第2話魔法と異能とステータス
「あの、詳しくステータスと異能について教えてもらえる?」
「わかりました!まずはスマホをご覧ください。ステータスについてはこのスマホ画面でいじることができます」
エマちゃんが俺のスマホ画面をペタペタと触ると、ステータス画面が出てくる。その画面にはまだ表記がなかった。
「ステータスは個人によって変化するものです。そこから鍛えることによって色々ステータスを変えることはできますが、基本才能というものがどの人間にも存在します。才能がない人間はいません!これはあなたの才能を移すものだと思ってください!その上で、才能がないところを埋めるのもまた、一つの作戦です。では、あなたにステータスを上げます」
色々まくし立てられて俺は圧倒されっぱなしだ。これを幻覚だと捉え、夢を見てると思うのが普通なのかもしれない。
でも俺はキモオタでぼっちだ。俺は信じたい、この幻覚を。
「お願いする」
「はーい!わかりましたよー。では、ステータス授与です!」
手のひらサイズのハリネズミから、魔法陣が浮かび上がり、俺に向かって見えにくい何かが飛んできた。
それを当てられると、ビリビリと体の内側から血が弾けるような衝動、筋肉が跳ね上がる鼓動を感じた。
「これであなたはステータスを得ることができました。ついでに異能も」
エマちゃんがスマホ画面を勧めて見せてくる。
ステータスを見てみると、俺は魔力、スピード面で優れているようだ。逆に、防御力が少し心もとない。いや、他のステータスが高くて防御力が平均とかかもしれない。
「このステータスって、強いとかあります?」
エマちゃんに聞いてみるのが1番正しい答えが得られる気がした。
「そうですね。初期ステータスにしてはかなり高めですね。特にスピードと魔力はかなりです。ですが防御力は低いです。あと遠距離魔法の使用は苦手なようです」
遠距離魔法が苦手なことまでは確かめていなかった。やっぱり防御力は低いのか。
さらに詳しく見ると才能について書かれていることに気づいた。なるほど、ここに遠距離魔法が苦手と書かれているな。
スピードと魔力に関しては才能がかなりあるようだ。近接魔法も得意と書かれ、得意武器はロッドか剣らしい。遠距離魔法が苦手なのに得意武器がロッドとはなんとも矛盾してる。ロッド持って近接で戦うのはちょっとやだなぁ。
異能も確認してみよう。異能については詳しく聞いてないし、自分で確かめてみてもいいだろう。
書かれている内容を見てみると、異能とは個人に与えられたその人だけの能力。
俺の異能は『ロックオン』、自分、または触れた物を1秒~1分間の好きな時間、固定する能力。一度使用すると、同じ物体に再度効果を付与するにはクールタイムが1分必要。何度も使用可能。
固定するかぁ、すごく難しい感じがする能力だな。使い方が今のところ思いつかない。
「この能力って変えることはできないんですか?」
「無理です。それがあなたの才能ですから」
む、無理なのかぁ。異能って聞いてたからてっきり、時を止めるとかなんでも壊せるみたいな能力だと思っていたのに、期待しすぎた。
まあステータスを貰えただけ嬉しい。これで、俺は一段階上のぼっちを目指せる。
「ステータスを上げるには、俺はレベル上げをするべきだと思うんだが、レベル上げとかって存在するのか?」
「存在しますよ!それにはクエストをクリアする必要があります。クエストは定期的に出てきます。別にやらなくてもいいですけど、やってもらえればそれだけ報酬があります」
なるほど、クエストをクリアすればするほど、強くなれるのか。ロールプレイングゲームと同じようなもの。ソーファンのレベル上げと同じようなものか。
「早速クエストをやってみますか?」
クエストに興味はあるが、もしモンスターと戦うとかだったら今はダメだ。運動できないだけのステータス与えられた人間には勝てないと思うので、まずはトレーニングからだろう。中学生ぼっちの体は小学六年生と同じようなものだ。
「いや、まずはトレーニングするわ。魔力の扱い方とか、体を鍛えなきゃと思ってな。魔力の使い方、教えてもらえるか?」
もしかしたらソーファンの魔法や武器スキルが使えるのかもしれない。
「ごめんなさい。私には教えられません。魔力などは私には扱えませんから。私より上の権限の人達しか使えません。ではそろそろ時間です、私は一旦スマホに戻りますが、呼んでくれたら画面上にもこうやって現実世界でも出てこれます。私はあなたの専属マスコットなので、いつでも呼んでくれて構いません。では」
魔力を使わないのにこうやって現実とスマホの行き来が可能なのか?それに魔力なしでステータスは与えられるのか?よくわかんないな。
ソーファンでは、エマちゃんみたいな可愛い動物のマスコットが沢山いる。エマちゃんはちなみに一番人気のマスコットであるが、他にも有名なマスコットは存在する。専属マスコットってことは、他のマスコットが他の人達の専属になると考えていいよな。つまり、ステータスを与えられた人間が他にもいる。その人達と仲良くできればいいが、もしダメだったら戦うかもしれない。やはり、魔力の扱いは覚えた方がいい。
「じゃあどうすっかなぁ」
とりあえず魔力について考えてみる。俺は魔力はオーラ的なものじゃないかなと思っているが、別に体の周りにオーラや気なんてものは流れてるようには思えない。
でも、確かソーファンでも魔力は目に見える形で存在する。魔力を貯めて放つ魔法では、エフェクト的に見えるものがある。つまりソード&ファンタジーの中で魔力はオーラ的なものなはず。
身体の内側のどこかにあるだろ。魔力が沢山あるんだし、とりあえずひねり出す気持ちでいこう。
「ふっ!」
流れろ流れろ流れろ流れろ流れなーい。
あー疲れた。一瞬に集中してひねり出そうとしたがダメだった。お腹が痛かったら確実に漏らしてたぜ・・・・・・。
「あーどうしよう」
俺はダメだったらすぐ諦めるタイプなんだ。ゲームでもそうだ。S&F《ソード&ファンタジー》でこれだけ諦めずにランキング1位を死守してるのが不思議なくらいだ。
魔力を流せないなら俺の強みは出せない。俺は諦めやすいが、それ以上に負けず嫌いだ。負けるのは嫌なんだ。人生で負けるのなんて些細なことだから大して何も思ってない。今負けてもいい、後で必ず勝てると信じているから。
だから魔力も捻り出してやる。こんな初歩でつまずいてもつまらない。
魔力を身体に流そうと考えてダメだった。ならもっと少なくていい。流そうと考えず、魔力を手のひらから出すイメージで、ゆっくり息を吸い、深く息を吐く。深呼吸は吸うことより、吐くことが大事だという。
魔力を中から出せ。いずれ軽く出せるようになるんだ。だから今、ちょっとだけ限界超えろ!
「はぁああああ」
魔力が出ない。いや何かが集まってる気はしてきた。だけど、さっきとあまり変わらない気が。
あれ、少しだけ、見えてきたか?ぼんやりと見える。薄く見えてきた。
「っ!」
そうだ、これは俺の勘違いだ。魔力が流れていないのじゃない。魔力は常に流れているのだ。
俺は魔力を見てなかった、目を凝らして魔力を見なかったのだ。今、集中して見てみれば普通に見える。魔力はすでに流れていた。
「なんだよ、難しく捉えすぎてたんだ。っと」
なんとなく魔力を使いすぎた感覚におちいる。別にくらくらしたりとかはしない。なんとなく減ったな、と感じた。あれか、うんこ踏ん張る感覚でやった時にきっとめちゃくちゃ出したんだろう。もちろん魔力だ。
「じゃあ魔力を使ってどんどんいこうか。まずはS&Fで使われる初歩の魔法を使ってみるか」
S&Fでは初期の近接魔法、マジックアーツというものがある。魔力で攻撃力を上げるという魔法だが、S&Fでは拳、足の二択で、しかもあらかじめ決めておかなければならないという使いにくさがあった故に、初心者専用になっている。
魔力を拳に貯めてみる。今でははっきり魔力が目に見える。魔力の量を調節して少しだけ多めに右拳に貯め、左拳と比べる。うん、上手くいってるな。
あとは威力の測定だけど、家の中のものを壊したくないしなぁ。物を壊したら家族みんなに怒られる。妹に嫌われたくもないしやめとこう。
外に出て、砂場とか殴ってみようかな。砂なら壊れるとかないし。
学校以外で外に出るのは久しぶりだな。
あ、モチモチさんから招待きてるなぁ。
モチモチさんとは、PVPランキング5位で俺と一緒によく周回したりする友達だ。
ランク戦始まる前にモンスターの討伐を一緒にしよう、か。いつもならやるのだが、今日は魔法使いたいしなぁ。
「今日はごめんなさいっと」
いつもやってるけど、たまには休んでもいいよね?
よし、じゃあ行くか。
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