ご主人様ですニャ!

第23話 ご主人様ですニャ!

 朝起きると幼女が俺に跨がって眠っていた。


 身長は大体百三十センチぐらいだろうか。肌は小麦色に焼け、睫は長く、顔はやや丸っこくて整っている。もしこの娘が大きくなったらきっとかなりの美人になるだろう。もしかしたらキラより美人になるかもしれない。とにかく将来有望株だ――って!そんな感想どうでも良いわ!!


「どうしたものか……」


 ベッドから叩き出すのも一つの手だが、俺は幼女には甘い。言っとくがロリコンだからではないぞ。ただ父性本能的な問題で甘くなるんだぞ――って、俺は誰に言い訳をしているのだろうか……


 取り敢えずロリの鼻を摘まんでみる。


「んみゅぅぅぅ……」


 そして放す。


「ぷあっ……」


 ――何だこの可愛い反応は……何というか、こう、何だ?も、萌えー。


 ロリ系のエロゲとかはやらないから分からなかったが、幼女にイタズラするというのはこうも興奮するものなのか。実際の幼女にイタズラするのはどうかと思うけど、これはヤバイ。背徳的な意味で。


「ら、らめ……ご、ご主人様……しょ、しょんなの入らないニャ……」


 ――な、何がでしょうかああああああ!?


 寝ながら頬を染め、モジモジするロリに、心の中で絶叫しながら訊ねる。


「ひゃうんっ!?き、気持ち良い……んくっ……」


 ――本当にロリに目覚めそうだからもう止めてえええええ!!って、このロリを起こせば良いだけの話か。しかしこうも気持ち良さそうに寝ているロリを起こすのには勇気がいるな。泣かれても困るし……


 そう思っていると――


「……ん」


 ロリがパチリと目を開けた。そしてこちらを見上げると、ニャハッと明るい笑みを浮かべてこう言う。


「おはようございますニャ!ご主人様!」

「あ、あぁ、おはよう……って、は?」


 ――今、この娘、俺にご主人様って言わなかったか?いや、気のせいだよな。うん、そうに違いない。


「呆けた顔してどうしたのですか?ご主人様?」

「…………」


 ――気のせいじゃなかったああああ!!


「ご主人様?」


 相変わらず俺の上でこちらを見上げながら首を傾げる幼女。円らで濡れた瞳を見ていると不覚にもオッキしそうになる。てかなっていた。


「何か硬いものがあるのニャ……」


 そう言って俺のナニを握り締めるロリ。


「ご主人様?これは何でしょうか?」

「……だああああああ!!」


 堪らず起き上がり、幼女の両脇を持ち上げて、彼女をベッドから下ろす。するとロリはちょこんと正座した。


「てか君誰!?何で俺のベッドで寝ているんだ!?」

「それは――」

「お兄ちゃんどうしたの!?」


 ロリが答える前にキラがドアを開けて乱入。


「お兄……ちゃん……?」


 自分の背中に右手を回し、そこから包丁を取り出すキラ。そして涙目になりながら――


「バカーー!!」


 ――こちらに飛び掛かる。


「ちょっ!?」


 包丁が俺の眼前に迫って来た。このままでは俺の右の眼球に突き刺さるだろう。そうなると失明は必至。どうにか避けないと確実に右目が使い物にならなくなる。


 しかしもう遅い。どう動いてもこれは避けられない距離に来ている。


 そして次の瞬間――


「てりゃ!!」


 キラの右手から包丁が消え、彼女は俺を押し倒す形で倒れる。


「へっ?」

「えっ?」


 理解不能な事態に素頓狂な声を出す俺とキラ。だが仰向けている俺はすぐに気付く。天井にキラが持っていた包丁が突き刺さっている事に……


「危なかったニャ」


 ロリが高く上げた右足を下ろしながらフゥー、と安堵の息を漏らした。察するに、どうやらロリがキラの包丁を蹴り上げて俺を助けてくれたらしい。


「大丈夫ですか、ご主人様?」


 そう訊ねながらロリは、心配げな表情で俺の眼前まで来る。その瞬間、シャンプーかリンスのフレグランスな香りがこちらに飛んできた。清潔感漂うその香りに俺は不覚にも再びオッキさせられる。


 ――いや、違う!これは朝の整理現象だ!!そうに違いない!!てかそうじゃないと困る!!


「だ、大丈夫だ」


 ――とは言え、色々と大丈夫ではないんだよな。


 キラとロリの顔がめっちゃ近いし、未だ不良息子が早朝ウイリーしてるし。


「ところで君、名前は?」

「お兄ちゃん、この幼女の名前は泥棒猫よ。ニャーニャー言うし、あたしのお兄ちゃんをNTRしようとしてるから間違いないわ」


 ――NTRって、そもそも俺はロリには興味ないのだが?そしてお前にも興味ない!


「この泥棒猫あうっ!」


 昼ドラっぽい台詞を吐くキラの頭頂部にチョップを食らわせる。


「お前は黙ってろ」


 そう言ってキラを軽く睨んだ後、ロリに向き直る。するとロリはこう答えるのであった。


「では朝食を摂りながら説明するニャ!」










 ロリの一言で俺達は朝食を摂る事にした。テーブルに並んでいるのは食パン、目玉焼き、クラムチャウダー、ウインナーの四種。実に一般家庭的な並びである。そして席に就いているのは、俺の家族全員とロリ。因みに、何故か座りは俺右にキラ、左にロリとなり、その正面には両親となっている。


「で、早速本題に入らせてもらうのだが、そもそもロリ。お前は何者だ?」


 左腕に抱きつくロリを横目で見ながら訊ねる。


「ニャーの名前はスースー・スラスターです。気軽にニャーちゃんとお呼びくださいニャ!」

「異議あり!!」


 右腕に抱きつき、胸を押し付けながらキラは叫ぶ。てか異議ありって、こいつは弁護士か何かなのだろうか。逆転裁判でもするのだろうか。


「その名前とあだ名に共通点が全く見えないわ!論破完了!」


 ――いや、全く論破出来てねえよ。


「それで、ニャーの役割としましては、ご主人様……つまり龍様の警護となっております」


 ――コイツ、スルーしやがった!?


「ちょっと!無視しないでよ!!」


 そう言うとキラは獰猛な八重歯きばを剥き出しにしてガルルル、と唸る。だが飄々とした顔で全く怯んでいないニャーちゃんは更に話を続ける。


「何故警護なのかと言うと、それは恐らく昨日父君から話は聞いたかと」

「…………」


 昨日、親父から俺の両親についての話を聞いた。


 俺の本当の父親は、とある国の王様の弟で、俺には王位継承権があるとの事。しかも俺は結構高い位にいるらしく、それが原因で幼い頃、常に他の候補者から命を狙われていたらしい。だから俺は本当の父親と交流のあったこの宮平家の両親に引き取られた。それからは命を狙われる事が無くなった……それが親父から聞いた全てである。


「もしかして俺はまた命を狙われているのか?」

「はい、残念ながら」

「その理由は?」


 俺はこの国に亡命してきた身。だからこそ王位継承権を失って命を狙われなくなったというのに、何故今になって狙われる?それがどうしても分からない。


「それは現国王とご主人様の父君が危篤状態に入っているからです」

「危篤状態?」

「はい、犯人は分かっていませんが毒を盛られてしまったのです……」

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