第9話  塩

一応、じいちゃんの事を教えておこう。

俺は、美子さんに向かって念じてみた。


応答はない・・・無視か・・・


いっておくが、じいちゃんはプレイボーイではない。

どちらかというと紳士だ。


男女問わず優しくて、慕われている。

とても、若々しく、流行りのアイドルが大好きだ。

ファンクラブにも入り、グッズも買っている。


知らない人が部屋を見れば、思春期の男子と勘違いするだろう。


ただ・・・唯一の欠点がある。

その欠点が、美子さんには、心配だ・・・


「うわーん、実くん」

美子さんだ・・・やはり、逃げ帰って来たか・・・

「実くん、君のおじいさん、ひどいんだよ」

「やはり、戻ってきましたね」

「実くん、知ってたの?おじいさんのこと」

「そりゃ、俺のじいちゃんだから」

「どうして、教えてくれなかったの?」

「言う前に飛んでった」

「テレパシーで、送ってよ」

「無視された」

「もう」

美子さんは、泣いている。怒っている。

喜怒哀楽の激しい人だ・・・


じいちゃんの欠点・・・

いや、これはあくまで、美子さんにとっての欠点となるのだが・・・


うちのじいちゃんは、異常なまでに霊を嫌う。

そのために、お清めの塩を家のいたるところに置いている。


そう、美子さんは霊・・・

つまり、じいちゃんの家には入れない。


「でも、どの道霊なんだから、何も出来ないでしょ?」

「でも、住まわせてくれたっていいじゃない。そう思うでしょ?」

いえ、それは虫が良すぎるから・・・


「で、美子さんは、どうするの?」

「この辺りに、神社はない?」

「ない」

「わかった。帰るの面倒だから、当分ここにいるわ」

「当分って・・・」

「よろしくね。実くん」

さっきまで泣いていたカラスがもう笑った。


「わかった。好きにしてくれ」

「うん、好きにさせてもらうね」

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