死闘 其ノ壱
剣を手にして斬りかかってくる大勢の兵達、数はざっと此方の7倍以上。
早く剣に血を吸わせたいのだろう不気味に光る剣を彼らに向かって思い切り振り上げる。
自分の頭上に剣が振り落とされる前に忠信が兵の身体を斬りつける、斬り付けられた兵は堪らず剣を落とし、その場に倒れた。
忠信の武芸の腕前は弁慶や兄である継信、主君である義経と比べると劣るが、それでも幼い頃から武芸に嗜んできた身、せいぜい訓練を数年くらいしか積んでいない一般兵とは明らかにレベルが違う。
継信に対しては兵が二人掛かりで攻撃を仕掛けていたが攻撃をする暇もなくあっという間に斬り倒されていった。
「クソっ…なんで…なんで…。」
その様子を見ていた夕菜は悔しそうに歯ぎしりをしている。
(兵を30人も動員したのになんで勝てない訳!?
相手はたったの4人よ!?)
圧倒的な実力差を目にして流石の夕菜も焦りの色を表す。
(このままじゃアタシ、伍長から昇格出来ないじゃないの!!
クソっ…ガキの癖に生意気にしやがって!!)
激しい悔しさと怒りに駆られた夕菜は唇を噛みながらワナワナと震えていた。
義盛は襲い掛かってくる兵達を次々と斬り倒していくし、弁慶に至っては同時に二人の兵を斬りつけていく。
最初は30人はいた兵の数も今では半分以下になってしまっている。
最初こそ偉そうにしていた夕菜は一変、今ではこのまま自分も斬り殺されるのではないかと心底恐怖を感じていた。
(どうしよう…。このままじゃ…アタシもこの部下達と一緒に斬り殺されてしまうわ…。)
兵たちは半分以上倒した…。あともう一息で壊滅できる…。
と油断していたその時、忠信の背後から斬りかかってくる兵が二人、あまりにも突然のことだったので太刀打ちしようにも出来ない。
(武家に生まれたからには死は覚悟の上…。)
「忠信…!!」
死を覚悟した時、彼の兄である継信が咄嗟に駆けつけて来て兵二人を切り捨てる。
「忠信、怪我はないか…?」
継信が弟を心配して声を掛ける。
「すまぬ、兄上…。」
申し訳ないなと感じた忠信が兄に謝る。
その間に兵たちは弁慶と義盛が倒してくれたらしく残りは僅か4人となっていた。
(どうしよう…。どうしよう…。どうしよう…。このままじゃアタシの実験がアイツらのせいで台無しになってしまう…。
台無しになってしまったら出世の道が閉ざされてしまう…。)
残り4人となった兵を継信、忠信、弁慶、義盛で一人ずつ倒していき、兵たちはひとり残らず全滅。
「明日美に奈央、それにアンタの主君は何処に行ったのよ!!」
夕菜はわざと恐怖心を隠すようにヒステリックな声を上げながら4人に迫る。
「「「「貴様なんぞに殿の場所は教えん。」」」」
4人に冷たくあしらわれた夕菜は怒りで身体を震わせた。
(友里亜、あの女め…!!)
きっと友里亜の奴が明日美、奈央、里沙、裕太、義経、季長、義盛、忠信、継信、弁慶を唆したに違いない。
よりによって面倒くさい人物達が敵になるだなんて…。
おまけに向こうは剣道や弓道で大会を無双しまくる奴が二人もいるわ戦の天才はいるわ武芸に優れた有能な家臣である義経四天王がいるわ鎌倉武士はいるわで最悪だ。
お影でゾンビは減りまくりでこっちの計画が壊されてしまうのも時間の問題。
このままの戦力じゃ負けは確実である。
(一旦戻って兵たちを動員しなきゃ…。じゃないとアイツらを皆殺しには出来ない…。どうしよう…どうしよう…。このままじゃアタシの命が危ない、計画に失敗でもしたら…。)
あれだけ強気だった夕菜も今ではこの有り様で計画が壊されてしまうかもしれないと思うと頭が可笑しくなりそうだ。
計画が失敗した場合、命はないと尉官や佐官や将官などの軍幹部達から脅されているから尚更恐ろしい。
(待っていなさい!!友里亜、明日美、美晴、里沙、奈央、裕太、一翔、義経、季長、忠信、継信、義盛、弁慶、アンタ達を必ず皆殺しにしてやる!!
このアタシを怒らせた事を後悔させてやる!!)
心の中で激しい憎悪の念を燃やしながら夕菜は軍本部へと戻っていく。
案外あっさりと倒せたので、忠信達は拍子抜けする。
だが彼らはまだ思いもしなかった、これから激しい死闘が始まるなど…。
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