▲6四右将《うしょう》
六体の動物(一部例外有)を模したロボットは、意思を持つかのように僕らの跳躍に合わせ足元に飛び込んでくると、スムースにその背中の上へと誘った。ぴったりと息が合った感覚。そして僕の乗る「赤き獅子」は、時折、ごう、とうねるように吠えると、力強く盤面を蹴って、敵の真っただなか目指して、走り始める。
「おおおおおっ!! ダイショウギチェンジっ!!」
その雄々しき背中で、僕は再びの変身を行う。テンションは上がりきって全開だ。今の僕なら敵が何体来ようとも瞬時に屠れる、そんな万能感の中に僕はいる。そしてそんな僕を後押しするかのように、「更なる変身」がもたらされるのであった。
「……!!」
通常の赤いスーツに黒いプロテクター。しかし今回は輝く銀色のパーツが中空から現れ、その上を覆っていく。肩当て、ヘッドギア、リスト、膝当て。それらが次々と装着されていくにつれ、力が漲ってくるのを感じている。
今までの対局では敵陣に入っても「成る」ことは出来なかったのに。これも、
「……
頭の中に自然に浮かんで来た、その呼称を口に出してみる。そして、
「……『レッド獅鷹』ッ!! 見……参!!」
溜めを利かせて名乗りを上げた。その勢いのまま、敵駒が群れている正にその渦中へと「赤き獅子」と共に踏み込んでいく。
「喰らうぜぁっ!! 盤面些末のっ!! 全! 方! 位!」
自分でもどうにかなってしまったんじゃなかろうか的マックスハイテンションで、「獅子」に騎乗した僕は、銀色のパーツに包まれた両腕を滅茶苦茶に振り回す。無軌道な動きではあるものの、それゆえ読めない「攻撃」が、敵駒へとミリ秒単位で突き刺さっていき、有無を言わさず爆散させていく。
手のひと払いで、十体がとこ、薙ぎ払われる。自分の手の指一本いっぽんが、まるで獅子の牙と化したかのように。
僕の妄想じみた想像が、細かなディティールを伴って具体化した時、それが現実にも昇華されている。名前はややお間抜けなものの、凄まじい力だ、「オマジュネイション」。
他のみんなも、でたらめな突進力だったり、連射力だったり、獰猛力(?)だったりを存分に発揮して、周囲の駒たちを一体残らず仕留めていっている。それでも増殖は続いているのだろう、確実に場にいる数は減らしていってはいるものの、敵駒は次々と襲い掛かって来る。
だが、今までみっちりと群れていて見通せなかったが、「裂け目」……駒が湧いてくる根源が見て取れた。今なら。
「ぶっっっっ込むぞぉぉああああああああっ!!」
自分でも驚きの腹からの声に応えてくれるかのように、足元の「獅子」もひときわ大きな咆哮を上げると、その時空の「裂け目」目掛けて一直線に猛進を開始する。
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