第5話 妹とラブホ街を歩く
今度は先程オレにピアスを買えと言った宝石店に入る。
――女性は宝石を好む傾向があると聞いた事がある。それはキラも同じという事か。きっとまたオレに買えと言っ今度は先程俺にピアスを買えと言った宝石店に入る。
――女性は宝石を好む傾向があると聞いた事がある。それはキラも同じという事か。きっとまた俺に買えと言ったピアスを見るのだろう。
そう思ったが、彼女はそれをスルーして他のショーケースの前で立ち止まった。
――あの場所には確か……
それから数秒してキラは宝石店から出る。
「…………」
トイレ近くにあるベンチに座って、ケータイをいじっているキラの右肩にポンと手を置く。
「よっす!機嫌は直ったか?」
「あんたの顔を見たらまたイライラしてきたわ」
そう言ってキラは眉間に皺を寄せる。
――ワオッ!半端ない理不尽!
「今度はどこに行く?」
キラが怒った原因は俺だ。だから俺は彼女の要望を聞いて機嫌取りをする事にした。
「ムードのあるところが良いわ。あんた考えなさい」
「うーん……」
――ここら辺には展望台や高台などがある。だがもし行くとしたら……あそこかな?
「で、何でここ?」
俺達はプラネタリウムに来ていた。
ここは【カップルなら一度はデートで来る】と言われている程有名な場所だ。なので選択的には間違いではないだろう。
それと同時にここは、男性にとってとてもラッキーな事が出来る場所という事でも有名だ。そのラッキーな事とは――暗闇で手を繋ぐ事が出来るというもの。てなわけで――キラの右手を左手で掴み、そのまま恋人繋ぎをして……
「ちょっ!?何すんのよ!?」
一緒に適当なところに座る。
「俺達が今日は恋人という事を忘れたのか?」
「で、でも……」
キラはキョロキョロと辺りを見回す。どうやら恥ずかしいようだ。しかし案ずる事なかれ、ここは既に暗闇である。これならチュッチュしても誰にもバレないだろう。そう、例えば──
「おっぱい触っても良いか?」
という事も可能だ。
「死ね」
――ですよねー。
『それでは開演します!』
アナウンスが流れてから数秒後、天井に綺麗な星々が現れる。
『まず、こちらにありますのは~~』
――あっ、眠くなってきた……このままじゃまた落ち……る……
『お兄ちゃん、お医者さんごっこってなに?』
『ぶふうっ!?』
女の子の唐突無垢な質問に驚いた兄は、食事中に飲んでいた牛乳を吹き出す。
『き、急に何訊いているんだよ!てか何でその単語を知っているの!?』
『何かね、友達の女の子がいつもお兄ちゃんとしてるんだって!』
『□□、その友達とは今すぐ縁を切りなさい』
――ナイスだ兄。
『イヤだ!茜ちゃんはとっても良い子だもん!』
『よし、分かった。じゃあ僕がお医者さんごっこがどれだけ悪い遊びなのか教えてあげる!』
『ヤッター!』
女の子は嬉しそうに両手を上げて万歳した。
『じゃあこっちに座って』
兄は隣の父親の診療所から聴診器を持って来ると、お医者さんごっこをするには丁度良い場所に椅子を置いた。
『うん!』
女の子はニコニコと笑いながらその椅子に座る。
『これは□□にお医者さんごっこは悪い遊びだと教えるため、これは□□にお医者さんごっこは悪い遊びだと教えるため……よ、よし!』
兄は聴診器の耳管を装着し、恐る恐る女の子が捲ったシャツに手を入れて、彼女の胸にチェストピースを当てた。
『ど、どうだ□□?なにか感じるか?』
『聴診器が冷たいよー』
『イヤな気持ちにはならないか?』
『ううん、ただお兄ちゃんに触られていると思うと、胸がドキドキする。これは何でだろう?』
『うーん、分からない』
――兄よ、それはきっとカップルが手を繋いでドキドキしているのと同じ感じのものだぞ。
『そ、そうだ!じゃあ上着脱いで!』
どうやら兄は素肌を見られる恥ずかしさを教えるつもりなのだろう。それできっと女の子は顔を赤くする。そしてこれがいけない事なのだと教えれば万事解決だ。
『うん!分かった!』
妹は即答すると、シャツのボタンを外し始める。
『ま、待って、分かった。じゃあ□□がもっと大きくなったら、お医者さんごっこがどれだけ悪い遊びなのか教えてあげる。だからそれまでは絶対に誰ともお医者さんごっこしちゃだめだよ?』
『うん!』
そして妹はコクリと頷くのであった。
――危機は去ったか。ナイスだぞ、兄!
『分かったよ、龍お兄ちゃん!』
――えっ?龍お兄ちゃん……?てことはこの兄はやっぱり俺なのか……?そしてこの女の子は……
「……ねえ」
――やっぱり……
「ねえ、起きて」
――やっぱりキ……
「起きろぉー!!」
「ごふぅっ!?」
腹部から鈍い痛みが全身に広がる。この感じ、俺はごく最近味わった。今のは――キラのボディーブロウだ。
「な、何しやがる!?」
「あんたが寝ているから悪いでしょ!てかもう終わったから」
「えっ!?」
キラに言われて気付く。
辺りは明るくなっていた。先程まで天井に映っていた星々ももうないし、案内員が掃除を始めている。
「じゃあ時間も時間だし、そろそろ帰るわよ」
そう言ってよく映画館とかにあるような折り畳み式の椅子から立ち上がるキラ。
「えっ!?」
腕時計で時間を確認すると、時刻は午後六時前を指していた。
これ以上デートしていたら、確実に帰るのが遅くなる。そうなるとおかんにどれだけ怒られる事か……となると心残りはあるがもう帰るしかない……と、言いたいところだが、まだ行きたいところがあるから、帰るのはそこに行って、やることをやってからにするとしよう。
「キラ、次行くぞ!」
「はあっ!?」
立ち上がってキラと無理矢理手を繋ぐ。
「大丈夫!もしおかんに怒られるような事になったら、俺が守ってやるから!」
「いや、別にばばあは怖くないけど……って、手を放しなさいよ!!」
ブンブンと手を振って、何とか繋いだ手を放そうとするキラだが、覚悟した俺がそれを許すわけがない。
「アハハハハッ!キラはツンデレさんだな!」
「違うわよ!てか放せ!!今すぐ放せ!!」
そう言いながらげしげしと俺の足を踏むキラ。痛みで反射的に手を放すのを狙っているようだが、童貞とは時に物凄い力を発揮する生き物だ。故に絶対に放すつもりはない。
「大丈夫!子供が出来たらちゃんと責任取るから!」
「はあ!?あんたいったいどこに行くつもりなのよ!?」
「男なら龍太郎、女ならキララが良いな!」
「だからどこに行くつもりなのよ!?」
「男と女が行く場所と言えばあそこしかないじゃないか!」
現在地からすぐ近く、ラブホテル街がある辺りに視線を向ける。
「なっ!?」
全てを理解した風のキラは、顔を真っ青にした。
「ちょっと!なに考えてんのよあんた!!」
「まあまあ!」
何とか逃れようと、より一層俺の足を強く踏むキラ。だがそんなの俺には通用しない。だって童貞なのだから。
ラブホテル街に入る。数あるラブホテルをスルーする。そしてラブホテル街を出る。
「──って!どこにも入らないんかい!!」
キラに後ろから太腿を思いっきり蹴られる。しかしキラに一矢報いる事が出来た快感に浸っている今の俺にとって、彼女の攻撃力はよもや赤子同然。全く痛くない。
そこからまた数分歩いたところで立ち止まり、手を放す。
「やっと放したわね。で、あんた何をするつもり?──はっ!?まさか青姦!?」
恐ろしい子、と言うかの如く白目を剥いて顔を真っ青にするキラ。
――オーウ、年頃ノ女ノ子ノ思考ガ全ク読メマセーン。
「別にそういうつもりはない」
「…………まさかっ!?首輪に目隠しからの青姦!?」
再びキラは、恐ろしい子、をする。
――オーウ、ヤッパリ読メマセーン。
「取り敢えずエロイ方向からは離れような?」
「はあ……ならいったい何なのよ?何でこんな人通りの少ない所に来たの?」
今は夕方で、辺りが橙色に染まっている。これはあの時と同じだ。
「丁度ここら辺だったよな」
「…………なにが?」
ああ、因みにだが、俺が言った『あの時』とは、ずばり──
「お前が指輪を落としたところだよ」
キラが指輪をドブの溝に落として泣いていた時の事である。
「えっ……」たピアスを見るのだろう。
そう思ったが、彼女はそれをスルーして他のショーケースの前で立ち止まった。
――あの場所には確か……
それから数秒してキラは宝石店から出る。
「…………」
トイレ近くにあるベンチに座って、ケータイをいじっているキラの右肩にポンと手を置く。
「よっす!機嫌は直ったか?」
「あんたの顔を見たらまたイライラしてきたわ」
そう言ってキラは眉間に皺を寄せる。
――ワオッ!半端ない理不尽!
「今度はどこに行く?」
キラが怒った原因はオレだ。だからオレは彼女の要望を聞いて機嫌取りをする事にした。
「ムードのあるところが良いわ。あんた考えなさい」
「うーん……」
――ここら辺には展望台や高台などがある。だがもし行くとしたら……あそこかな?
「で、何でここ?」
オレ達はプラネタリウムに来ていた。
ここは【カップルなら一度はデートで来る】と言われている程有名な場所だ。なので選択的には間違いではないだろう。
それと同時にここは、男性にとってとてもラッキーな事が出来る場所という事でも有名だ。そのラッキーな事とは――暗闇で手を繋ぐ事が出来るというもの。てなわけで――キラの右手を左手で掴み、そのまま恋人繋ぎをして……
「ちょっ!?何すんのよ!?」
一緒に適当なところに座る。
「オレ達が今日は恋人という事を忘れたのか?」
「で、でも……」
キラはキョロキョロと辺りを見回す。どうやら恥ずかしいようだ。しかし案ずる事なかれ、ここは既に暗闇である。これならチュッチュしても誰にもバレないだろう。そう、例えば──
「おっぱい触っても良いか?」
という事も可能だ。
「死ね」
――ですよねー。
『それでは開演します!』
アナウンスが流れてから数秒後、天井に綺麗な星々が現れる。
『まず、こちらにありますのは~~』
――あっ、眠くなってきた……このままじゃまた落ち……る……
『お兄ちゃん、お医者さんごっこってなに?』
『ぶふうっ!?』
女の子の唐突無垢な質問に驚いた兄は、食事中に飲んでいた牛乳を吹き出す。
『き、急に何訊いているんだよ!てか何でその単語を知っているの!?』
『何かね、友達の女の子がいつもお兄ちゃんとしてるんだって!』
『□□、その友達とは今すぐ縁を切りなさい』
――ナイスだ兄。
『イヤだ!茜ちゃんはとっても良い子だもん!』
『よし、分かった。じゃあ僕がお医者さんごっこがどれだけ悪い遊びなのか教えてあげる!』
『ヤッター!』
女の子は嬉しそうに両手を上げて万歳した。
『じゃあこっちに座って』
兄は隣の父親の診療所から聴診器を持って来ると、お医者さんごっこをするには丁度良い場所に椅子を置いた。
『うん!』
女の子はニコニコと笑いながらその椅子に座る。
『これは□□にお医者さんごっこは悪い遊びだと教えるため、これは□□にお医者さんごっこは悪い遊びだと教えるため……よ、よし!』
兄は聴診器の耳管を装着し、恐る恐る女の子が捲ったシャツに手を入れて、彼女の胸にチェストピースを当てた。
『ど、どうだ□□?なにか感じるか?』
『聴診器が冷たいよー』
『イヤな気持ちにはならないか?』
『ううん、ただお兄ちゃんに触られていると思うと、胸がドキドキする。これは何でだろう?』
『うーん、分からない』
――兄よ、それはきっとカップルが手を繋いでドキドキしているのと同じ感じのものだぞ。
『そ、そうだ!じゃあ上着脱いで!』
どうやら兄は素肌を見られる恥ずかしさを教えるつもりなのだろう。それできっと女の子は顔を赤くする。そしてこれがいけない事なのだと教えれば万事解決だ。
『うん!分かった!』
妹は即答すると、シャツのボタンを外し始める。
『ま、待って、分かった。じゃあ□□がもっと大きくなったら、お医者さんごっこがどれだけ悪い遊びなのか教えてあげる。だからそれまでは絶対に誰ともお医者さんごっこしちゃだめだよ?』
『うん!』
そして妹はコクリと頷くのであった。
――危機は去ったか。ナイスだぞ、兄!
『分かったよ、龍お兄ちゃん!』
――えっ?龍お兄ちゃん……?てことはこの兄はやっぱりオレなのか……?そしてこの女の子は……
「……ねえ」
――やっぱり……
「ねえ、起きて」
――やっぱりキ……
「起きろぉー!!」
「ごふぅっ!?」
腹部から鈍い痛みが全身に広がる。この感じ、オレはごく最近味わった。今のは――キラのボディーブロウだ。
「な、何しやがる!?」
「あんたが寝ているから悪いでしょ!てかもう終わったから」
「えっ!?」
キラに言われて気付く。
辺りは明るくなっていた。先程まで天井に映っていた星々ももうないし、案内員が掃除を始めている。
「じゃあ時間も時間だし、そろそろ帰るわよ」
そう言ってよく映画館とかにあるような折り畳み式の椅子から立ち上がるキラ。
「えっ!?」
腕時計で時間を確認すると、時刻は午後六時前を指していた。
これ以上デートしていたら、確実に帰るのが遅くなる。そうなるとおかんにどれだけ怒られる事か……となると心残りはあるがもう帰るしかない……と、言いたいところだが、まだ行きたいところがあるから、帰るのはそこに行って、やることをやってからにするとしよう。
「キラ、次行くぞ!」
「はあっ!?」
立ち上がってキラと無理矢理手を繋ぐ。
「大丈夫!もしおかんに怒られるような事になったら、オレが守ってやるから!」
「いや、別にばばあは怖くないけど……って、手を放しなさいよ!!」
ブンブンと手を振って、何とか繋いだ手を放そうとするキラだが、覚悟したオレがそれを許すわけがない。
「アハハハハッ!キラはツンデレさんだな!」
「違うわよ!てか放せ!!今すぐ放せ!!」
そう言いながらげしげしとオレの足を踏むキラ。痛みで反射的に手を放すのを狙っているようだが、童貞とは時に物凄い力を発揮する生き物だ。故に絶対に放すつもりはない。
「大丈夫!子供が出来たらちゃんと責任取るから!」
「はあ!?あんたいったいどこに行くつもりなのよ!?」
「男なら龍太郎、女ならキララが良いな!」
「だからどこに行くつもりなのよ!?」
「男と女が行く場所と言えばあそこしかないじゃないか!」
現在地からすぐ近く、ラブホテル街がある辺りに視線を向ける。
「なっ!?」
全てを理解した風のキラは、顔を真っ青にした。
「ちょっと!なに考えてんのよあんた!!」
「まあまあ!」
何とか逃れようと、より一層オレの足を強く踏むキラ。だがそんなのオレには通用しない。だって童貞なのだから。
ラブホテル街に入る。数あるラブホテルをスルーする。そしてラブホテル街を出る。
「──って!どこにも入らないんかい!!」
キラに後ろから太腿を思いっきり蹴られる。しかしキラに一矢報いる事が出来た快感に浸っている今のオレにとって、彼女の攻撃力はよもや赤子同然。全く痛くない。
そこからまた数分歩いたところで立ち止まり、手を放す。
「やっと放したわね。で、あんた何をするつもり?──はっ!?まさか青姦!?」
恐ろしい子、と言うかの如く白目を剥いて顔を真っ青にするキラ。
――オーウ、年頃ノ女ノ子ノ思考ガ全ク読メマセーン。
「別にそういうつもりはない」
「…………まさかっ!?首輪に目隠しからの青姦!?」
再びキラは、恐ろしい子、をする。
――オーウ、ヤッパリ読メマセーン。
「取り敢えずエロイ方向からは離れような?」
「はあ……ならいったい何なのよ?何でこんな人通りの少ない所に来たの?」
今は夕方で、辺りが橙色に染まっている。これはあの時と同じだ。
「丁度ここら辺だったよな」
「…………なにが?」
ああ、因みにだが、オレが言った『あの時』とは、ずばり──
「お前が指輪を落としたところだよ」
キラが指輪をドブの溝に落として泣いていた時の事である。
「えっ……」
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