第2話 黒の堕天使
ふわりとした花びらが風で舞って血の匂いはどこえら消えていった。
私は空を見上げるのを止めるとすぐに耳が反応した。
後ろから聞こえるのは草花を踏む音だけ。
「人間の味はご満足頂けましたか?シュリ様。」
その声は冷たく、少し笑っていた。
「お前は誰だ。」
私が振り返って聞くとそこに居たのはゆったりとした黒長い服をまとった赤い髪の女だった。女は私の質問を聞くと即座に地面に膝をついた。
「失礼しました。私、今日から貴方様にお仕えすることになりました、メトゥス・ニヒルと申します。」
彼女は自己紹介をすると静かに頭を下げた。
「そうか、では誰がそんなことを決めた。」
「はい、
光天神?…ああ、光の神とやらのことか。
それより…
「メトゥス、お前は先程私のことをシュリと呼んだが、それは私の名か?」
「はい、その通りです。貴方様のお名前は、シュリ・セイハ、光天神様から記憶が無いとお聞きしております。そのために私は貴方様のサポートをするように言われております。」
サポートねぇ〜…そんなことを言われても何もかも分からないんだけどね。
やっと自分の名前が分かった所だし。なんか思ったより疲れるなこの仕事。
「ご安心を、シュリ様が分からないことは全て私が説明をいたしますので。」
どうやら私の感情を読み取ったのか、それとも顔に出たいのかは知らないが、気をきかせてくれたようだ。
そのおかげがメトゥスの言葉を聞いてなんだか顔が緩んでため息をついた。
「それでは、まずこの世界について簡単にお話をさせて頂きます。」
彼女は立ち上がると服の振りそでから黒い袋を取り出した。」
メトゥスは黒い袋に手を突っ込むと
「ありました。」と言ってある物を取り出した。
地図か…。
それを広げて渡されると彼女は説明を始めた。
「まず、この世界は人間が統治するテンプルム王国、アトランティス 帝国、クラールス領国、カンパーナ
そう言うと、メトゥスはその場所を指で示した。
「この四つ国は基本的に仲が悪く、意見が対立するたびに争いあっています。人間とは面白いですね。」
メトゥスはそう言ってクスリと笑った。
「そうね。弱い人間が頑張ってけなし合っている様は可愛いわ。」
この二人はどこかに似ているのか目を合わせて微笑んだ。
シュリはもう地図に興味が無いのかメトゥスにそれを返した。
彼女はそれを受け取ると地図を丁寧にまとめて先程の袋に戻した。
「それと、この世界にはごく稀に特殊能力を持っている人間がいます。人々はそれを魔法
なるほど、人間も単なる弱者という訳では無いようだな。「楽しめそう」と言いながら私は下唇を舐めた。
いけない、いけない、さっき食べたばかりじゃない!
「では、より楽しめそうですね。シュリ様もその中のお一人ですから。」
「へぇ〜そんな力、私が持って大丈夫なのかしらね。」
シュリは退屈しのぎなオモチャを見つけて子供のように喜んだ。
「はい、その力は神その者が自らお与えになった絶対的支配と言う名の〝命令〟の魔法です。ですが、それは貴方様に与えられた使命のためにあります。もし神を裏切れば天罰が下ることになるでしょう。」
メトゥスはためらい無く事実を話した。微笑んでいても決して脅しでは無いとわかる。何より目が一つも笑っていなかった。
「つまりお前は私の監視役と言うことだな。」
「はい。ですが、変な事さえしなければ私は貴方様に忠誠を尽くすとお約束します。」
その言葉を聞いて私は鼻で笑った。
この女は所詮は神の方についている、ある意味一番危険な奴ということだ。
「お前はそう言うが、その言葉をどう信用すればいい。」
私はあえて意地悪な質問を投げかけた。
「ご心配はありません。もし私のことを信用出来ないならどうぞ、今すぐに私のことを殺して下さっても構いません。」
何を言い出すかと思ったら、予想外の返答が返ってきて、私は面白いことを言うじゃないかとつい笑ってしまった。
「私が死んだ所で困ることもありません、貴方様に仕える者はまだおりますので。」
「仕える者?」
メトゥスは返事をすると数枚の黒いカードを私に手渡した。
「このカードは私と同じようにシュリ様を守るためだけに作られた物です。カードに書いてある名前を読み上げることでその者を召喚することが出来ます。」
「そう、いいわ。とりあえず命までは取らなくて良さそうだわ。信用してあげる。」
「ありがとうございます。」
シュリは広げたカードを揃えると、礼をするメトゥスを見つめた。
「まぁ、この話は置いといて、どうやったらその命令とやらの力を使えるのかしら?」
「はい私の解析の能力を使って命令の能力の説明をさせて頂きます。」
メトゥスは紙を取り出して、その目を光らせた。その途端に真っ白だった紙に長々しい文字が並んでいった。
その紙を私に差し出すと説明を始めました。
「まず一つ、魔法発動時は血と魂が十分に捕食していること。その条件が満たされていたら口にするだけで使用可能です。
ですが、三つ程欠点があります。一つ目、使用限界はシュリ様の体力が限界になること。二つ目、命令の内容が大きい程、体力消耗の対価は大きい。」
メトゥスはここまで言うと何故か三つ目を切り出すのに間を開けた。
「そして、三つ目…、血と魂が尽きれば、この世にない苦しみと言う死が待っている。
…以上です。そうなら無いように気をつけてください。」
この世にない苦しみね。何故か分からないが、今の言葉を聞いても死にたいする恐怖をまるで感じ無かった。要は捕食を怠らなければいいことだ。
私を追い詰められる人間がいるなら別だか。
「そう、なら死なないように気をつけて無いとね。沢山殺してためを作った置かないと私の望みは叶わないもの。」
シュリはそう言うと恐ること無く命令をする。
「確か、言うだけでいいのよね。
魔法に命じる!殺してもいいような、人間をこの先の崖の下に用意しろ‼︎」
そう言うと足元に青い炎が円と文字を浮かべて魔法陣を作り出した。
「メトゥス、大きめのビンを二つほど用意しておいてくれ。」
私は冷たく言うと、メトゥスの前を通り過ぎて目的の場所に歩いていく。
「了解しました。」
そう言うと礼をして一瞬で姿を消した。
「さてと、カードを使いましょうか。」
シュリは持っていた紙を燃やして、カードを広げる。
とりあえず、この二枚から使うとするか。
二枚のカードを手前から選ぶと赤く書かれていた時を読み上げる。
「イーラ・ウーヌス、クルーデーリス・ドゥオ、姿を示せ!」
カードを軽く投げると、そのカードは大きいなって黒い光の中からその二人は出て来た。
イーラのカードからは銀髪の短い髪に蒼い瞳のお人形のような女の子が出てきた。
クルーデーリスのカードは黒長いポニーテールの髪に白い瞳の氷のような女が出てた。
そしてその二人はシュリを見るとすぐに膝をついた。
「お前達二人に命じる。今から、崖の下にいる人間共を殺し、血と魂を回収してこい!」
『了解しました。シュリ様。』
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