9話目 幼なじみと気になるあいつ
ふと視線をあげると彼の左手人差し指の爪が赤紫に変色していることに気がついた。
「ちょ...平井それ!突き指してんじゃん!!わたしの心配より自分の心配してよ!」
「えっ、」
わたしはそう声を上げるとまだわたしの髪をほぐしていた彼の右手首を掴み、近くの薬品などが置かれた棚近くの椅子へと移動した。
「手、出して。やってあげるから。」
「は、いや、このくらい平気だし、」
「.....ほら、いいから出す!」
わたしは半ば無理やり彼の左手首を掴むと棚から取り出したテーピングを慣れた手つきで巻き始めた。
「ごめん...ありがと。」
「なんで平井が謝ってんの。なんか、わたしこそ、迷惑かけてごめんね。」
「別に、迷惑なんかじゃ...!」
久しぶりに交わす言葉はお互いすごくぎこちなかった。詰まる言葉に彼は話題を変えるように口を開いた。
「て、テーピング...上手いんだな...運動部じゃなかったのに。」
そういう彼にほぼ終わったテーピングをしまいながらわたしは「あー...」と頭をかいた。
「まあ...隆都によくやってたからね...自然と慣れたというか...ははは」
苦笑するわたしに彼の眉がぴくりと動く。
「よし、終わり。応急処置だけだからちゃんと病院いってね。」
これどこだったかな...と使った物たちを片付けていると背後でガタッと椅子の倒れる音がした。
見ると平井が座っていた椅子を倒し真っ直ぐにこちらを見ていた。
「え、どした?」
「.......え、あ、いや.....悪い...」
何かを言いかけたような彼だったがハッと我に変えると倒れたパイプ椅子を元に戻し先程と同じように腰掛けた。
「.....やっぱ、よくない...」
彼は何か小さくつぶやくと再びわたしの方を見据え口を開いた。
「あいつ...山口って、お前のなんなの?」
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