第3話 願いごと

「あのう、美子さん」

「苗字で呼んだ?名前で呼んだ?」

「名前ですけど・・・」

「まっ、いいわ。何?」

「さっき、俺・・・いや、僕の事10人目と参拝客と言いましたけど」

「うん」

「それは、あなたになっえからですか?」

「ううん、トータル」

「美子さんは、何人目?」

「300人目くらいかな・・・みんな、逃げ出した」

300年で10人、よく取り壊しにならなかったな・・・


「この神社、霊が出るって噂があるから、たたりをおそれているの・・・」

「あっ、そう」

お祓いはしないのか・・・


「ところで、美子さんは本当に人間なんですか?」

「失礼ね、人間よ。但し、頭に【元】がつくけどね」

「と、言う事は?」

「ビンゴ」

この人、別の意味で怖い。


「君のことは、駅から見てたわよ」

「じゃあ、あの声の主は?」

「そう、私。そんなことより願いを言って、願いを叶えることができたら、私おさらばできるから」

「この神社と?」

「うん、本当は5人の願いを叶えないといけないんだけど、神様が不憫に思ってひとつに減らしてくれたの」

あんたの実力不足だろうがとは、言えなかった。


「さあ、早く」

「どんなのでも、いいの?」

試してみるか・・・


「この神社を繁栄させてほしい」

「それは、神様に言って、次」

「願いを増やしてほしい」

「さっき、ルール違反って言ったでしょ、次」

「美子さんと、付き合いたい」

「巫女は恋愛禁止、次」

制約の多い巫女さんだ・・・


「この神社を繁栄させるための、手助けをさせてほしい」

「OK。その願い叶えてあげる」

「最初から、そのつもりでしたね」

「やっぱりわかった」

にこやかに笑う。


「でも、その願いだと、美子さんは?」

「うん、これでお別れ、じゃあね」

巫女の美子さんは、天へと昇って行った。


「素人の俺にどうしろと・・・」

まっ、いいや。


しばらくして、美子さんが、泣きながら下りてきた。

「どうしてんですか?」

「神様に、怒られた。『手を抜くな、お前も手伝え』って・・・」

「そうですか・・・」

「だから・・・一緒にがんばろうね。実くん。」

そういうと、手を握ってきた。


霊のはずなのに、触れられるのは、神様のお力だろうか・・・


まっ、がんばろう。


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