第七回 平陽城に種々の怪異は現る
漢の
漢の宿将や元老は辞職と死亡により一月を過ぎずして数十人が朝廷を去った。
この時、
国都の
劉聰はそれを知ると、かつて
陳元達の遺表があると知り、それを手に入れて読めば、哀しんで涙を流す。すぐさま皇太弟の劉義を召し出して言った。
「朕の不明のために賢弟に屈辱を味あわせてしまった。悔いても及びつかぬ。これは奸人に惑わされたのであり、朕の本意ではない」
劉義も痩せ衰えた面に涙を流し、
※
劉義が朝廷に戻ると、王沈は吾が身に罪が及ぶかと懼れて劉燦を唆す。
「主上はふたたび皇太弟を東宮に迎えられました。先の如くその言葉に従われるならば、殿下は帝位を継げますまい。さらに、皇太弟に害をなした吾らの命さえ危うくなりましょう」
「それならば、どうするべきか」
「詔を
劉燦はその言葉に従い、詔と偽って劉義に従う東宮の衛士に武装を命じる。劉義は疑ったものの詔であれば従うよりない。
劉燦からの報せを受けると、王沈は靳準とともに劉聰に言う。
「皇太弟は怨みを忘れず奸人の言葉に従い、不軌を図って衛士を武装させております。先手を打たねば変事が起こりましょう」
劉聰が人を遣って東宮を探らせれば、言葉のとおり衛士はいずれも武装して物々しい雰囲気に包まれている。
報告を受けると、東宮の衛士を捕らえるよう靳準に命じた。
劉燦と靳準は禁衛の軍勢を率いて東宮に向かい、事態の分からぬ衛士たちを捕縛する。五千人に上る衛士を残らず穴埋めにして殺し、劉義を北地の
劉聰は黙して勧めに応じず、王沈は劉燦に勧めて密かに人を遣わし、劉義を暗殺させた。
劉義の人となりは
その劉義が故なくして死んだと知り、人々は驚愕して言葉もない。
※
それより、東宮に血の雨が降って殿の階を真っ赤に染め、近寄れば
劉聰は報告を聞いて愕き、史官を召して理由を問う。史官が国家に不祥の事が起こったと言うところ、皇太弟がにわかに世を去ったとの報せが入る。
劉聰は
「吾が弟は
そう言うと涙を流し、劉義の屍を先帝(
※
劉義の
劉聰が
落ちたところを見れば、深さ三、四尺(約93~125cm)ばかり、広さは二丈(約6.2m)ほどの穴が開いている。その中には、豚に似て鋭い口ばしを持つ生き物があり、重さは五百斤(約300kg)もあった。翌日に見れば穴には子供の屍が伏しており、あたりには三昼夜に渡って哭声が聞こえた。
劉聰は打ち続く災異を不安に思い、臣下を召して故を問う。
「陛下が
靳準がそれに駁して言う。
「これは陰陽の気が整わぬがためのこと、人事が関わることなどあろうか」
程遐も応じて駁する。
「いかにも天地の気が関わることである。しかし、この平陽でたびたび起こるからには、国家に関わらぬはずもない」
議論が続くところに報せて言う。
「後宮にて
劉聰が後宮に向かうところ、宮官が前を阻んで言う。
「蛇は一斗升のように大きく、獣は豹のようです。近づいてはなりません」
衛士を召して矢を射かけさせたところ、傷つけることさえできない。
蛇と豹は一斉に城外に逃れ出て西北角の流れ星が
劉聰が後宮に入って劉皇后に見えれば、皇后は目を見開いて叫んだ。
「陛下が妾を誤ったのじゃ」
そう言い終わると事切れた。劉聰はその死を哀しみ、皇帝陵に屍を葬ったことであった。
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