ケンカ
どうしよう…。このまま知らないふりして過ごす方が良いのだろうか?
「別に何もないよ」とか「あんた達の思い過ごしじゃないの?」って言って誤魔化す?
でもバレている以上何を言っても勘付かれるみたいだし。
じゃあ5人のこと無視しちゃう?いや、そんな最低なこと出来やしない。
「本当は言いたくないの…美晴ちゃんだって悲しむし…。あのね、美晴ちゃんもうお父さんとお母さんは居ないんだよ。」
明日美は消え入りそうな声でポツリポツリとあの時の事を語り始めた。
「美晴ちゃんの両親…既にヤツになっていた…。でも美晴ちゃんにもゆーたん、かず兄にもよっちゃんにもすえ君にもずっと隠していたの…。」
4人は怒る訳でもなくわたしの話をじっくりと聞いていた。
隣で聞いていた美晴ちゃんが激しくしゃくりあげる。
「嘘だ…。そんなの…。」
つぶらな瞳からは大粒の涙を流しながら。
「イヤだ!!お父さん、お母さん…。」
隣で泣き叫ぶ彼女を4人は悲しそうな表情で見つめていた。
「ひどいよ…明日美ちゃん…なんで言ってくれなかったの!!」
涙で濡れた顔をこちらに向けて彼女はわたしに向かって怒声を上げる。
「ひどいよ!!友達だと思っていたのに!!明日美ちゃんなんか大嫌い!!
良い人だって思っていたのに!!この人でなし!!あんたみたいな最低女に心を許したのが間違いだった!!」
小柄な身体をワナワナと震わせながら怒る彼女に対して裕太が一言。
「別に明日美は悪くねえだろ。」
その一言に美晴は一瞬はっとした表情になったが今度は4人をキッと睨みつける。
「どうせ山崎君達は明日美ちゃんの味方でもするんでしょう!!」
彼女の怒りの矛先はどうやら4人にも向けられたようだ。
「それにお前言っていいことと悪いことがあるだろ。」
裕太がいつもより低い声で凄んだ、美晴はその迫力に一瞬慄いたが負けじと裕太達を下から睨みつける。
「自身の思い通りにならなかったからと言って明日美殿を悪く言うのか?実に下劣な事だ」
義経が淡々とした口調で言ってのける、彼女はそんな彼を睨みつけていた。
「なんでわたしがそんな風に言われなきゃいけない訳?」
地団駄を踏みながら怒声を上げる彼女に対して普段は冷静な彼が声を荒げた。
「そういうところが下劣だと言っておるのだ!!」
美晴ちゃんはただ負けじとわたし達を睨みつけている。
「君さ人の気持ちを少し考えたらどう?明日美ちゃんだって一人でずっと悩んでたんだよ。」
一翔が彼女に優しく諭すように言う、怒らないからこそ余計に怖い。
「これを亡くなられた父上と母上が知ったら悲しむであろうな。」
季長の一言が胸に突き刺さったのか再び美晴の目から大粒の涙が流れる。
そして
「もういい!!わたし、明日美ちゃんなんか山崎君達なんか大嫌いだから!!」
そう吐き捨てて彼女は走って何処かへ行こうとする。
「ちょっと待って!!」
わたしが呼び止めるのを聞かないで美晴ちゃんは何処かへ走り去ってしまった。
「ちょっと!!美晴ちゃんになんて事言うのよ!」
今度はわたしが4人を睨みつける。そんなわたしに裕太が一言。
「だってあれじゃあまるで全部お前が悪いみたいだろ。」
裕太の反応が普通なのかもしれない、でも責任は全部わたしにある。わたしが本当の事を言わないからこんなことになったのだ。
「そんなことより佐竹ちゃんを追わないと」
一翔の一言を合図にわたし達は美晴ちゃんの後を追った。
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