4人の過去…その3
1260年の肥後国(現在の熊本県)のとある場所。
某は一人で深いため息をついていた。
家は御家人同士の争いに巻き込まれて領地を失ってしまい、貧困生活を送っており食べるものも満足にない有様だった。
それに姉も三井資長に嫁いでいないから自分が頑張らねばならない。
だけれど、どんなに辛い思いをしようが、武具と馬だけは売らなかいようにしていた。
自分ももう数えで15歳、そろそろ元服しなくてはならない。
そんな時、烏帽子親になってくれたのが三井季成で姉婿の親族だった。
元服以降、烏帽子親の季の一文字を貰って季長と改名した。彼には感謝してもしきれないくらいだ。
しかし領地を失った今では生活は段々と苦しくなっていくばかり。
母の世話もしながら武芸と勉学に励む日々が続いた。
毎日同じことの繰り返しでもういい加減嫌気が差してきたが竹崎家を復興する為に今頑張らなくてはいけない。
食べるものも満足になくて紐じい思いをしていたけれど時々明日美が野菜、味噌や米などを持ってきてくれたおかげで何とかやっていけな。彼女とその両親に対しては感謝で一杯である。
でももしも自分がもう少し早く生まれてこれていたら領地を奪われずに済んだかもしれない。両親にも苦労を掛けずに済んだかもしれない。
そんなもしも話なんて考えたところでどうにもならないけれど。
それに明日美や彼女の家族にはこれ以上迷惑は掛けられないし、両親には楽をさせてあげたい。将来的に余裕のある生活をさせてあげたい。
だから武芸も勉学も死に物狂いで頑張らなくては…。
そうやって明日美やその家族にこれ以上迷惑を掛けたくない、両親に楽をさせたい。竹崎家を復興させたいと思っているうちに気がつけば笑う事を忘れていた。
唯一明日美とかの前では少しだけ笑えたけれど幼い時のように心から笑えたことはない。
何よりも竹崎家を復興しなくてはと何年もそんな事を考えていた。
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