらせないで。私はあなたが一緒にいてくれるならそれでいいの。雨も、呪いも、あなたのお父さんも、もう気にしたくないの。ねぇ、リチャード。また、私たち、あの頃みたいにあちこち旅しながら一緒に暮らしましょうよ。あなたがいない間、お金を貯めていたから、少しは楽ができるわ。それにあなたも、もう大人になったから、ちょっとくらいはお金を稼ぐこともできるでしょ? そうすれば二人でずっと生きていくのは、大変でも、無理なことじゃないはずでしょ? リチャード。お母さんのお願いをきいてくれるわよね? いいえ、あなたは聞かなくてはならないのよ。あなたは私の息子なんだから。リチャード、もうどこにも行かせませんよ。あなたは、ずっと私と一緒にいなさい。お母さんをひとりぼっちにしてはいけません」

 母親は泣き崩れた。リチャードは、自分の母親がここまで感情的になるところを初めて見て、そして動揺した。彼が覚えている母親は、もっと力強くて、勇敢な女性だった。でも今ここにいるのはそうじゃない。長い時間の中で、傷つき疲れ、年老いた母親がいるだけだった。そして、彼女をそこまで変えたのに、間違いなく自分が関係していた。僕はこの人を傷つけていたんだ。

 ――僕の選んできたことは、あるいは誰かを傷つけたり、変えてしまったりもすることなのだ。僕がしようとしていることは、間違いなのだろうか。

 だがそうだとしても、ここで全てを取りやめて、母親と再び雨を生きるという選択は、彼の前に現れることはなかった。リチャードは、自分もまた、涙を流していることに気がついた。涙の理由を探したが、分からない。ただ母が泣く姿をみて、彼はそれを、平生の心で受けとることができなかった。

「母さん、僕はあなたをひとりぼっちにしたりなんかしないよ。ただ、僕は、今よりも陽当たりのいい場所に行ってみたいだけなんだ。他の人たちがいる場所に、僕もそこに行きたいんだ。ねぇ母さん。僕に友だちができそうなんだよ。いつか母さんにも紹介したい。そのひとと友だちになるために、僕は雨を終わらせなきゃならないんだ。雨を終わらせて初めて、僕はちゃんと、他人と触れあえるようになるんだと思う。変わるなら今なんだよ。僕がそうすべきだと、そうしたいと思ったこのときに頑張らないと、全部嘘になっちゃうような気がするんだ」

 息子は母のとなりに座った。母親は、立てた膝に頭を埋めて、まだ肩を震わせている。

「父さんのことを聞かせてくれないかな。呪いと彼の関係について、どうして僕がそれを継いでいるのかを、僕は知らなきゃいけないんだ」

 雨の音だけが流れる時間があった。二度の雷鳴が空気を震わせた。少ししてから、母親は息を吐きだした。


「あなたのお父さん、ジョージは、あなたとはタイプは違うけど同じように静かなひとだった。私たちが出会ったときには、もうあのひとはすっかり人生にくたびれていて、心に暗いものを抱えていていたみたいだったわ。でも不思議な話で、私はそのせいで、あの人のことを気にかけるようになったんだけどね。

 私の兄とあの人が友だちだったの。そう、トムおじさんね。トムとジョージは二人ともダメ人間だったけど二人は似た者同士でつるむことでなんとか持ってたんだって、おじさんは言ってたわ。あの二人はヘンテコなコンビだったけど、仲が良かったの。

 呪いについて話すとなると、始まりはあなたがまだ赤ちゃんだった頃になる。でも、本当の始まりは私にも分からない。きっとそれはジョージにしか分からないことなのよ。だから私は、私が知っていることしか、話すことはできないの。

 あなたが生まれて少し経ったとき、ジョージはおかしくなった。テレビを見てて、突然叫びたしたのよ。あなたは覚えていないのかしら。でも、ひどく怯えていたわ。私もそうだった。私はそのとき、「やっぱり」とは思ったのよ。ジョージは確かに私とあなたを何よりも愛していたし、彼は残りの長い人生の全部を私たちのために使うつもりでいてくれた。それでも、あの人が過去に、何かを経験して、そしてそのなにかのせいで、人生をだめにしてしまったことについては、決して私たちに語ろうとしなかった。私たちも聞かなかったわ。それはとても辛い思い出であるはずだから、そんなものを無理に掘り起こすよりも私たちのこれからの生活に心の容量を割くほうがいいと思ったのよ。でもその判断は結局、彼の中の深いところにあるものを、ただ放っておくのと同じだった。その何かを、一つだって癒すことができないままで、私たちは家族になって、あなたが生まれたの。だから、その何かが、いつ表面に現れたとしても、本当のところ全然おかしくはなかったのね。それが起きたのが、あなたが生まれてからだったというだけの話……。

 その発狂以来、あの人は、生活に対しての執着がなくなったの。食事は最低限、お風呂にはまったく入らないし、ほとんど眠ることもない。誰かが話しかけても、まともな返事はしなくて、見た目も中身もどんどん滅茶苦茶になっていった。

 でも、そうやってくたびれていくなかで、眼だけはね、ずっとギラギラと光ってるのよ。何かの意志だけはちゃんと保っていた。それが何かは分からない。本当に最後まで分からなかった。私は聞いたのよ。あなたはなにがしたいの? って。そしたらあのひと、食事の途中だろうとなんだろうと、家から出ていって何時間も帰ってこないの。あなたのおじさんにも、説得を頼んだけど、やっぱり駄目だった。トムおじさんは、ジョージを助けられなかった、って一晩泣き続けて、それから一週間は寝込んだわ。あのひと、身体が弱いから……。

 ジョージはそのあと失踪した。そして二度と帰ってこなかった。たぶん死んでるわ。いなくなる直前からして、もうとても生きていられるような様子じゃなかったもの。ジョージはもう、私とあなたを捨てたんだと思ったわ。実際そうだったしね。警察がいろいろ調べたところによると、どこまでも西にすすんで、最後は国を出て、旧帝国まで行ったみたいよ。そのあとのことは何も分からない。きっと旧帝国の砂漠地帯で干からびて死んだのよ。

 失踪から一年たったところで、国に書類を出してジョージを死んだことにしたの。そして、離婚した。そのときから私とあなたは、ウラノの姓を名乗るようになった。そういうふうにあの人との関係を処理することは、実はあの人が消えてから1ヶ月たった頃にはもう決めてたの。私を冷たいひとだとは思わないわよね? だって、ほんとうに酷いことをしてるのはあのひとだもの。私は今でも、あの人のことをまず憎しみを以て想う。でも、本当にただ憎いからだけで、あのひとと縁を切ったわけじゃない。

 そう、ここからが呪いの話。あなたが、ずっと雨に呪われ続けているその理由らしいものについての話。嘘みたいな話だけど、リチャード、あなたそういうの信じられる? あなたはこの五年で、どういう人間になったのかしら。人の話を真面目に聞いてあげられる人になれた? もしそうじゃないのなら、いまからでも、いつからだって遅くないから、そういうひとになりなさいね」


**********


 ミシェルは静かな喫茶店の中で、温かいカフェオレを飲んでいた。砂糖をたっぷり溶かして、これでもかというくらい甘くしたそれを、少しずつ、舐めるように飲んでいた。しばらくすると、焼きたてのバニラ・スコーンが乗った皿が運ばれた。淡白な味わいのそれは、甘い飲み物によく合っている。

 彼女の他に客はなく、背景には小さな音でピアノジャズが流れていた。禁煙を定めているのか、店には煙草の臭いもなければ、灰皿もなかった。ミシェルはそこをとても気に入った。また来よう。スコーンを頬張りながらそう決めた。

 彼女が腰かける椅子とテーブルは、木製の素朴なデザインをしていて、彼女はそれらをもって帰ってしまいたいとまで思った。ただ、椅子に張られたクッションだけは、少し固い。スコーンを食べ終えたところで、バッグから文庫本を取り出してそれを読み始めた。タイトルは『グレゴリー・マン』。大戦中の陸軍将校の伝記だった。

 彼女は思った。――なぜこんな本を私は読んでいるんだろう? いつものお気に入りの探偵小説シリーズに、新刊が出ていたはずだ。あれを買っておいた記憶がある。なのに、なぜこの本を?

 本から顔を上げたとき、彼女は恐怖と驚きで悲鳴を上げた。向かいの席に、見知らぬ男が座っていた。

 男はひどく痩せこけていて、ほとんど骨と皮だけといった感じだった。頭は禿げ上がっていた。少しだけ残った髪は、栄養失調で痩せ細っているし、砂やごみで汚ならしく固まっていた。そして驚くべきこと、恐るべきこととして、彼の目と口が、乱暴にも麻糸で縫い綴じられていた。針の通った穴のあとは、赤い血が乾いてこびりついている。ミシェルは怯えながらも、尋ねた。「あなた、大丈夫なの?」

 男は、どうやら口をもごもごさせているようだった。何かを話そうとしているが、誰かによって強制された会話の禁止は、その効力を十分に発揮していた。

 その男は浮浪者よりもみすぼらしく、およそ人間らしい生活を諦めたもののように、ミシェルには見えた。普段の彼女であればそういったもの――ここまでひどいものに会うのは、これが初めてだったが――には、冷ややかな哀れみの目を向けて立ち去るのだが、今度は、そのようには振る舞えなかった。彼女は、その痛々しい縫いあとに優しく触れると、いつのまにかテーブルの上に置かれていた小さなはさみで、彼の封印を解いてやった。糸を抜き取る度に、痛むのだろう、男は小さく震えた。顔には縫い付けの跡で、小さな穴がいくつも残った。

 それからミシェルは、ハンカチをグラスの水に濡らしてから、男の垢と砂ぼこりと血でぼろぼろになった顔を、優しく拭ってやった。ようやく、最低限の人間の顔になったところで、彼女は気がついた。これは夫のジョージではないだろうか。彼は失踪したときからかなり衰弱した様子だったが、今はもっと、死に近づいた風貌をしていた。

「あなたジョージなんでしょ」彼女は言った。

 男は答えなかった。だが静かに組み合わせた両手を見つめる仕草が、やはり彼は夫なのだと、ミシェルに思わせた。そして、とても外見からだけでは、彼が彼であるということを認められないくらいに夫が損なわれていることについて、彼女は涙を流さずにはいられなかった。

「あなた、どうしてそんなになるまでして、私たちを頼れなかったの? トムはあなたを救えなかったって、しばらくの間何も食べられないところまでいったのよ。リチャードは、暇さえあれば、家の中をずっとうろうろしてるわ。あなたを探しているのよ。あなたがいなくなって、家族がみんな不安で、どうしようもないのよ。私だってそう。ねぇ、帰ってくるんでしょう? まさか、そんなぼろぼろのまま、死んだりしないわよね?」

 彼女は自分の言葉の矛盾に気が付いた。帰ってくるんでしょう。もう目の前に夫はいるのに、なぜそんなことを尋ねているのだろうか。それは、彼女にもなんとなくわかっていた。これは夢なのだ。夢の中で、私たちは会っている。でも彼女は、それを認めたくなかった。なぜなら、この場所が、もうこれでお別れの挨拶をしてしまおうというようなものに思えたからだった。

 ジョージが口を開いて何か言おうとした。だが言葉の代わりに、砂ぼこりが口の中からもくもくとあがった。テーブルの上に、乾いた砂がぱらぱらと落ちる。そして苦しそうにむせる。妻が冷水のグラスを差し出すと、それで口をゆすいで、グラスの中にゆっくりと吐き出した。透明なガラスの中が、濃く濁った泥水に変わっていた。妻はそれを見て、また嗚咽を漏らした。

 しつこい砂を何度か吐き出してから、ジョージはようやく言葉を発した。

「すまない」

 ただ短く、しゃがれた声でそう言って、目を伏せた。今にも泣きだす子供のような顔をしていたが、一向にして涙は出なかった。

「なんなの? あなた、ここにただ謝りにきただけ? これからどうするの? どこで何をしていくっていうのよ」

 ジョージの目が、最後の涙で潤んだ。彼は言った。

「ミシェル。すまない。もう先はないんだ。オレはやるべきことを済ませてしまった。あとは契約に従って、然るべき場所で終りを迎えたあと、そこで時間が過ぎていくだけなんだ」

「私たちは、一緒に生きていくほかにやるべきことなんてないはずよ」

「オレは呪いを完成させてしまったよ。振り返って見れば、立ち止まる場所や、引き返すための場所が幾つもあった。でもその全部を、オレはあっさりと通り過ぎてしまったんだ」

 ミシェルは夫の言葉を、その半分も理解していなかった。でも、その後ろに、自分が想像もつかないような大きな流れがあって、ジョージもまた、それに逆らえずにいるのだというようなことを、漠然と感じ取っていた。

「ジョージ、何でもいいから、帰ってきなさい」

「無理なんだ。だからここにお別れに来たんだ」

 ――ふざけないでよ。ミシェルは叫んだ。だがもうどうしようもないのだということは、彼女自身、感じ始めていた。

「君に何も説明しなかったことは、今になって間違っていたんだと分かる。オレみたいなやつでも、短い人生の中で、色んな人間を好きになったり嫌いになったりした。そのうち、君よりも好きになれたひとはいなかった。君にとっては、オレはさっぱり心を許そうとしない、冷淡な夫に思えたかもしれないけど、オレとっては、君は、間違いなく大切なひとだった。君とリチャードと過ごせた時間は、オレの人生の中で最高の時間だった。オレは君たちを愛しているよ」

「やめて」妻は俯いている。

「いつか君のお父さんが言っていたことを思い出すよ。運命はただそこにあるに過ぎないんだ。オレたちは大きな流れには逆らえない。オレはそうだった。幸せを手にしたくせに、根のところでは、ずっと抱え続けていたものがあって、それを一つの大きな流れに掬い取られてしまったよ」

「ジョージ、あなた今、本当はどこにいるの? まさか本当にこの国を出ていって、よそでなにかしているの?」

「今はここにいるよ。でも身体はずっと遠いところにある。そして、これからは、もっともっと遠いところに行くことになる。そしてそこからは、もう帰ってはこれない」

「私があなたを連れて帰ってあげるわよ。言ってみなさい。あなたの身体はどこにあるの?」

「そんなことしちゃ駄目だ。井戸の底はとても危ないところだ。そこでは、君には想像もつかないような邪悪なものたちが、そこでオレを見張っている。君はここで、リチャードを守ってやってくれ」

「父親のあなたがいないで、どうしろって言うのよ。ジョージ。あなた、ご飯食べてないんでしょう。だからそんな、馬鹿げた話に乗っかって、錯乱しているのよ。脳に向かう糖分が足りてないひとには、論理的な思考ができないのよ」

「オレは呪いを使って人を殺したんだ。そいつを殺すために、残りの命の全部と、それ以上のものを費やしてしまった。結構ひどいことになりそうだよ。でも仕方ないことなんだ。これは良い悪いの話じゃないんだ。そうなるしかなかったんだ。引っ張られたのは、必然だった」

「悪いわよ。あなたは家族を棄てるんですもの」ミシェルはもうずっと泣いていた。

「こんな姿になったオレを見つけてくれてとても嬉しかった。今のオレをリチャードに見せるわけにはいかないから、君だけに会いにきたんだが、やはり正解だった」

「駄目、ジョージ。駄目だからね」

 ――さよなら。そう言った途端、ジョージの身体全てが、乾いた砂と化した。椅子の周りに砂の塊がどさりと残って、そして彼はこの場所から去った。

 ミシェルは残った砂に触れた。熱く乾いた、重い砂だった。

 がしゃん、と何かの大きなスイッチが切れる音がした。喫茶店の明かりが全部落ちて、店内は真暗になった。

 目が覚めたとき、ミシェルは空気がしっとりと濡れていることを感じた。彼女は眠りながら泣いていた。夢の内容は、彼女の脳にすっかり焼き付いていた。ベッドには、彼女の愛しい息子が昼寝をしていた。薄暗い部屋の中を渡って、窓の外を見た。

 雨が降っていた。とても長く続きそうな雨だった。

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