第2話
長めの黒髪がさらさらと光を反射する。
茶色がかった切れ長の瞳。
誰が見ても唸るような顔立ちの
彼は幼なじみの平井康輔(ヒライ コウスケ)。
成績はいつも学年トップでサッカー部のエース。その上顔も良く誰にでも優しい為、男女共に人気がある。
人見知りでコミュ障を拗らせ帰宅部エースの自宅警備員なわたしとは正反対の存在...。
その上頭も悪く、顔も下の下の下なのだから救いようもない。
保育園から高校までクラスもずっと一緒なのに、どうしてここまで違うのだろう。
所詮幼なじみと言っても名ばかりか...と、少し悲しくなる。
よくある漫画や小説のように家が隣同士なわけでも無ければむしろ逆方向。
中学に上がった頃からはろくに口すら聞かなくなり、いつしかわたしは彼を避けるようになっていた。
久しぶりに...目が合ったな...
わたしは小さく一息つくと、帰り支度を始める。
そういえば...
先程配られたプリントに目が止まる。
そこには何が楽しいのか、カラフルな文字で「みんなで絆を深めて楽しもう!クラス対抗球技大会」
の文字が書かれていた。
ああ...憂鬱だ。
なにが楽しもうだ、球技大会なんかで簡単に絆が出来たら世の中苦労しないよ。
運動が苦手なわたしからしてみたらただの苦痛でしかないよ...はあ...
「ん...るちゃん、ぐるちゃん!!」
するとすぐ近くで聞き慣れた甲高い声が響く。
ふと顔を上げると中学時代からの唯一の親友真田侑李(サナダ ユウリ)がわたしの見ていたプリントと同じものをこちらに見せながら立っていた。
「え、あ、なに?ゆう。」
「もー、さっきからずっと呼んでたんだよ。」
ふくれっ面になるゆうに「ごめんごめん」と平謝りすると彼女は「もー」と言いながら私と対面するように前の席へと腰掛けた。
「ぐるちゃんは球技大会、どれに出るか決めた?」
「あー...まだ。ゆうは?」
わたしの問いに彼女も「まだ。」と首を振る。
ゆうは「むー...」と口を尖らせながらシャープペンシルを口元へ持っていく。
「本当、男女混合チームなんてふざけてるよね...ドッヂボール...は男子の球当たると痛そうだしなー...」
「サッカーは?走ってるだけでもそれなりにやってるように見えそうじゃん?」
彼女はまた「うーん...」と口を尖らせると「でも走って汗かくの嫌だしなぁ」とシャープペンシルの先でプリントをつんつんとつつく。
「じゃあバスケにする?室内だし。」
「あ!!!バスケと言えば!B組の山口くんも出るらしいよ!ぐるちゃん、あの人と知り合いなんだよね?」
ゆうの言葉に今度はわたしが「げっ」と顔をしかめる。
「うわー...隆都(リュウト)も出るのかー...じゃあ、わたしドッヂボールにしとこうかな...」
「えー!!なんで!山口くんかっこいいのに!ファンの間でも噂になってるよ。山口くん、ぐるちゃんと居る時だけは笑うよねって。」
そういう彼女にわたしは「それが嫌なんだよ...あんな目立つ顔してんだから...」と頭をかきつつ、再びプリントに視線を落とす。
確かに屋外で走り回るのは自宅警備員にはキツいし...ドッヂボールで早めにあたって外野に行くか...なんて考えていたらすぐ隣に人の気配を感じ顔を上げた。
「.......バスケ出るの?」
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