新しい仲間

 十体のゾンビを倒し終えて、避難所への道を歩いていた。

「きゃああああ。」

 割と近くの方で女の子の叫び声が聞こえてくる。

 何かがあったのだろうか?きっとヤツに襲われているに違いないと思い、わたし逹は悲鳴のする方へと向かう。

 そしたら小柄な女の子が5体のゾンビに囲まれていた。

 しかもその女の子は同じクラスの美晴ちゃんだ。

 た…助けなきゃ……

「だ、誰かぁ……た、助けて……、こんなことで死にたくないよ……。」

 美晴ちゃんが必死に助けを求めている。美晴ちゃんとは幼なじみではないけれど、結構仲良しだ。

(待っていて、今助けるから。)

 ヤツの背後に周った。祐太が木刀を振るいゾンビの脳天を砕く。

 一翔が弓を引き、矢を放つ。矢はヤツの脳天を貫いた。

 義経と季長がヤツの首を切り落とした。それから、祐太が木刀を振るいヤツの動きを完全に停止させた。

 しかし、美晴ちゃんはある場所を見つめていた。

 わたしは美晴ちゃんの見つめている所に視線を移すと、そこにいたのはゾンビの大群だった。ヤツらは新しい獲物をさがしてさ迷っている。

「あっ……あぁ……あ。」

 彼女は今にも叫びそうだった。幾ら恐怖が限界に達しても叫んではならない。

 何故ならばヤツは耳がいいから、叫んだら終わり。ヤツに襲われて脳ミソを喰われる結末だ。

「きゃっ。」

 一翔は叫びかけた美晴ちゃんの口を塞いだ。

「叫んだら気付かれるからね。今は我慢。」

「んぐぐ……」

 多分美晴ちゃんは自分逹が誰だかわからないみたいだ。



 美晴ちゃんが少し落ち着きを取り戻したので、一翔は彼女の口を塞いでいた手を離した。

「あの……どなた……様?ってえ……」

 自分を助けてくれた人達が誰なのか確認した美晴ちゃんは驚くと同時に頬を赤らめる。

 そりゃあ中学、高校一のイケメンの祐太、一翔に、超有名な歴史人物なんかに囲まれたらこうなるに違いない。

 十年以上も一緒にいる仲だと何も感じないけれど。

 それにしてもなんで美晴ちゃんはこんな危ない状況の中を一人で出歩いたのだろうか?


「ねぇなんでこんな状況の中を一人で出歩いたの?」

 わたしが聞くと彼女は、

「両親と連絡が取れないの……。お父さんもお母さんも何かあったら避難所にいるからって言ってたから、もしかしてと思って避難所に向かってるのよ。」

 美晴ちゃんも避難所へ向かってらしい……。

「自分逹も避難所へ向かってるから一緒に行く?」

 わたしがそう提案すると、美晴ちゃんは

「え?いいの!!この中に入れてもらって……四人とも話したことないけど、チャンスだと思って話しかけてみるよ。」

「大歓迎だよ。わたしも女子が一人いてくれたらなぁって思っていたから。」

「え~、明日美ちゃんは嬉しくないの?」

 嬉しくないのって何がかな?

「祐太君逹と一緒にいて嬉しくないの?私だったら嬉しすぎるくらいだけど。」

 うれしい以前にこれが当たり前になってしまって別にどうとも思わない。

「それより、助けてくれた人が気持ち悪いおっさんじゃなくて本当によかったよ。

 しかも、こんな有名人に助けてもらえるとか夢みたい!!」

 いやいや、助けてくれたのなら気持ち悪いおっさんだろうとも素直に感謝すべきでしょう……と心の中で言っておいた。わたし逹は、避難所への道を歩いた。マップには一キロ先まで直進と書いてある。あと四十分だ。しかしなんでヤツらは大量発生したのだろう?謎は深まるばかりだった。






  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る