詞戦いその5

 泣き止まないおじさん4人に対して里沙が上品に微笑みながら毒を吐く。

「本当の事を言われたから泣いているのですか?

 いい歳こいてそんな泣き方するだなんて本当にみっともないですよ?

 そう言えばあなた達って言葉が分からないのでしたね、ならばみっともないって言葉も勿論知りませんよね?

 あなた達のような恥知らずってある意味羨ましいです。」

 上品に微笑みながらおじさん達に猛毒を吐く姿は美しくもあり恐ろしくもあった。


 相変わらず泣き止む気配がないおじさん達は明日美達に何やら語り始めた。

「俺たちはなあ、人を殺してみたくて殺したんだ…。お前らみたいなガキと若造なんざいつだって皆殺しに出来るんだよ!!」

 え…。嘘でしょ…。このままじゃみんなマズイじゃないの!!と美晴は思ったけれど明日美達は平気らしい。


「何とか言えよ!!クソガキと若造!!年上である俺たちに偉そうな事ばっかり言いやがって、年上はなあ偉いんだぞ!」

 喚き散らすおじさん達を明日美達はまるで汚いものを見るかのような目で見つめている。

 そんなおじさん達に裕太は一言。

「お前は自分の事が偉いって思っているみたいだが俺達から見たら底辺で惨めったらしいおっさんなんだよ。」


「何だとこのクソガキ!!ブチ殺されてーのか!?」

 泣きながら大声で怒鳴るがそれにお構いなく義経が一言を喰らわす。

「惨めったらしい負け事ばかり言わずにいい加減負けを認めたらどうだ、この雑魚が。」 


「誰が雑魚だと!?テメーみたいな陰湿で性悪な若造なんかに言われたくねー!!」

 逆上するおじさん達を物ともせず義経が涼しい顔で言い放つ。

「性悪で陰湿とはお主自身のことか?ならよく分かっているではないか。」


「もうおじさん達は黙った方が良いですよ…言い返せば言い返す程、傷を抉られるだけですから…。」

 その様子をずっと見ている美晴は友里亜にしか聞こえないくらいの小さな声でボソッとつぶやく。

「美晴ちゃんもそう思うわよね…。もうこれ傷口に塩を塗るどころか傷口に硫酸か塩酸を塗るって言ったほうがピッタリなんじゃないかしら…。」

 友里亜が全くだと言うふうに言った。


「うるっぜぇ!うるっぜぇ!うるっぜぇ」

 壊れたおもちゃのように同じ言葉を繰り返しているおじさん達に明日美が一言喰らわす。

「そもそもあんたの存在自体が煩いんだけど?」

 明日美の一言で更に逆上したおじさんは言葉にならない叫び声をあげる。

 ずっと叫び声を上げているおじさん達に痺れを切らしたのか明日美と里沙がキツイ一言をお見舞いする。

「いい加減黙ったらどうなの、このウスラハゲが!!」

「あなた達がここまで言葉の分からないどうしようもないお馬鹿さんだとは思いませんでした。

 まあ、あなた達って言葉が分からないですから今の言葉も分かりませんよね?

 そこまでのお馬鹿は一周周って羨ましい限りですね。」

 もうおじさん達は可哀想になるくらいに縮こまっている。

「みんな…オーバーキルですよ…。」

 美晴がそっと囁いた。

 もう縮こまって何も言えないおじさん達に対して弁慶と義盛、季長がこれまた容赦なく言い放つ。

「何も言えなくなったのか?流石は滑稽で哀れで愚かで惨めなだけあるな。」


「弁慶さん…どんどんワードの酷さがエスカレートしていってません…?」

 美晴が友里亜にしか聞こえない声でそっとつぶやく。


「何か言ったらどうだ?…結局何も言えぬのか…お主のような獣にも劣る頭の持ち主にも分かるように言ったつもりだが無駄であったか、残念だな。」

 義盛に「獣にも劣る頭」と言われておじさん達は再び号泣しそうな様子である。


「いい加減醜い不細工ヅラを晒すのはやめたらどうだ?見ているだけで不愉快だ。」

 季長が無表情でおじさん達に吐き捨てる。


「こんなカッコいい人に醜い不細工ヅラを晒すなって言われた日にはわたし、死んじゃうかも…。」

 美晴が誰にも聞こえないくらいの小さな声で囁く。

 おじさん達はもう幼子のように泣き続けるだけ。


 その様子に恐れをなした美晴は友里亜に小声で言った。

「みんな、あんな綺麗な顔してよくあれ程酷い事をスラスラと言えましたよね…。」

 すると友里亜がため息混じりに

「美しいものには毒があるって言うじゃない、それと同じよ。」

 その言葉を聞いた美晴はやれやれとでもいうように呟く。

「じゃあみんな毒塗れですね…。」

 友里亜はそう呟く美晴の口を手で塞いでから小さな声で囁いた。

「それ以上言わないほうがいいわ、もしも聞こえたりしたらわたし達も毒にやられるかもしれないから…。」















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