第2問 偽札の正体は!?


「その場所には普段人間が食べる食べ物は無かったんじゃないか?」


「!? 達也いい質問だ! そうだよ。 男が騙されて食べたのは通常人間が食べる物じゃない」


 当たった。

 おそらく騙されてでも物を食べないといけない状態に男は陥っていたのだろう。

 男は貧しい土地にいたのか、それとも遭難でもしていたのだろうか?


「じゃあ達也。 その通常人間が食べないようなものって何だと思う?」


「うーん。 そうだな。 …………カエルとか、かな?」


 なかつが吹き出した。

 いや、俺ボケたつもり無いんだけど。


「珍しく鋭い質問してくるからびっくりしたけど、いつもの達也だ。 NO」


「あーそう……」


 そんな会話をしていると、鶴舞が突然突拍子もないことを言い出した。


「そうそう!カエルって食べれるらしいよ」


「え? マジで!? あんな緑色のべちゃべちゃで気持ち悪くて存在価値の無い奴を食う人いんの?」


「達也カエル嫌い過ぎぃー!? 年末のテレビでフグとカエルの食べ比べやってるの見たよぉー! カエル食べてフグと間違えた人もいたし!」


「フグと間違えた!? そいつの舌どうかしてんじゃねぇーの?」


「私もその番組を見たのだけれど、おそらく私達が普段見るようなカエルとは違って、食用に育てられたものだと─」


「あのー。 カエルの話で盛り上がっているところ悪いんだけど、ウミガメの話に戻りません?」


「そうね。ある男が何を騙されて食べていたのか考えないといけないわね。では質問なのだけれど─」


 ブーン。 ブーン。


 倉本が何か質問をしようとするとなかつのスマホが鳴り出した。

 まさかもう20分経ったのか?


「えっと……………答え分かった?」


「いや、分かんねぇーよ! 今の情報でどう解答するんだ!?」


「時間が足りないわ。 私はもう少し続けてみたいのだけれど、中津川くんどうする?」


「最初に20分って決めたし、に落ちない所もあるかも知れないけど解答解説にしようか」


「分かったわ」


 倉本が納得したので解説タイムだ。

 当然のように俺には反論する権利は無い。


「模範解答を言うね。 何の話かと思うかも知れないけど最後まで聞いてて」


 何の話とは? 解説を聞いても納得しずらい内容なのだろうか。


「男は船に乗っていた。ある日男の乗る船が遭難してしまい、数人の男と共に救難ボートで難を逃れたが漂流の憂き目に。食料に瀕した一行は、体力のない者から死んでいく。やがて生き残っているものは、生きるために死体の肉を食べ始めるが一人の男はコレを固辞。当然その男はみるみる衰弱していく。見かねた他のものが、「これはウミガメのスープだから」と偽り男にスープを飲ませ、救難まで生き延びさせた。しかしレストランで明らかに味の違うこの 「本物のウミガメのスープ」に直面しそのすべてを悟り、死に至りました」




 なるほど。 なかつが言いたかったことが分かった。


 そんな詳細に作り込まれた物語がこの問題にあったというのか? 到底正解にたどり着けるとは思えない。


「解答聞いた方が余計意味分かんねぇ。 なぜ男は自殺したんだ?」


「それは私も疑問だわ。 人間の肉を食べて大きなショックを受けるのは分かるのだけれど、それが自殺に繋がるとは─」


 倉本の疑問を遮りなかつが答える。


「そういうところをあまり突っ込まれても困るんだよね。 ウミガメのスープってそういうもんだと思ってよ」


 そうか。 なんとなくだがこのゲーム分かった。理屈があーだこーだと考え過ぎても駄目だなこれ。

 鶴舞が言っていたように想像力とかが重要なのかもしれない。


「流石に難しかったよね。 次はもう少し簡単に答えられる問題にするから」


 そう言うと鶴舞がすっと手を上げた。


「はいはーい! 1つ提案でーす!」


「何? 提案?」


「ただ考えてても面白くないから3人で勝負しようよぉー!」


「別にこのままでもいいと思うけど」


「簡単だよ。 3人の内、早く答えが分かった人が勝ち!って勝負。 質問は同じように公開でしていって、答えが分かったときはなかつ君にLIMEで伝えよ!」


 全然俺の話聞いてねぇ……


「おっ! それは面白そうだね瑠美ちゃん。 じゃあ勝負形式でいこう」


「俺は勝負とかせず─」


「分かったわ鶴舞さん。勝負にしましょう」


 倉本は俺が喋っているのを遮り、どこか嬉しそうに笑みを浮かべる。


 そうだった。 彼女は普段クールで素っ気ない態度でいるが、勝負事となると人一倍燃える性格なのだ。


 これは鶴舞の提案に乗るしかないな。


「じゃあ第2問。Aさんはある物を買いにコンビニに立ち寄りました。精算時にお金を出すと、定員に偽物だと疑われてしまいました。なぜ偽物だと疑われたのでしょう?」


「はいはーい!」


 なかつが問題をいい終えると、すぐさま鶴舞は手を上げる。


 よくそんなすぐに質問思い付きますね。


「そのお金は偽物だったんですかぁー?」


「NO。 偽物じゃなかったよ」


「じゃあ定員は勘違いしたの?」


「YES。 そういうことになるね」


 すると鶴舞は手に持っていたスマホを素早くスライドし、何かを打ち込み出した。

 解答が間違っていたからといってお手つきがあるわけでも無いので俺もダメ元で答えて見よう。


「うーん……。 みんなに質問! 他の人の解答ってこの場で公開する?」


「公開ということになれば他の解答者のヒントにもなるわ。 私は非公開がいい」


「私はどっちでもいいよぉー!」


 自分のスマホを見て俺は答える。


「え!? もし公開するなら─」


 と言いかけた所で勘のいいなかつは何かに気づき視線を落とす。そしてすぐに顔を上げ俺の方を見た。


「じゃあヒントにもならないような解答だけ公開ということにしよう。ということで達也のは公開!」


「おいやめろっ!! その答えは公開しなくていいから」


「なになに!? 達也の答え面白いのー?」


 なかつは笑いながら解答を読み上げた。


「タヌキが化かしていたお金、だってよ」


 読み上げた後もクスクスと笑う。鶴舞は声を出して大笑い。

 向かいの倉本はというと、口元に手を当て下を向き震えている。


 皆さん、そんなに面白いですか?


「達也最高だよぉー!! 私そういうのめっちゃ大好き!」


「やっぱ達也は面白いな! この問題でそんなファンタジーな答えが来るとは思ってない!」


「だから公開しなくていいって行ったのに! もういいだろ」


 これから不用意になんでも答えるのは控えておこう。


「えっと、私から……しつも─ウフフっ!」


 再び下を向き笑いを堪えきれなかったのは倉本だ。

 どんだけ面白かったんだよ。


 可愛い顔しやがって!


「倉もっちゃん。 そろそろ達也拗ねるよ」


「そ、そうね。 悪かったわ金山くん」


 謝ってはいるがこちらを見ようとしない。

 笑われるのは恥ずかしかったが、倉本にここまでウケると何故かちょっと嬉しい。


「えっと、質問をするわね。 Aさんが出したのはお札だったのかしら?」


「YES。 なかなかいい質問だと思うよ」


「ふーん。 俺には全然分からないね」


「タヌキが出てくる達也には難しいだろう」


 タヌキで悪かったな。

 これは当分いじられるやつだ。


「コンビニって所は重要?」


「NO。 そこはコンビニじゃなくてもOK」


「じゃーあー。 私達でも定員さんのように勘違いする可能性ありますか?」


「多分3人なら勘違いしないよ。 もしかしたら知らないかもしれないけど」


ってことは、知識が関係してくるのかしら?」


 おそらくなかつは口を滑らせたのだろう。

 倉本がそこを見逃さずにつつく。


「あっ。 ちょっとヒントになっちゃったかも。 YESです」


「知識…………もしかして」


 倉本はそう小さく呟き素早く答えを送る。

 それを確認したなかつは顔を上げ答えた。


「倉もっちゃん正解だね」


 頬を緩め微笑む倉本。

 どこがヒントになったんだ? 俺には全く分からない。


「定員さん知識が無くて偽札だと勘違いしたんだよね?」


 確認するように鶴舞が質問をする。

 鶴舞も分かったのか!?


「そうだよ」


「じゃあこれだっ!!」


 それを見たなかつはすぐに答える。


「瑠美ちゃんも正解!」


「いやったぁーー!! 達也の負けぇー!」


「ちっ! お前ら答えるの早すぎだろ」


「2人正解したし解答といこうか。達也いい?」


「あーいいよ。 ……」


「Aさんが出した紙幣は2千円札でした。コンビニ定員は高校生アルバイトであり、2千円札の存在を知らなかったため、見た瞬間偽札だと疑ったのです」


 2千円札?

 高校生のアルバイト君は自分の知らないお札だったから偽札だと疑ったってオチか。


「2千円札知らない高校生とかいんのか?」


「これが案外いるらしいよ」


「へぇー。 私でも知ってるのにね」


 無知って怖いな。自分の知っていることだけがすべてではないと、どっかの偉人が言っていたような気がする。

 

 心に留めておこう。


「じゃあこれで凛が2点で私は1点だね」


 この勝負、どうやら得点制のようだ。


 それなら最下位になるのだけは避けたい。

 鶴舞のことだ、最下位になった人が明日購買のパンを奢ることになるだろう。


「次の問題が最後かな」


 なかつは棚の上にある置き時計を指差す。


 18時40分。


 最終下校時間まであと20分。

 確かに次の問題で最後だ。


 最下位にならないためには、少なくとも鶴舞よりは早く正解にたどり着く必要がある。


 ここは頑張って考えよう。




「では最後の問題。ある日、ある家族は旅行先に向かうためバスに乗っていました。 その途中娘がお腹が痛いと言い、途中で止まりバスから降りることになりました。 その後、家族が乗っていたバスが交通事故に遭ったというニュースを目にします。そこで母は「あのバスに乗っていれば良かったのに」と言いました。 なぜそのようなことを言ったのでしょう?」

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