本音!?

「あらあら、段々とボロが出てきてるわよ、4名様?」

 奈央がいたずらっ子のような笑みを浮かべる。

「「「「やかましい」」」」

 ムッとした表情でぶっきらぼうな口調で4人が即答する。そんな切り捨てる様に言わなくても…。


「じゃあそろそろお邪魔虫のわたしと里沙は他の所行くから。明日美ちゃんと美晴ちゃんを宜しくね~

 あと友里亜さんがこれをあんたに渡しといてって。」

 奈央ちゃんが日本刀を2本、裕太と一翔に渡す。

 里沙ちゃんと奈央ちゃんが回れ右をしてわたし達とは真逆の方向を歩き出す。

 そんな彼女らとは打って変わってわたし達の傍を離れようとしない弁慶に義経が一言。

「弁慶、お主は忠信と継信、伊勢の元に参れ。」

 主君の命令を受けた彼は「はっ」と一言言うと東に向いて走り去った。


 これからどうしようかなって考えてる矢先だった。

 あの時のような叫び声が耳に入ったのは。

「きゃああああ!!誰か助けて!!」

「刃物を持った人がいっぱい暴れてる!!」

 必死に助けを求めている悲痛な叫び声や悲鳴に反応したわたし達はその叫び声の元へと急ぐ。

 そこに居たのは大振りなナイフを持っている中年男性9名だった。

 おじさん達は早くその刃物に血を吸わせたいのか手当たり次第にナイフを振り回している。

 おじさん達はわたし達を見つけると黄色く濁った歯を剥き出しに不気味な笑みを浮かべながら迫ってきた。

「よう、兄ちゃん久しぶりだなあ。」

 ナイフ男達のリーダー格らしいおじさんが見ただけでもゾッとするような目線で裕太達を頭からつま先まで舐めづり回すかのように眺める。


 今更気がついた事なのだがこのおじさん達はつい2週間くらい前にわたし達を襲った人達だ。


「兄ちゃん達も覚えているだろう?俺達の事。

 その弓を持ったクソガキのせいでアイツは大怪我をして動けなくなってゾンビに殺されたんだぞ?

 それに日本刀を持ったへんてこりんな若造のせいで、木刀を持ったガキのせいで俺たちは痛めつけられたからたっぷりお礼をしないとなあ、ヒヒヒ…。」

 リーダー格のおじさんが不気味に笑いながら4人を脅すが4人は怯えるどころか心底面倒くさそうにしている。

「あーあ、いやなこった、こんなだっせえおっさん共に絡まれるなんてな。」

 裕太がさぞ面倒くさそうに言い放つ。おじさん達は顔を真っ赤にさせて今にも斬りかかりそうだ。

 続いて一翔が

「料理包丁を振り回して人を脅すことしか脳がないなんて実に可哀想な人ですね。」

 と真顔で言い放つ、更に顔を真っ赤にさせて怒り狂うおじさん達にお構いなく義経更に煽る。

「汚らしい下衆共が群がりおって見苦しい。」

 彼の一言でおじさん達達の怒りは限界に達しかけていた、そこに季長がトドメの一言。

「本当の事を言われて怒り狂うとは実に滑稽で馬鹿らしいな。」

 ついにブチ切れたらしいおじさん達、何をするかと思えば小太りのおじさんがわたしの腕を強く掴むと裕太達に凄んだ。

「若造とガキ、偉そうな事を言ってくれるけどよ、お前らの女がどうなっても知らないぜ?」

 そう言ってわたしの首筋にナイフの刃を当ててくる、金属特有の無機質な冷たい感触がイヤという程首筋に伝わる。

 美晴ちゃんは恐怖で泣き叫ぶばかりだ。

「その子を離せ」

 裕太が殺気の籠もった声でおじさん達に凄む。

「その子に何かやったら許さない。」

 いつもは冷静な一翔が怒りを露にする。

「その汚らしい手を離せ雑魚」

 義経が激しい殺気を出しながら刀の柄に手をかける。

「その女子を離さぬと貴様の素っ首が飛ぶぞ。」

 季長が地を這うような声でおじさん達に忠告する。

 4人が地を這うような低い声でおじさん達に言った、彼らからはわたしですら怖じ気づくような鋭い殺気を凄まじいくらいに放っていた。

 彼らがいくらわたしに怒っても決して放つ事は無かったそれをおじさん相手に放っている、恐ろしいくらいに。


 それに圧倒されたのか一瞬ナイフが首筋から離れる、その隙を見てわたしはおじさんから離れようとするがそれに気が付いたおじさんはわたしの手首を全力で掴んでくる。

 ミシミシと手首の骨が軋んで居るのがハッキリと分かった。

「誰が離すものか、この女を沢山甚振った後にこれでグサーだよ。」

 おじさんは鋭利なナイフをわたしに、4人にチラつかせる。

「手を離せって言っているのが聞こえねえのか!?

 俺の大事な幼なじみを傷つける者は俺が誰であろう絶対に許さねえ!!」


 裕太、今なんて言ったの?俺の大事な幼なじみって言わなかったっけ。

 殺されるかもしれない恐怖よりも裕太が珍しく大声を出した事よりもその一言が驚きだった。

「僕の大切な人を傷つける者に容赦はしない…。」

 一翔が矢を構えて今にもおじさん達を射抜きそうだ。

 え?一翔今なんて言ったの?僕の大切な人って言わなかったっけ?

「「何か言い残す事はないか?」」

 義経と季長が刀に手をかけながら凄む、その迫力は凄まじいものである。

 しかしおじさん達はそんな4人を嘲笑っていた。

「この女を少し乱暴にしただけでそんなに怒るなんて面白い兄ちゃんだな、ククククク…。」

 この一言でブチ切れたのか4人は先程とは比べ物にならないくらいの凄まじい殺気を放つ。

 流石は剣道、弓道の有段者なだけあって迫力は一般人とは桁違い。

 それに数々の修羅場を切り抜けてきた武士なだけあってその迫力は他を寄せ付けない。


「「「「忠告はしたからな?」」」」

 4人の迫力に恐怖を感じたおじさん達はついに暴挙に出た。

 わたしの首筋に再びナイフを突きつけおじさんは4人に言い放った。

「俺はこの女を今から殺す!!この女を助けてほしければお前らが此処で死ぬんだな!!命が惜しければこの女が死ぬのを黙って見ていることだな!!」

 そんな!!こんな卑怯な事って…。

 4人は途端に黙り込む、何か嫌な予感がする…。

 するといきなり裕太と一翔が刀を抜いて自らの首筋に刃を当てる。

 義経と季長が腰刀を抜くと自らの左脇腹に刃先を押し当てる。


 美晴ちゃんはもうその場でへなへなと崩れ落ちて泣いていた。


 そんなの駄目だよ、バカ…。

「裕太、かず兄、よっちゃん、すえ君、もう良いから、だから死なないでよ、このバカー!!」

 わたしは思わず泣きながら叫んだ。







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