避難所への道のり

 我が家とお別れをして5分が経った。帰って来れるのはいつになるのだろう?

 それとも、自分逹死んじゃうのかなぁ……。

 家の車はガソリンが切れて走れないので仕方なく徒歩で行っている。

「避難所ってどれくらいでつくの?」

 わたしがお母さんに聞くと、お母さんはスマホのアプリで出した地図を覗きながら、

「あと一時間くらいね。」

 と言った。一時間もかかるのか、それまでいきていられるだろうか?大丈夫だろうか?と思った。

 すると、友里亜さんがこう提案する。

「こんな大人数で行くのは危険だからなん組かに分かれた方がいいんじゃない?」

 ってことでチーム分けをすることにした。

 お母さんとお父さんの二人チーム、佐藤兄弟と伊勢三郎の三人チーム。

 そして、わたしと祐太、一翔、義経、季長の五人チーム。

「なんでこのチームだけ五人なの!?」

 わたしが不満を口にするとお母さんが

「あなたはいつもふらっとどっか行っちゃうからそのくらいの方が丁度いいんじゃない?」

 としれっと言った。自分、奈央ちゃん里沙ちゃんチームがいい……。

 男子ばっかりの中はいくら幼なじみって言ったってキツいよ……。

 そんな事を言いながらも、これで確定したらしくわたしは四人についていくことになったのだ。

 小さい頃は全然全く気にしなかったのにどういうわけか今は異性の幼なじみと居るのがちょっぴり恥ずかしいと感じる。向こうもそう思っているのかな?


 わたしがスマホのマップを開き、近くの避難所と打って、ルートを確認する。

「暫くこの先を真っ直ぐ。」

 私がGoogleマップに表示された案内を言っていく。合流先は避難所の前にしてある。

「ねぇ、避難所に入れなかったらどうするの?」

 わたしはさっきから黙りな彼らに話しかけてみた。

「あり得るかもね。着替えもないし……。」

 答えたのは一翔だ。

「じゃあさあ、着替えがなかったら獣でも狩って毛皮を服にすればいいじゃん。武器だって打製石器でヤツの脳天を砕くのに充分だし。」

 わたしがそう言うと、四人とも呆れたような表情でこちらを見ていた。

 きっと心のなかでわたしのこと馬鹿にしているに違いない……。

「どうせ、祐太もかず兄もよっちゃんもすえ君も内心わたしのこと「こいつ馬鹿だなぁ。」って思ってるでしょ?」

 わたしが文句を言うと四人とも静かに頷いた。

 ウザイ、ウザすぎる……。

 あんたらみたいな堅物じゃないだけマシでしょ?とつい言ってしまいそうになる。

「お前、本当に呑気だな。こんな危機的状況でよくまぁそんなイカれた発想が出来るよな……。

 てか、毛皮を着て打製石器を使うなんて例え死んでもごめんだからな!?」

 祐太が半分呆れたような感じでいい放つ。

「猿人や原人の時代じゃないからね……。」

 一翔が苦笑いで言う。

「「一体いつの時代だ……。」」

 義経、季長、あんたらには言われたくないわ……と思ってしまう。

 こんな呑気な会話をしていると、すぐ近くから喉から絞り出すような呻き声が聞こえた。

「アアアァァ……」

 目の前を見ると、死んで腐った人間が1、2、3、4……十体もいた。紛れもなくヤツだ。

 表情一つ変えないで、祐太は木刀をかまえ、一翔は矢を構え、弓を引こうとしている。

 義経と季長は太刀を抜き、斬りかかろうとしている。わたしも慌てて大鎌を構える。

 ……あぁ大丈夫かなぁ……。


 ヤツは新しい脳ミソが欲しくて堪らないのかわたし達五人に向かってきた。

「相手が俺たちで悪かったな。」

「僕にかかっておいで。」

「この義経が相手だ、かかって来るがよい。」

「かかって来るとは、なかなかのものだ。かかって参れ、お相手致す。」

 四人とも不敵な笑みを浮かべると、手の甲をヤツに向けて指先でこいこいと合図した。

 かっ……かっこいい……。ため息を漏らして見とれてる場合ではなかったけれど。

 

 ヤツは狙いを定めてこちらに腐った両腕を伸ばしてやって来る。

 祐太は木刀でヤツに強烈な面をお見舞いする。

 グシャッと頭蓋骨が割れる音がして、ヤツは動きを停止する。

 一翔は弓から矢を放つ。それは、ヤツの頭を貫通し、その動きを停止させた。

 義経と季長は太刀を手にすごい速さで、ヤツの頸を切り落とした。

 ヤツは首から上を失い、もう一度死ぬ事となった。

 わたしは大鎌を手にヤツに斬りかかり、その両腕を切り落とした。そして、両足も切り落とす。

 そしたらヤツは動くことは出来ない。

 動けなくなったゾンビに一翔が至近距離で矢を放つ。すると、ヤツは本当に動かなくなった。

 わたしは素人なので、ヤツの手足を切り落とし、トドメは誰かが刺す方が効率がいいに違いない。

 四人の活躍により、十体のゾンビはあっという間に倒された。けれど、街中ではゾンビの呻き声が響いている。


 ーそう、まるで、世界を滅びへと誘うメロディーのようにー



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