第2話 巫女

「おめでとう、ございます。あなたはこの神社、10人目の参拝者様です」

巫女さんは、笑顔で答える。

俺はしゃがみこむ。


「特典として、あなたの願いを一つだけ、叶えてあげます」

巫女さんは、さらに続ける。

俺は、声が出ない。


「さあ、何でも言って下さい。あっ、願いを増やせは、ルール違反だから、だめです。」

巫女さんは、さらに続ける、

俺は、頭が混乱する。


「あのう、聞いてます?」

巫女さんは、ようやく俺の様子に気がついたのか、顔を覗き込んできた。


「うーん、あんまりイケメンじゃないな・・・まっ、負けとくか」

なんなんだ?この巫女さん。


「あの・・・」

俺はようやく言葉が出た。

「何?」

「巫女さん、あなた何者?」

「私、私はこの神社の、巫女よ」

「巫女さん?」

「うん、見てわからない」

「そりゃ、格好見ればわかるけど・・・」

「だったら、早く願い事言って」

巫女さんは、せかす。


「で、何がどうなってるのか、よくわからないんだけど」

「だから、私はこの神社の、唯一の巫女で、あなたの願いをひとつ叶えてあげるの」

「その巫女さんが、どうしてこのような寂れた神社で働いてるんですか?」

それを言うと、この巫女さんは、いじけだした。


「そりゃね。もっと立派な由緒ある神社で働きたかったよ、私だってね・・・

でもね、巫女学校の成績が、ビリだったからしょうがないじゃない」

いじける。


「なんとか卒業は出来たけどね。ビリだったから、こんな神社に回されたの・・・」

泣きだした。


「あのう」

「何?」

巫女さんは、泣きながら答える。


「もしかして、この神社に出る霊は、巫女さん・・・?」

「村の人はそう言ってるけど、私は生きてるわ」

怒りだした。


「妖精ですか?」

「ありがとう。でも人間よ」

楽しそうだ。


「失礼ですが・・・いくつですか?」

女性に歳を訊くのは失礼だが、訊かないと話が進まない。

「私?20歳よ。あなたは?」

「俺は、17歳。来月で18歳ですが・・・」

「私より、年下ね。なら君でいいや、君、名前は?私は、御子美子(みこみこ)よ」

「仮名ですか?」

「本名よ、で、君は?」

「俺は、神矢実(かみやみのる)です」

「実くんか・・・よろしくね」

笑った。


喜怒哀楽の激しい人だ。


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