続三国志演義III─通俗續後三國志後編─
河東竹緒
通俗續後三國志後編
第二十七章 斜陽
第一回 司馬保は帝号を建てんと欲す
晋の
死後、司馬業は
漢に降る直前、司馬業は
また、
▼史淑の官は原文では「黄門議郎」とするが、存在しない。黄門侍郎の誤りと見て改めた。
張寔に授けられた詔には、「公は
張寔とその叔父である
司馬業の所在を問えば、史淑が言う。
「聖上は長安を出て降られるお覚悟でした。今から救おうにも及びますまい」
張粛は張寔の目を見ると、一声嘆いて昏倒した。張寔が介抱し、ようやく目を開けると言う。
「天は吾が自ら長安に向かうを許さぬか。お前が自ら長安に向かえ。大将を遣わして大事を誤るなど許されぬ」
目を怒らせてそう叫ぶと、再び意識を失った。
その夜、張粛は「すみやかに軍勢を発せよ」と三度叫び、世を去った。
※
張粛の憤死を見た張寔は、
「今や晋室は危機に瀕しており、この大事にあたって身命を
書状を読んだ司馬保は己を恥ずかしく思い、
秦州を発した諸将が
胡崧が言う。
「長安はすでに陥った。聖上は城を出て漢賊に降り、平陽に連れ去られたと聞く。漢賊の軍勢は盛んで長安の
蓋濤たちはその言葉に従い、秦州に馬を返した。
※
この時、韓璞たちは
「漢賊の
韓璞が軍勢を進めようとすると、糧秣を
「すでに長安は陥って聖上も連れ去られたと言います。糧秣も乏しく、進んだところで益はありますまい」
「主命を奉じて国家の急を救うにあたり、敵に遭わずに軍勢を返すなどということが許されようか」
そう言うと、韓璞は軍勢に伴っていた荷運びの牛や弱った馬を殺して兵士に振舞い、涙ながらに叫んで問う。
「お前たちは父母を思い出すか」
「思い出します」
「妻子の命を惜しむか」
「惜しみます」
「生きて故郷に帰りたいか」
「生きて帰りたいです」
兵の言葉を聞いた韓璞が言う。
「それならば、吾が命を聞け。吾らは主命を奉じて長安を救いに来た。それにも関わらず、軍期に及ばず長安は陥り、一弓を張らず一矢を発することなく軍勢を返せば、
「王将軍は秦州の軍勢が進まなかったという理由で罪を許されましたが、吾らが軍勢を返せば言い訳ができません。どうするべきでしょうか」
「ただ命を賭けて覇上の漢賊を攻め破り、西平公の望みを叶えるよりない」
「ご命令に従うのみです。ただ、吾らは少なく、漢賊は多く、必ずしも勝てぬのではないかと懼れております」
「焦嵩や
涼州兵はそれを聞くと勇躍し、ただちに漢軍の陣に攻め向かった。
※
漢軍は攻め寄せる涼州兵を見て陣を
韓璞と
一戦に数千の死者を出した漢兵は、日暮れを待って軍勢を退く。
翌日も戦はつづき、数に勝る漢兵は岩のように動かず涼州兵の攻撃を支え、糧秣はいよいよ乏しくなる。
韓璞が心中に懊悩するところ、
糧秣が整った韓璞、王該、宋始、焦嵩は三面から漢陣に攻めかかる。晋軍は一万を超える漢兵を討ち取り、漢兵は支えきれず長安の城に逃げ込んだ。
「これで少しは主命を果たせた」
韓璞はそう言うと、華輯や宋始と長安の恢復に向けた軍議を開く。
その場で華輯が言う。
「臣たるものは晋室の再興に命を捨てて忠心を尽くすべきである。しかし、聖上はすでに漢賊の手に陥り、吾らは誰を主と仰げばよいのか。これでは成功は期しがたい。しばらく軍勢を退いて
韓璞も漢兵の多勢と糧秣の不安を思い、ついに軍勢を涼州に返すことと決めた。
※
秦州にある司馬保は胡崧の
「軽々しく事を挙げてはなりません。名号を立てて藩鎮に命じるべきです」
「大王が自立されようとしても、衆心は従いますまい。諸侯にあって名望で西平公に優る者はおりません。彼が従えば、大事は定まったようなものでございます」
胡崧もその論に同じ、
「南陽王の子は幼児に過ぎません。幼児を擁したところで大事がなるはずもありますまい。漢賊が二度に渡って長安を攻めたにも関わらず、藩鎮で兵を出して救いに向かった者は数えるに足りず、これ幸いと天下の趨勢を観望しております。これだけを観ても藩鎮の心は見え透いておりましょう。どうして天が幼児を
その進言を
「先に『
▼『秦川の中、血は腕を没し、ただ涼州のみありて柱観に倚る』は、原文では「血は腕に満ち」とするが、『資治通鑑』などの記事により改めた。柱観は立派な建物と解するのがよく、「秦州は戦で血に染まって涼州だけは平和が保たれて民は平穏に暮らす」と解される。
ついに諸郡は胡崧の意に従わず、司馬保を
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