第3話

「.....バスケ出るの?」


そこには、何故か不機嫌顔の彼、平井が立っていた。


「え...なに...?」


突然話しかけられたことに動揺し、言葉に詰まる。隣ではゆうが「キャー」と抑え目な黄色い悲鳴を上げている。


教室にいた他の生徒がザワつく。


「あれって...」

「あの子確か山口くんにも...」


ああ、嫌だ。面倒くさい。

何でわざわざ皆いる前で話しかけてくるんだよ。帰りたい...


わたしが目を逸らしかけたその時、再び彼が口を開いた。


「...球技大会、バスケ出るの?」


そういってプリントを指さす彼にわたしは目をそらす。


「べ...別に...ひ、平井には、関係ないじゃん。」


わたしは恥ずかしさといたたまれなさでその場を早く去りたくて、プリントを強引にカバンに突っ込みつつ立ち上がった。


...しかし、教室の扉に向かおうとしたわたしを止めたのもまた彼だった。平井はわたしの手首を掴むと真っ直ぐにこちらを見つめてきた。


「...なやつ...」


彼が何かつぶやく。


「え...なに?.....手、離しー」


「ドッヂボールにしろよ。お前この前の授業でバスケットボール頭で弾いてたじゃん。向いてねーよ。」


わたしの言葉を遮り彼は怒鳴るようにそう言った。


「.....は、はあ?なんで平井にそんなこと言われなきゃ、なんないの...」


何もそこまで言うことは。


わたしもムキになって思わず言い返す。


「ドッヂボールなら!俺が、お前に来たボール全部取るから。ドッヂボールにしろよ。」




「えー...あれってどういうこと?」

「なんかそれが...」




わたしはハッと我に返る。

周りを見渡してみれば教室の騒ぎを聞きつけ、廊下に残っていた生徒までこちらを見物するかのようにあちこちから視線がわたし達2人に集中していた。



い、いやだ...見ないでよ...



「い、には...」


「え?」


スクールバッグを握りしめる手がわなわなと震える。


「平井には、関係ないじゃん!!わたしのことはほっといてよ!!」


わたしは怒鳴るようにそう言い捨てると掴まれていた腕を払い、逃げるように教室をあとにした。



「なにあれ、感じ悪」

そんな声が後ろから聞こえてくる。


うるさい。黙れ、黙れ。

何も、聞きたくない。

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