8話目 幼なじみと気になるあいつ
白い天井、白いカーテン。
目が覚めるとそこはどうやら保健室のようだった。
どれくらい眠っていたのだろう、
記憶の中では、まだ真上から少しだけ傾いていた太陽が、今ではビルの群れの中に隠れようとしていた。
眠っていたと言うより、気絶してたのだろうけど...とりあえずサボれてラッキー
なんて思いつつ身体を持ち上げると
鼻がじんわりと傷んだ。
それになんだか顔全体がひりひりと痛い。
そういえばボール思いっきり当たったんだった...血とか出てないよね、
鏡は確か入口横にあったよね?と立ち上がると
「あ...起きた...?」
「?!」
すぐ隣から聞き覚えのある声がした。
保健室の2つならんだベッドの間にぽつんと置かれたパイプ椅子。
そこにはバスケをしていた時のまま体操着にゼッケン姿の彼がこちらをのぞき込むように座っていた。
「え、ひ、平井...?なんでここに...?」
動揺するわたしに彼は「なんでって...」と鼻の頭をかき一瞬考えるような顔をして
「球技大会で保健の先生駆り出されてるから...ぶっ倒れたやつ1人にできねーし...。クラスメイトだし...同じチームなんだから、誰か着いててやんねーとじゃん。」
「あ、あぁ...」
その場の微妙な空気にどうしていいか分からず一旦元いたベッドへと腰掛ける。
「.......それに...」
「...それに?」
何かを言いかけ辞めた彼を今度はわたしがのぞき込むような形で問いかける。
夕暮れの保健室
暗がりにいる彼の顔はよく見えなかったけど夕日に照らされ耳や首が赤く染まっていた。
言いたくないこと聞いちゃったかな...
「あ、別に、言いたくなければいいんだけどー」
言いかけたわたしに彼はそっぽを向くと小さく
「幼なじみなんだから、心配くらいするよ...」
とつぶやいた。
窓からぶわっと風が吹き込む。
少し湿った風のにおい。
セミロングの髪が巻き上げられボサボサになる。
わたしは慌てて手ぐしで直しつつ「ご、ごめん、よく聞こえなくて...なんて言った?」と再び彼に問いかけた。
彼はしばらく無言でわたしを見つめるとその問いに答えることなく、すっと立ち上がり、代わりにわたしの髪に指を通した。
触れられた瞬間、お互いにびくっと肩が震えたのが分かった。
まだそよそよと暖かい風の吹く中、彼の長く血色のいい指がわたしの髪をほぐす。
「あ、...ありがとう...」
早まる心臓の鼓動。
近すぎる距離にきょろきょろと視線が泳ぐ。
なんで、触られたくらいでこんなに緊張してるんだよ...
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