第4話 巫女の理由

「ところで、美子さん」

「何?実くん」

「詳しくお話聞かせてほしいんですが・・・」

「何を?」

「経緯です」

美子さんは、思い出したように話し始めた。


「私はね、随分前の20歳の若さで他界したの」

「そんな若さで?」

「うん、でも私たちの時代は、当たり前だったから、それはいいの」

「うん」

結核なのか・・・だとしたら、美子さんの実年齢は・・・


「でも、人間って、何かしらの未練を残して死んで行くじゃない?」

「確かに、未練のない人はいませんね」

「そこで、神様だけが希望者だけを、集めて巫女を要請する学校を作ったの」

「うん」

なんつー神様だ。


「それに合格すれば、希望の歳をランクに応じてやり直させてくれるの」

「もう、合格したの?」

「ううん、この時代で言えば、仮免に合格した段階。今は本免許を取る段階」

免許の事は、習ったのだろう。


「で、ランクと言うのは?」

「知ってて訊いてない?」

俺は首を横に振る。


「まず、トップで合格した人で、無制限」

「なら。最下位は?」

分かっているが、一応訊いてみる。

「1年」

「で、美子さんの、やり直したい歳は?」

「それは、個人情報だから」

確かに言えないな・・・


「その年、例えば1930年が希望だったら、その時代に戻るの?」

「ううん、現代だよ。現代で希望する年齢で、1年間過ごせるの・

「未練をなくすように」

「100%は無理だとおもう。でもね、少しでも・・・」

えらく、真面目になったな。

女はいくつ顔があるんだ?


「ごめん、しめっぽくなったね。さあ、始めましょう」

さっきまでの、美子さんに戻った。


やはり、この人はこうでないと。


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