第20話 これからも
寂田神社に、着いた。
「お帰り、実くん」
「美子さん」
「どうしたの?実くん、怖い顔して」
「美子さん、本当の事を話していただけますか?」
「本当のこと?」
「あなたが、この神社に来たのは、神様の派遣ではなく、自らの意思ですね」
「えっ」
「そして、この神社はあなたにとって、思い出のある場所、そして、この村も」
美子さんは、真剣は表情になった。
この人の、真剣な表情は、初めて見る気がする。
「そっか、ばれちゃったか・・・思ったよりも早かったな」
「美子さん」
「そう、君が調べた通り、私はこの村で生まれ育った、御子美子。
君がさっきあった、太郎の祖母」
「詳しく話していただけませんか?」
美子さんは、こっくりとうなずいた。
「私は、この神社が大好きだった。
私が小さい頃には、もう寂れていた。
でも、近所の子供たちと、よく遊んだわ。
他に娯楽なんて、なかったからね。
でも、毎日が楽しかった。
でも・・・」
「でも?」
「みんな戦争に取られちゃった」
「まだ10代ですよね・・・」
「他にいなかったから・・・」
美子さんは、寂しそうに言う。
「私も、結核で20歳で死んだわ。
でも、この神社を繁栄させたいというのは、本当。
だから、霊騒ぎを、起こしたの。
いい観光スポットになると思って・・・」
少しだけ、笑みを浮かべていた。
「本当はね。もうかなり前からここにいるんだ。
物好きな人たちは来てくれえた。
イケメンとか、スポットとか、この時代の言葉を知っているのはそのため・・・」
「そうなんですか・・・」
美子さんは、少し寂しそうだ。
「でも、誤解しないでね。私は実くんの事が好きだった。
仲良くしたかった。それだけは、信じてね」
にっこりと笑う。
「なら、下級巫女でここに来たというのは?」
「それも、本当。私は落ちこぼれの下級巫女だったもん。
でも、それは私にとってラッキーだった」
「どうしてですか・・・」
「実くんに、会えたから・・・でも・・・」
「でも?」
「こうなった以上、もうお別れね、一年間だけ生き返ったら、恩返ししたかったけど、
それも、無理・・・実くん、幸せにね。ありがとう」
そういうと。美子さんは天に登って行った。
俺はしばらく見送った。
「美子さん」
この出来事は、俺にとって忘れられない思い出となるだろう。
誰も信じてくれない。
大切にしまっておこう。
「うわーん、実くん」
美子さんが、下りてきた。
「あのね、あのね、神様に怒られた。
『わがままいうな!責任ははたせ』って・・」
いつもの、美子さんがそこにいた。
「実くん」
「はい」
「手伝ってくれる」
「もちろんです。それが俺の願いですから」
「願い?」
「この神社を繁栄させる、手助けがしたい」
「実くん?」
「叶えていただけますよね?」
「うん、ありがとう」
厄介な事に首を突っ込んだと思う。
でも、それを不幸は思わなかった。
「実くん、最後までよろしくね」
「美子さん、こちらこそ」
下級巫女 勝利だギューちゃん @tetsumusuhaarisu
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