第五話 異世界モノのテンプレその1

あんな残虐なものをボーっと見ていたらいつの間にか夕日が沈みかけていた。

そこまで呆けていたつもりはなかったのだがショックかなんかで意識が少し飛んでいたのだろう。ここは異世界だ。いつまでも前の世界の常識にとらわれていてはいけないらしい。


「行きますか…」


意味もなく呟いた俺は暗くなりつつある血生臭い街道を歩いていくのだった。

半刻ほど歩いたところで門と一人の衛兵らしきものが見えた。あそこを通らないと中には入れないようだ。

何事にも対話が必要。そう思った俺は衛兵に話しかける。


「こんにちは、衛兵さん!」

「やぁ、可愛らしいお嬢ちゃん。こんな時間に一人でどうしたんだい?」


やばい。どう答えよう。でっち上げでもなんとかなるかな。


「あn「とにかく入りなさい。外は危険だよ。」」

「あっはい。ありがとうございます。」


俺がでっち上げをする前に衛兵が門を開けてくれた。

普通怪しむよな。いくら美少女でも背中に大剣をしょっているのだから。

それともこのおじさんがザル警備なだけか。もしもここの警備がみんなそうだったら残念過ぎる。

何かの門を通った先にはたくさんの建物があった。そばに立ててあった看板を見るとマキスの街と書いてあった。まぁ、もう夜だし泊まるとこを探さなくてはならないだろう。門の内側にいる兵士に聞いてみることにしよう。


「ねえねえ兵士さん、宿屋ってどこにあるのか教えて?」

「ん?宿屋ならこの先をまっすぐ行ったところにあるよ。たしか、アード亭だったかな。にしてもお使いかな?偉いね。気を付けるんだよ」

「うん!おにいさんありがとう!」


ところが残念。お使いでも何でもないんだなこれが。

さて、街に来たことだし通貨の確認を行おうと思う。

何をするかはお察しの通り創造だよ。レッツSOUZOU!

―特殊スキル:世界の記憶を会得しました―

このスキルは名の通り世界の記憶を見ることができるのだ。干渉レベルなどは無視で。そして覗いてみた結果、以下のことが分かった。

通貨の単位はガリド。表記はGとなる。

相場は日本円に換算すると、1G=10円となる。

通貨の種類だがこれはガリドのみで、石貨・銅貨・銀貨・金貨・白金貨・真晶貨が存在している。

1G=石貨 10G=銅貨 100G=銀貨 1000G=金貨 10000G=白金貨 である。

真晶貨は一枚10000000Gで日本円にすると一億円だ。この通貨を持っている人物は上級貴族か王族ぐらいである。見た目は水色に光る白金貨…らしい。

ぜひ一度は見てみたいものだ。

アード亭の基本料金は4G。この世界の相場は低いらしい。その分生活水準が低いと予想される。

調べながら歩いているとアード亭に着いたようだ。見た目はなかなか小綺麗な感じである。ボロボロな感じのを予想していたから、驚愕を隠し切れない。隠す相手なんていないけども。

中に入って受付のとこまで行く。中も普通に綺麗だった。生活水準が低いというのは撤回しよう。

そういえば今お金を持ってないんだったな。

受付まで行ったがおばさんに声を掛けられる前にUターンして宿屋を出た。

まずはアイテム屋でこの大剣を売ろう。多分5Gにはなるだろう。美少女が使った大剣だ。そう安くはならないだろう、用途が少しアレだけども。

世界の記憶でアイテム屋:アイテマーを探し出し、入店をする。

するとカウンターの男性が対応してくる。


「いらっしゃいませ。今回はどのようなご用件で?」

「この大剣を買い取ってほしいの?どうかな?」


この無邪気な喋り方は使いやすい。怪しまれないし。

大剣を受け取った男性は少し考えた後に


「では、この大剣を20Gで買い取りましょう。よろしいですか?」


といった。俺は迷うそぶりなく返事した。

店員の男性から銅貨一枚と石貨10枚を受け取った。

場所は戻ってアード亭。受付のとこまで行き、一泊分の料金を払った。オプションの翌日朝食付きで石貨5枚だ。部屋の鍵を受け取ってからまずは食堂に行く。

出てきた料理は黒パン二つにとろみのかかったスープだった。食べ合わせの相性が良かったが食べやすいだけであまりおいしくはなかった。安い分だけいいのだろう。

食事が終わり、鍵の書いてある番号の部屋に行って扉を開けてみる。

中には、ベッドが置いてあるだけの4畳ほどの部屋だった。

扉に鍵をかけてベッドに横たわる。ベッドは硬いが寝られないほどではない。むしろちょうどいいぐらいだ。明日は冒険者ギルドに行ってみよう。そして冒険者になってお金を稼ぐんだ。

だんだん眠くなった俺は睡魔に身を任せて眠りについた。


~翌朝~

朝日が部屋に差し込み、まぶしいせいか自然と目が覚めた。食事をとるために食堂に行って朝食を食べる。献立の変更点は黒パン一個とさらさらのスープということだった。昨晩のとろみのあるスープはお腹を満たすためだろう。不思議が一つ溶けた。

しかし、肉が食べたいな。野菜しか入ってないスープと黒パンではやっぱり何か足りないように思える。

これは今日の稼ぎ次第だな。

宿屋を出て世界の記憶だよりにギルドへ行く。

ギルドの見た目は壮観で高さは二階建て程度だが、広さが尋常じゃなかった。

さすが、ギルドの名は伊達じゃないということか。

ギルドに入る前に武器の作成をしておかなくては。

今回使用する武器はハンマーだ。ちなみに異世界ハンマーではなく、工具の方のハンマーである。

―特殊武器:テストハンマー(軽)を作成しました―

このテストハンマーは特殊効果により、普通のハンマーより軽いのだ。

使用者のみが軽く扱うことができて、実際の打撃は重い。

本来の用途とは違うが、とがっている方を使えば十分武器になるだろう。

さぁ、ギルドに入ろうか。

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