24話目 幼なじみと無意識

ガタゴトと揺れる電車の中は最初は数人しか乗っていなかったものの、外が暗くなるにつれ徐々にその人数を増してきた。


「もう1つあとのに乗ってもよかったかもね。」


「でも遅くなっちゃうし...それも、あるしね。」


電車の出入口にもたれ掛かる俺の腕の中にあるそれに真田は視線を向ける。


周りの視線もこちらに向いているように思える。


あぁ、早く帰りたい。


「あぁ...悪いな。まさかこんなだとは...」


項垂れる俺に真田はくすくすと笑いをこぼす。


「でも、ぐるちゃん喜ぶよ。絶対。」


「.......そ...かな、...そうだといいけど。」


腕の中のそれと目が合う。

心做しかそれも笑っているようだった。


「くすくす...平井くんでも、そんな心配するんだね。」


真田の言葉に俺は「当たり前だろ」と小さく笑うと窓の外へと視線をうつす。


先程まで目まぐるしいほどに変わっていた景色だったが駅が近いのか徐々にそのスピードを落としていく。


あいつ、喜ぶかな...

ていうかその前に、朝のこと謝らないとー


電車が止まる瞬間。

慣性力で大きく揺れた俺は視線の先の光景に言葉を失った。


次の瞬間


思うより先に行動していた。


「え、平井くん?!」という真田の静止を待たずプシューと音を立てて開く反対側の扉から抜け、向かい側のプラットフォームへと一直線に駆けて行く。


早く、早くー


この時の俺はそれしか考えれていなかった。

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