これからの事

「それよりサキどっか行っちゃったね。」

 美晴ちゃんがポツリと零す。確かにサキはわたしの大切な人の悪口を平気で言ったり、あることない事言いふらしたりするような最低野郎。

 でもこの中でヤツに襲われて命を落とすのは少し気の毒な気がする。

「あんなの死んだところで誰も可哀想だとは思わねえよ。」

「あのような女子は死んで当然だ。」

 裕太に義経、それは酷すぎる。確かにサキは平気で人をいじめたりするようなイヤなヤツだけれど…。

「裕太によっちゃんそれは言い過ぎじゃない?」

 わたしが二人にそう言ったけれど彼らは此方を横目でチラッと見ただけだった。

 全くイヤなヤツ…。


「別に酷くねえよ、お前あいつに怪我させられたのによく心配できるよな。」

「お人好しだな、明日美殿は。助ける必要はないと思うが?」


 普通なら裕太と義経の反応が普通だろう。自分に散々酷い事をした人を、助けてもらったのにお礼を言うどころか悪口を平気で言いまくるような人をまた助けるなんて簡単に出来やしない。

 一翔や季長に至ってはサキがどうなろうが無関心って態度だし。


 でも仕方ないのかもしれない。彼らだってサキ達の立派ななのだから。


 サキに突き飛ばされたあの時は身体の彼方此方を机や椅子に派手にぶつけて奈央と里沙に支えてもらわなきゃ歩けなかった。

 病院に行ったら結構酷い打ち身だって言われて数日間は安静にしてなきゃ駄目だって言われて3日4日学校を休んだ。義経の前で突き飛ばされた時は幸い草や土がクッションになってくれたけれど手を打撲して2日3日はペンを握るのが辛かった。


 確かにわたしはお人好しなのかも知れないな。

 サキだって変われるかも知れないと思ってしまうのだから。

「でもサキだって変われるかも知れないよ?」

 わたしの一言に一翔と季長が

「無理だね。あの年齢であそこまで性格が歪んだらもうどうしようもないよ。」

「あのような根性なら救いようもない。」

 確かに一生あのままかも知れないけれど…。


 どうやら4人共サキの事を完全に見放しているらしく彼女が生きようが死のうがどうでも良いみたいだ。

「どうしよう…。確かにわたしはサキが嫌い、大嫌い。平気で人をイジメるクソ女だけど死んだら、後悔するから…。」

 美晴ちゃんが可愛らしい瞳を伏せてポツリと零す。そんなわたしと彼女の様子に戸惑う4人。多分助けようか助けまいかで心が揺れているみたい。

 正直4人は好き嫌いがかなりハッキリした性格だから一度嫌いになった人に優しくするなど有り得ないだろう。


「言っとくけどお前ら、アイツに何されたか分かってんのか?

 明日美は怪我させられたんだぞ?佐竹は鬱憤晴らしの為に悪口言われたんだろ?

 そんなの助けて何になるんだよ?助けたら助けたでまたお前らが傷つく事になるんだぞ!?」

 裕太が全力で拒否する。彼らの場合、わたし達がまた傷つくのではないか?と思っている。

 あなた達だって充分すぎる程に傷ついているというのに…。

「自分をいじめていた人を助けてもまたイヤな思いするだけだよ?第一僕たちはサキが大嫌いだし。」

 一翔が正直な思いを述べる。わたしだってサキが大嫌い。

 でも……。後悔なんてしたくはないから。

「なんでサキとかいう下衆女を助ける必要があるのだ?」

 義経がサキの事を口汚く罵る。彼がサキ達やその兄達から受けていた事を考えれば罵りたくもなるだろう。

「どうせ助けてもまた傲慢な態度を取られるだけだ。」

 確かに季長の言う通りだ。あそこまで性格が歪んでいたらもうどうしようもないかもしれない…。


 思った以上のサキに対する拒否反応。

 でも4人が普通なのだろう。正直サキを助けようと思う人はわたしと美晴ちゃん以外にはいないはず。


 だからこそ命だけは助けてあげなきゃ。

 まあ命を助けてやったその後はサキに関わるつもりはない。

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