Letter 3

 こんにちは。調子はどうですか。

 こちらはあまり芳しくありません。先日、掃除ロボットのうちの一台が動かなくました。説明書を読めばわたしでも修理できるかと思いましたが、少し甘かったようです。読んでも意味がわかりませんでした。まずは専門用語を知らねばなりません。

 そういうわけで、最近は図書館にある機械の本を読み漁っています。材料について、設計について、制御について。少しずつ知識がついてきました。そうしてわかったのは、どんなに精巧な機械でもメンテナンスを欠かせば少しずつ劣化していき、不具合を生じるようになるということです。

 この基地も一つの巨大な機械です。誰もメンテナンスをしていないというこの状況は、やはり危ないような気がします。

 今回は掃除ロボットで、動かなくなっても差し障りはありませんでしたが、もしもこれが水道だったら。食料生産設備だったら。酸素の供給ラインだったら。どれに不具合が生じても、わたしは生きていられなくなるでしょう。

 実はすでに、空調が機能していない区画もあります。いつかは致命的な状況に陥るでしょう。数年後か、数ヶ月後か。ひょっとしたら数日後かもしれません。それまでにわたし一人で基地を管理できるほどの知識を身につけられればいいのですが、おそらく時間が足りませんね。


 わたしに会いたい、月を訪ねてみたいというお言葉、大変嬉しかったです。

 しかし、基地の終焉にあなたを巻き込むわけにはいきません。

 わたしの命が尽きるそのときまで、こうやってお手紙のやりとりをしていただけるなら、それだけでわたしは幸せです。

 お返事、お待ちしています。

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