サキ達のその後ー始まった私刑
イジメが発覚して数日後。登校してきたサキ、加奈子、正美、美香が教室に入る。クラスメート達がサキ達を軽蔑しきった目で見つめながら何やらひそひそ話をしていた。
特に気にすることもなく4人は荷物を置こうと自分の机に向かう。彼女らは自分の机を見るなり唖然とした。
何故ならば、サキと正美、加奈子、美香の机には油性マジックで「死ね」「犯罪者は学校来んな」「殺人未遂犯」「ブスの癖に」「キモイ」「でっち上げ女」など数々の醜い言葉が書かれていたから。
「な、何なのよこれ、誰がやったのよ!出てきなさい、アタシ達にこんなことしてタダじゃおかないから!!」
サキがクラスメート達に叫んだ。言葉自体は脅しているような感じだが、彼女の表情は明らかに怯えていた。
「は?アンタが悪いんでしょ?クラスメートをイジメるから。
アンタ達がした事をアンタ達にやって何が悪いの?」
「ねえ、サキ、正美、加奈子、美香、今度は誰の悪評をでっち上げて言いふらすつもりなの?」
「そもそもなんで堂々と学校に来れる訳?アンタ達どんだけ図太い神経してるのさ。」
「ねえ、今度は誰イジメるの?」
「ねえ、イジメって楽しいの?」
女子5人グループが悪意に満ちた表情でサキ達に迫ってくる。
サキ達はただ言葉もなく俯くのみだ。
いつから立場が逆転したのだろうか?自分達がイジメをすればみんなは自分達を恐れて見て見ぬふりをしていたのにいつからこんなことになったのだろうか?
とサキ達は思った。
すると奥の方から誰かがわざと聞こえるように悪口を言ってくる。
「アイツらさ〜本山さんと村田さん、佐竹さん、杉野さんのこと散々ブスブス言ってる割にはアイツらブスだよね〜」
「それ、ずっと思ってた!!村田さん、佐竹さん、本山さん、杉野さんがブスならアンタ達はゴミ以下だっての!!」
「て言うか、兄妹揃っていじめっ子で殺人未遂犯とかヤバすぎでしょ〜」
「分かる〜しかも兄妹揃って顔も性格も悪すぎて救いよう無さすぎだし。」
楽しそうに悪口を言うクラスメート達にサキ達は唇を噛んで俯くだけ。
程なくして悪口の矛先は今度はサキ達ではなく奈々、奈津、奈絵に向く。
「あとさ〜あの女子3人グループってさ〜一翔さん、山崎君、竹崎さん、源さんのこと散々死ねだとか言ってたよね〜。
あれさ〜正直に言ってお前が死ねばいいじゃんって思ったんだよね〜。」
「あー分かる〜お前が死ねって思ったわ〜。
ねえ3人共、アンタ達何時になったら死んでくれるの?
て言うかさっさと死んで欲しいんだけど?アンタ達っていちいち根も葉もない噂話ばっかりして目障りだし。」
「さっさと死んで欲しい」そんな醜い言葉を直接言われた3人は瞳に大粒の涙を溜めて今にも泣き出しそうだ。
その様子をみて美晴が明日美、里沙、奈央にしか聞こえないような声で言った。
「あなた達だってわたし達に酷いことした癖に…。サキ達や3人と一緒に一翔さん達の悪口言ってた癖に……。」
すると奥に居る女子数名の会話が聞こえてくる。
「山崎君ってマジでカッコよくね?それに一翔さんも。」
「分かる〜正にイケメン兄弟って感じだよねー。」
「それに源さんや竹崎さんもカッコイイよね〜。」
「だよね〜あの4人には恐れ多くて近づけないわ。」
恐らく本心から出た言葉である事は容易に想像がつく。
しかし、その言葉を聞いて美晴は複雑な気持ちになった。彼女らだって彼らの悪評を信じて好き勝手酷い悪口を言いまくっていた癖に。裕太の学ランが壊されているのを。一翔、季長、義経が川原でいじめられているのを楽しそうに眺めていた癖にと。
それから男子数人が
「明日美ちゃんってマジで可愛いよねー」
「分かるわ〜それに里沙ちゃんや奈央ちゃんも可愛いよな〜」
「だよな〜おまけに美晴ちゃんもなかなか可愛いよな。」
と楽しそうに話す。そんな男子達だって明日美や美晴、奈央、里沙がいじめられているのを全部見なかった事にして放置していた訳なのだが…。
わたし達がイジメられている時、笑っていたじゃん。山崎君に里沙ちゃん、一翔さん、竹崎さん、源さんの悪評を勝手に信じ込んで散々悪口言っていたじゃん。
イジメに加担していたくせに。自分達の事は思い切り棚に上げて、サキ、正美、加奈子、美香や奈々、奈津、奈絵やサキ、正美、美香の兄達を思う存分攻撃しまくる訳?
美晴は自分達の悪事を棚に上げてサキ達を非難しまくるクラスメート達に苛立っていた。
「美晴ちゃん、仕方ないよ。そんな人間だっているんだから。」
里沙が意味深に呟く。美晴は確かになと思った。
人間、良い人もいれば悪い人もいるものだから。
だからといってクラスメート達が悪い人だとは限らない。
ただ善悪の区別がつかなくなっているのだと思う。
今、クラスメート達はサキ達が絶対悪だと思っているに違いない。
でも、サキ達を好き勝手攻撃して何になるの?
今クラスメート達がやっていることだってかつてサキ達がやっていた事と一緒じゃない。
と美晴は心の底から思ってしまう。
そんなふうに言ってやりたくても言えない自分の気の弱さがただただ恨めしかった…。
それから程なくして美晴、明日美、奈央、里沙、裕太、一翔は隣町の学校に転校した。
自分を散々いじめた奴らと同じ空間に居るのが耐えられなかったのだろう。
義経と季長はこちらの時代に来た時は、居候先になっている裕太と一翔の家に籠もり、前のように外へは出なくなった。
きっと前みたいな目に遭いたくはないからであろう。
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