21話目 幼なじみと無意識

「2名様ご搭乗でーす」


そう案内をしていたお兄さんの言葉でわたしたちはゴンドラに乗り込む。


「水族館にも観覧車ってあるんだね。遊園地にしかないと思ってた。」


「え、あ、あぁ。そうだな。」


何かソワソワするりょうにわたしは「高所恐怖症だっけ?」と声をかける。


「それはめぐー...あ、いや、なんでもない...」


何かを言いかけて辞めるりょう。

なんだか微妙な間が出来てしまい耐えきれず口を開く。


「あ、」

「えっと」


完全にタイミングが悪かった。

ハモった声にまたしても沈黙が訪れる。


やっちゃったー...ほんとタイミング悪いな、わたし...


「えーっと、...今日、楽しかったな。」


「え、あ、うん...でもごめんね。わたしとだとりょうあんまり楽しめなかったよね...せっかくの日曜日に、わたしのせいで開いた打ち上げだったのに...2人で回ることになっちゃったし、ごめんね...」


「え?んなことないよ。俺はめぐると一緒で楽しかったし。あー...でもこーすけは残念がる...っていうか悔しがってるかもな」


そう言って笑うりょうにわたしは首を傾げる。


「なんで平井が?そんなに水族館来たかったの?」


瞬間、りょうが吹き出す。


「いや、そうじゃなくて、ははっ、今日だって打ち上げしようって言い出したのこーすけだったし、...相当楽しみにしてたみたいだよ?昨日だって今日の服無いって電話してきてそのまま買い物にも行ったんだし」


「...え...?」


りょうの言葉にわたしは顔をしかめる。


「打ち上げって、りょうが言い出したんじゃないの...?」


「え?言い出しっぺはこーすけだよ?めぐる人見知り激しくて今まで1回もそうゆうの行ったことないから4人で行こうって。」


かなり傾いた太陽がゴンドラの中を照らす。

時刻は午後4時を過ぎた頃だった。


わたしは小さく「行かなきゃ、」と呟いた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る