探す

「やっぱりサキを助けよう、流石に可哀想だから。」

「うん、明日美ちゃんの言うとおりだね、それにわたしもそう思っていた頃だよ。」

 わたしと美晴ちゃんに対して酷く戸惑う4人。

「お願い!」

 何度も何度もお願いしたところ、流石の4人も折れたらしく渋々助けに行くことになった。

「ったく、コイツらのお人好しには付き合いきれねーよ。」

 裕太がブツブツと文句を言う。

「本当、お人好しも良いところだよ。」

 確かに一翔の言う通りお人好しすぎるのかもな。

「放っておけばいいものを…」

 義経に至ってはサキが死のうが生きようが無関心みたいだ。

「何故助けるのだ…?」

 季長が正直な疑問を投げつけてくる。


 わたしだってつい先程までは散々ひどい事をしてきたサキをこんな女死んでしまえばいいのにって思っていた。

 でもそれでも優しさを忘れない美晴ちゃんを見て思ったのだけれど助けないで見捨てたら、後悔するかもしれないからって。


「後悔するかもしれないから。」

 わたしがそう返すと四人は「ふーん」と返事したくらい。

「助けるだけだぞ。あんなのと関わっていたら俺たちの寿命が縮みそうだし何より頭がおかしくなりそうだから。」

 そう言ってのける裕太に思わず

「いや、あんた達元から少しおかしいじゃない…。」

 と呟いてしまったが幸い4人には聞こえていないみたい。

「つーか、お前ら本当お人好しだよな、なんで自分に危害を加えた奴にまで優しくする必要があるんだよ?」

 とか言っているくせに結局わたしの言うことを聞いてくれるのだから…。


 暫く歩いていると道の真ん中で立ち尽くしているハデな少女がいた。化粧をして、髪の毛は薄い茶色で染められており傷んでバサバサだ。…サキに違いない。

 ただいつもは常に他人を見下した表情を浮かべているのに今は明らかに怯えた表情をしていた。


「サキ…助けに来たよ!!」

 美晴ちゃんがサキの腕を掴むが彼女は

「痛いじゃない!!何すんのよ!!」

 と言って美晴ちゃんを睨みつける。先程とはうってかわってサキの顔はいつものイジメっ子らしい表情に戻っていた。


「ちょっとくらい我慢しろよ。じゃないとお前死ぬかもしれないぞ?」

 裕太の一言にサキは小さく舌打ちをしてから彼に噛み付く。

「なんでアタシが我慢しなきゃならないの!?意味わかんない!!しかもアタシ、あんた達に助けてとか言ってないんですけど?

 勝手に助けといて偉そうな事言わないでくれる?」


「お前って本当性格腐ってるよな。」

 裕太が呆れた口調で零す。どうしてだろう?なんでサキはこんな性格なのだろう?

「はあ?アタシの性格が腐ってる?笑わせないでよ。て言うかアタシってあんた達と違う訳。両親が事故で死んだ哀れな孤児と父親が風呂で殺されておまけに母親に捨てられた捨て子と領地争いで落ちぶれた貧乏人であるアンタ達とかと一緒にしないでくれるかしら?」

 サキは見下した笑みを浮かべて4人に向かって吠える。4人は表情自体は変えなかったものの瞳の奥が怒りで燃えているのをわたしは見逃さなかった。


「もう良い。俺たちはお前とは絶対に関わらない。助けたりもしない。」

 裕太はサキに向かって突き放すように言った。

「誰が貴様のような身も心も醜いような女子なんかと。」

 義経がまるで吐き捨てるかのような口調でサキに言う。


「いいわよ!!誰がアンタの助けなんて求めるっていうの!?」

 サキはそう吐き捨てると北向いて走って行ってしまった。


「凄い拒否反応だね。」

 わたしがそう零すと何やら考え事をしているらしく、うつむき加減の美晴ちゃんがポツリと一言。

「なんでサキはあんな性格なんだろう。どうして人を傷つける事を平気でするの?平気で言うの?」

 最もだ。わたしだってずっと疑問に思っていた。

 なんでサキは平気で人をイジメるのだろう?なんで相手関係なく人を平気で傷つけるのだろう?

 分からない、わたしにはサキが分からない。

「わたしにはサキの気持ちなんて分かんないや。」

「わたしも明日美ちゃんと一緒。」

 助けてあげようとしてもあんな酷い事を平気で言えてしまうのは何故だろう?


 わたしは前を歩いている4人を見つめる、後ろを向いているので彼らの表情は分からない。

「裕太、かず兄、よっちゃん、すえ君、大丈夫?」

「…」「…」「…」「…」

 わたしの問いかけに彼らは全く答えない。

 そりゃあそうだ。あんな酷い事を言われたら誰だって傷つくに決まっている。

 なんだか4人に申し訳ないような気さえしてきた。

「ごめんね、わたしがあんな提案しなければこんな思いさせずに済んだよね?」

「「「「別に謝らなくても良い。」」」」


「でもごめんね…。」


 もうサキの事なんて忘れよう…。そう思いながらわたし達はくすんだ空の下をひたすら歩いていた。





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