10話目 幼なじみと気になるあいつ

「あいつ...山口って、お前のなんなの?」


「...へ?」


質問の意図が分からず間抜けな声を上げてしまったわたしに彼は「あ、いや...」と言葉を続けた。


「なんか、妙に親しげだし、どんな関係なのかなって、思って...」


そういう彼の視界はまるで行き場を無くしたようにキョロキョロと辺りを見回していた。


「どんなって...」


言葉に詰まりなかなか答えの出ないわたしに彼はようやく視線を合わせゆっくりと促すようにこちらを見つめた。


なんだか、今だけは本当のことを隠しちゃいけない。何故かわたしはそう思った。



「.....兄妹、なの。」



「.......は?」


彼の眉間にシワがよる。

それもそうだ。

わたしは一人っ子で彼もそれをよく知っているのだから。


「あ、兄妹って言っても、義理で...ほら、うちお父さんが再婚したじゃん?その、相手の人の連れ子で...中学入学したすぐあとくらいからかな?一緒に住み始めたの。平井には話してなかったっけ...?」




わたしの言葉に彼は一瞬間を置くと


「はぁ〜...」


と深い溜息をつき、前に倒れるように頭を抱えた。


「え、え?!どした?あ、他にも怪我したとこあった?気分悪い?」


慌てるわたしに彼はふっと目を細めると姿勢を戻し、わたしの頬にそっと手を触れた。


「.......」


数秒か数分か。


愛の鐘が流れお互いが我に帰るまでわたし達は時が止まったかのように見つめあっていた。


「あ...悪い...」


彼の手が名残おさそうにわたしから離れていく。


微妙な空気。


なんだか急に恥ずかしくなりわたしはその場から逃げ出したくなった。


「じゃ、じゃあ...もう遅いし、また月曜ー」


「あ...」


手を振り、教室へ行こうと慌てて振り返ったわたしの腕を彼が掴む。


「...え?」


「...あ、いや...もう遅いし、送るよ。」


パッと手を離すとどこかぎこちない笑顔で彼はそう言った。


「え...でも、悪いよ...平井の家逆方向だし...」


「そんなの、気にすんなよ。病み上がりなんだし、もう外も暗いし。お互い様だろ。」


平井の言葉にチラリと外へ目をやる。

さっきまではまだ明るかったのに

いつの間にか日は完全に沈んでしまい、辺りは真っ暗になっていた。


「.......じゃあ...途中まで...」


わたしの言葉に彼は何故か嬉しそうに「おう!」と答えると「カバン持ってくる」と保健室をあとにした。


わたしはそんな彼を待つためもう一度椅子に腰掛けるとふとさっきまで彼の手当をしていた右手に視線が移る。


「.....今日はちゃんと...喧嘩せずに話せたな...」

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