17話目 幼なじみと休日デート?!

「水族館入館口はこちらになりまーす」


ペンギンや魚のイラストが描かれた青色の門から女の人の声でアナウンスが流れる。


ふいに肩を叩かれ振り向くとピラピラと可愛い魚の絵が描かれた紙切れを2枚持ったりょうが立っていた。


「ほいっ、入館券。」


「え、え?あ、ありがと...いくらだった?」


そういうわたしに彼は短く「いいよ。」と答えると入館口の方へと歩いていってしまう。


「え、でも...悪いよ。」


財布に手をかけるわたしにりょうは少し考えるような素振りを見せると足を止め


「じゃあ、快気祝いってことで。」


と口にすると再び入館口へと足を進めた。


こういう人がモテるんだろうな...


わたしはそう納得するようにりょうの背中を追いかけるのだった。


✱✱✱✱✱


「りょう!見てみて!たこくらげ!!!」


「おー...タコなのかくらげなのかわかんないけど...よかったなー」


はしゃぐわたしとは裏腹にりょうのテンションは低めだった。


「.......ごめん、やっぱりわたしとだと退屈だよね...。」


「え、そんなことないけど?」


りょうの言葉に「そう?」と返しながらくらげの水槽へと近づく。

ゆらゆらと揺れるそれは色とりどりのライトに照らされまるで夜の風景のように光り輝いていた。


「へー...くらげってちゃんと見ると綺麗なのな。なんだっけ、これ?タコくらげ?」


「ふふ。タコくらげはあっち。これはミズクラゲ。」


「お、おう?詳しいのな。めぐる。」


頭をかきながら少し困ったような顔でりょうが言った。わたしはそれに「そうでもないよ」と返すと水槽へと視線を戻し


「あいつが...」


口からこぼれ落ちそうになった言葉を慌てて飲み込む。

りょうは少し頬を緩めると


「なあ、やっぱりこーすけ達と合流しない?」


と笑顔を向けた。


「.......やだ。水族館がいい。」


ポシェットの紐を握りしめ唇を噛み締める。

意地になったように踵を返し奥へと進むわたしに彼は


「頑固だなぁ...お互いに...」


と小さく呟くのだった。

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