詞戦いその4

「誰が逆立つ毛が無いだと!?」

 涙が引っ込んだおじさんは明日美に怒鳴りながら近づいてくる。

 明日美は物怖じせずにおじさん達にキツイ一言を言い放つ。

「だって本当の事じゃない、あんた達逆立つ毛なんて殆ど無いじゃない、あったとしても今にも死にそうな毛が疎らに生えているだけじゃないの。」


「うるっぜぇ!!お前らみたいなガキと若造なんかに俺らの気持ちなんか分かるわけねー!」

 とうとうメンタルがやられたらしく、泣きながら喚くおじさん達に里沙がお淑やかな口調でキツイ一言を言い放つ。

「誰もあなた達の気持ちなんて聞いてませんよ?

 ひょっとしてあなた達って言葉が分からないタイプですか?なら今わたしがなんて言っているのかも分からないのですよね?本当お可哀そうに…。」

 そう言いながら上品に微笑む里沙の姿は友里亜と美晴にはとても恐ろしい者に感じられた。


 今にもその場にヘナヘナと崩れ落ちそうなおじさん達に一翔がそっと語りかける。


「今からでも遅くはありません、その罪を償いましょう。」

 その一言に血相を変えたおじさん達は青ざめた顔で狼狽えている。

「おいガキ、お前は何を言ってるんだ!!…そんなの…そんなの…。」

 空中を虚ろな目で見つめながら壊れたおもちゃのようにそう繰り返し続けているおじさん達に対して一翔が口を開く。

「あの、僕、あなたのような脳みそスカスカの阿呆にも分かるように言ってあげたつもりなんですが、分からなかったのですね。

 なら残念です。」

 一翔の言葉に逆上したおじさん達は

「なんで俺が償わなくちゃならねーんだよ!?

 教えろよ!!クソガキ、調子のいい事ばっかり言ってんじゃねーぞ!!」

 と口々に言いながら一翔達に歩み寄ってくるおじさんに対して裕太と義経が容赦なく言い放つ。


「おっさん、その悪い頭で考えてみなよ。

 まぁ、スッカスカの頭じゃ何も考えられねぇだろうけれど。」

「貴様のような弱者程よく吠えて強がるものだからな」

 図星だったのかおじさん達は黙り込んでしまった。

 何も言えなくなったおじさん達に里沙、奈央、継信、忠信、義盛、弁慶が更に容赦なく口撃を喰らわす。


「気まずくなったら黙るのか?流石は大した小物、なかなかの恥晒しだ。」

 義盛が相変わらずの毒舌ぶりを発揮する。

「卑しい下衆の分際で強がって実に惨めったらしい。」

 忠信がおじさん達の事を思いっきり鼻で笑う。


「一体いつまでそうやって生き恥を晒す気だ?」

 継信が真顔で酷い事を言い放つ。


「実に滑稽で哀れで惨めだな…。」

 弁慶に至ってはおじさん達にまるで呆れたとでも言いたげな口ぶりだ。


「あなた達はいつまでみっともない姿をわたし達に晒すつもりなのですか?」

 里沙が上品な口調で猛毒を吐く。


「頭の悪いイカれた馬鹿程怒鳴り散らしたがるものだから本当、困ったものよね。わたし、つくづくあなた達みたいな人間に生まれてこなくて良かったと思うわ。」

 奈央がおじさん達に軽蔑の意を込めた目線を投げつける。





 その様子を見ながら美晴が友里亜にポツリと零す。

「みんなあんな猛毒を吐きまくって平気なのかな?」

 そんな美晴に対して友里亜は

「フグが自分の毒で死ぬと思う!?それと同じよ。」


「テトロドトキシン…。」

 それを聞いた美晴は誰にも聞こえない声でボソリと呟いた。


 激しい口撃を受けまくったおじさん達は遂に声を上げて泣き出してしまった。


「「「「うわああああん!!」」」」


 そんなおじさん達に対して季長がどぎつい一言を浴びせる。

「気味の悪い声と汚らしい不細工な顔面を晒しおって…この恥晒しが…。」

 その一言でおじさん達は泣き止むどころか更に泣いている気がするのだが…。


「これじゃあどっちが悪者なのかサッパリ分からないわ…。」

 友里亜がつい本音を零す。その隣で美晴が友里亜だけにしか聞こえない声で言った。

「わたし…竹崎さんみたいな美形に不細工って言われたら一生立ち直れないかも…。」

 明日美と裕太、一翔、義経は芸能人ですら相手にならないくらいの美形だし、季長は芸能人と互角以上の美形だし、里沙は百合の花を連想させるような美少女、奈央は1000年とか2000年に一度の美少女といい勝負をするくらいだし、忠信は可愛らしい顔立ちで継信と弁慶は男らしくてカッコいいし義盛だって顔立ちは整ってる部類。


 もしも自分がこんな人達にあんな事を口々に言われたら多分、いや絶対、死んでも立ち直れないなと思い、そう考えたらとても恐ろしいなと美晴と友里亜はぶるっと身震いをした。




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