第3話 石ころと宝石、世界は無限色で出来ている

私とおねぇ、そして、ルーサさんと一緒に扉に1番近い席に座る。

私とおねぇの前にルーサさんが座る。


列車の合図がして、列車が走り始める。

「う、うわぁ。凄い! 動いてる。動いてるよおねぇ」

「うん。フクシア凄いよ! 列車に初めて乗ったよ!」

私たち姉妹がはしゃいでいる様子をルーサさんは微笑ましそうに眺めていた。


「アンタ達、列車は初めてなのかい?」

彼女の問いにおねぇが答えた。

「そうなんですよ。私たち、森の奥地にある家に生まれたので、列車に乗る機会すら皆無だったんです」

「そうなのかい。それじゃ、今回の旅は新しい刺激が多いねぇ」

「はい。とても楽しみにしているんです」


その気持ちは私も同じ。

新しい物に、知識に触れるというのがとても嬉しいし、楽しい。


「それは、とてもいい事だねぇ。その気持ちをいつまでも、大事にしておきなさい。好奇心というのは無限に広がる石ころの中から、宝石を見つけるようなものなんだよお嬢ちゃん達」

「「宝石?」」


「そう。宝石。冒険や研究はそういうもの。大人になるとね、石ころばかり見つける人生なのよ。宝石が近くにあっても気が付かない。歳をとって家族や仕事、恋人——大切なものを色々と失って自分の世界が狭くなって初めて宝石に気付くの。子供の頃には色々な物がキラキラ輝いて見えていたことに。大人になるにつれて宝石の数が石ころに変わっていたのよ」


彼女は柔らかい声で言葉を紡ぐ。

でも、そこには経験による深みがあって、聞けば聞くほど、噛めば噛むほど深みが出て私の心に彼女の言葉が沈んでくる。


彼女の瞳は宝石のように輝いて綺麗で、精力的で活力が湧いているように私には見える。

「子供の頃には色んなものが新鮮で、世界が綺麗で鮮やかに見えていたのに、大人になってくるとその世界に慣れるのよ。慣れて、色鮮やかな世界がモノクロ世界に変わっていく。つまりね、見方の問題なの」

「見方の問題?」


「そう。見方の問題。この世界が色鮮やかな、カラフルな宝石で本来は覆われている。それをモノクロに染めてしまうのは自分なの。好奇心というのはね、宝石を石にしないための魔法なのよ」

彼女の目が爛々と輝いて見えるのも好奇心の所為なのかな?


この世界を虹色に染め上げた人の目。

私は、いつのまにか彼女に質問をしていた。

「貴方がそんなに精力的で、活動的に見えるのもそのせいなのですか?」

私は知りたかった。


この人の人生を。

生き様を。

生き方を。

旅の仕方を。

生き道を。


「それでは、話しましょう。私がどのような人生を歩んで来たのかを。私の今までの旅を」


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