第六話 異世界モノのテンプレ その2
ギルドに入ると中には様々な武装をしている人たちがわんさかいた。
大斧担いだ大男やローブを着てロッドを持っているお爺さん、更には露出の高い鎧をつけている女性などファンタジー感あふれる光景だ。
さっきハンマーを作った理由はこれである。
ギルドで武装していない人間は多分目立つ。変に絡まれたりしないように武器を持って牽制するという効果もあるが、特殊効果がなぜ感覚軽量化なのかは後でわかるだろう。
入口から左には酒場らしきものがあり冒険者たちが酒やら肉やらを飲み食いしている。
右には沢山の紙が貼られている掲示板とその隣に受付カウンターがあった。
朝という事もあり、六つあるカウンター全てが埋まっていた。
結構な行列だが並べばいずれかは順番がやってくるだろう。
俺はなんとなくで2番カウンターに並んだ。
少し並んでいると後ろから喧騒が聞こえてきた。
どうやらさっき見た大男とエルフの少女(見た目年齢16歳)が言い争っているようだった。
ただ、あまり言っている内容がよく聞こえないので列から外れて喧騒の中心地たる酒場に移動した。どうにも言い争いや喧嘩などはギャラリーが集まるようで、いろいろな視線が喧騒の中心へ刺さる。が、本人たちは頭に血が上っているのか周りが見えて無い様だった。
この無邪気な喋りとこの容姿で止めてみるか。上手くいかなかったら受付まで逃げればいいだろう。
俺は二人に近づいて対話と喧嘩の仲裁を試みる。
まずは大男の方に話しかけるべきだろう微妙に大男の方がボルテージが低く見えたからだ。少し大きめの声で話しかけよう。
「ねぇねぇおじさん!何で喧嘩してるの?」
「あ?なんだこのガキ」
「喧嘩なんかしたらだめだよ!相手も自分も気分が悪くなっちゃうじゃん!」
「いや、吹っ掛けてきたのはあっちの方なんだよ」
「え?そなの?」
「ああ。俺がゆっくり飲んでいるところにあいつがやってきていきなり蹴って来やがって挙句の果てに金をよこせだの言ってきたんだ」
すると少女の方が女子特有の高周波が発生する大声で主張してきた。
「私が蹴ってあげたのよ!?お金を要求して当然だわ。あんたみたいなブサ男なんて蹴りたくもないわよ。あ~足が汚れちゃったからさっさと慰謝料払いなさいよ」
「こっちは頼んでねぇんだよ。もう謝らなくていいから失せろよ」
「はぁ!?こっちはまだお金を受け取ってないんだけど?」
前の世界ならお金を払うやつは結構いただろうな。だが、進んで蹴る奴なんていくら可愛くてもただの暴力女だろう。これはDQN確定かね。
ここは大男の味方をしよう。同じ男として協力しようじゃないか。
「いいから金貨10枚払いなさいよ」
「そんな大金持ってる訳ねぇだろうがよ」
「まっ、それもそうよね。あんたみたいな落ちこぼれ風情が金貨なんて持ってないわよね」
「てめぇいいk「持ってないってわかってるのに要求したおねーさんって最低だね」
「なっ!?」
「しかも暴力でお金を奪うってまるで山賊だね!」
「クククッ山賊だってよ」
「小さいからって調子に乗るな!!」
そういってエルフの少女はどこからともなく取り出した少し細めの剣をこちらに振り下ろしてきた。これは避けられそうもないと思った俺はハンマーの柄で刀身を弾いて大男の後ろに隠れる。
「おじさん助けて!」
「おう!任せろ。おい、そこのエルフ。子供にテェ出しやがったな?」
おじさんはエルフに向かって殺意のこもった眼でにらみつける。
するとエルフ少女は半泣きになりながら逃げて行った。
周りからは拍手が贈られた。当の俺ら二人は呆けていた。
おじさんの方がはやっく立ち直ったのか
「おかげであいつを追い払えたよ。ありがとな嬢ちゃん」
「おじさんも守ってくれてありがとう!」
「困ったときは俺を頼ってくれ。絶対力になる」
「うん!」
なにかが焦った様子でこちらに走ってくる。細身で白衣を着ている。どうしたのだろうか。
「ギルドマスター!ここにいらっしゃいましたか。探しましたよ、全く」
「え?ギ…ギルドマスター?」
「あ~ばれちまったか」
俺が援護に入ったこの大男がまさかギルドマスターだったとは。
朝からボリューミーなことが起きたものだ。
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