第二十三回 陳安は誑かされて南陽王司馬保を攻む
しかし、疑心暗鬼により
かつて、漢が長安を囲んだ際、
夏景たちは関中に入ったものの、漢兵の強盛を
「吾らは朝廷に投降して数年、何らの官職も与えられておらぬ。今また軍功もなく江東に帰れば、ただ官職を授けられぬのみならず、かえって罪される虞もあろう」
夏景たちはそう言うと、胡崧とともに上邽に逃れて南陽王に従い、夏景は
※
その頃、
李矩は書状を受けたものの、長安にある
使者は関中に還ったものの、折から漢主の
長安に到ると、劉雅は書状を呈して劉曜に言う。
「李矩が三度に渡って太子(
「晋人どもはこの長安を侵そうと企てている。そのために
劉曜がそう言うと、
「李矩は一郡守に過ぎず、ただ自らを守って国土を恢復する大望などございますまい。司馬保は数万の軍勢を率いておりますが、陳安はすでに去り、胡崧などの諸将は意に介するにも及びません。禍根を断たれるならば、司馬保より始められるのがよろしいでしょう。一計がございます。金銀を五百両ばかり揃え、能弁の者を
劉曜はその策を容れ、劉雅を陳安の許に遣わした。
「公は漢の大臣の身、何ゆえにこのような僻地に来臨されたのでしょう」
陳安が問うと、劉雅が答える。
「始安王は将軍を蓋世の英雄であると目されています。凡夫の司馬保はそれを知らず、賢愚を見分けられません。それゆえ、張春の讒言を信じて刺客を送り、将軍をして隴西に追いやったのです。しかし、将軍とて孤軍では功業を建てられますまい。これでは、美しい玉を塵の中に埋めるのに変わりません。それゆえ、その英雄を惜しんで
陳安は隴城に拠っては志を伸ばせず、劉雅の申し出は渡りに船であった。幣礼の品を受け取ると、拝謝して言う。
「小将は不才の身でありますが、殿下の知遇を得て重職を御許し頂けるとは、これに過ぎる幸いはございません。必ずや上邽を落として御覧に入れましょう。まずは吾が手並みを御覧下さい」
劉雅はその言葉を聞くと長安に還った。陳安は軍勢を発して上邽に向かう。
※
陳安が軍勢を率いて向かっていると聞き、司馬保は
「斥候の報せによると、陳安の軍勢がこちらに向かっているという。胡崧は病床に就いており、戦に出られぬ。
「戦であれば、吾ら兄弟が怖れるはずもございません。しかし、城中の兵は練兵が足らず、大敵に臨むには不安があります。また、かつては陳安に従っていた者たちでもあり、逃亡した経緯もよく知っておりましょう。陳安に同情する者も少なくありません。一戦に退けられれば問題ありませんが、万一にも不利になれば、
「それならば、どのように処するべきか」
夏文が進み出て言う。
「城を堅守するのが上策です。その一方、
司馬保はその言を
使者は州治の
「亡き南陽王が長安に鎮守されていた折には、涼州には下賜の品を多く賜り、厚遇して頂いたものです。恩はあっても怨みはございません。今、その子が秦州で難にあっているとあれば、救援するのが筋というものです。さらに、晋の宗室でもあります。坐してその敗亡を見るわけには参りません」
「その言は正しい。しかし、
「
張寔は宋配の言葉に従い、二将に二万の軍勢を与えて上邽に遣わしたことであった。
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