△6三雜将《すいしょう》

 水を盛大に差された感……この博士がやんわりとハブられる理由もそこはかとなく推し量れようものであり。


 ただ、「うまい手」をひとまず聞いてみて損は無いと思ったので、相変わらずどんな機構か全く不明の黒い将棋駒、「ダイショウギ×チェンジャー」から漏れ出て来る声に耳を傾ける。もちろん、その間も敵の進撃は留まることは無いので、出来れば手短にお済ませ願いたいのだけれど。


 <元来、この『ダイショウギ×チェンジャー』は、戦隊ヒーローに変身するためだけのものでは無かった……>


 しかし長くなりそうな語りへの入りだ。空気とか、読めないんだね。しょうがなく僕は生身のままで、敵の前線を体を張って受け止めるのを強いられるわけだけど。改めて素で触れると硬いな!


「博士、結論」


 流石にイラついた感じの沖島オキシマの普段は出さない凍るような声にびびったか、通信機の向こうの博士は慌ててすっぱりまとめて言った。


 <……想像すれば何でも出来る。オマージュ×イマジネイション、名付けて『オマジュネイション』!!>


 言ってることの二割も理解は出来なかったが、相変わらずネーミングセンスは皆無なことだけははっきりした。


 だが、それだけで何となく察してしまえた僕も僕だろう。


「……ミロカさん」


 二丁拳銃を再び敵陣に雨あられと撃ち込んでいるミロカさんのしなやかな背中にそう声を投げかける。そして、


「フウカさん、ナヤさん、沖島、先輩……!!」


 次々と仲間……そう、みんな仲間だ。の名前を呼ぶ。何となく、そうすれば意識はひとつになれる気がした。


「……」


 僕の声に呼応してくれるかのように、こちらを向いて全員が頷いてくれる。意思疎通が……図れた。


 巨大な敵に立ち向かうには? 巨大化した怪物を倒すために、戦隊ヒーローは何をする?


 答えは自明。……呼ぶんだろ? 


「カモンっ、鳳凰ッ!!」

反車へんしゃっ、GOぉぉぉぉぅっ!!」

「来たれ我にッ!! 猛豹ぉぉぁぁあっ!!」

「盲虎、ショウタイムっ!!」

「来い、金飛車(棒」


 召喚方法はまちまちだったが、オマージュなのかパクりなのか判別不能だったが、とにかく呼ぶことが重要であるわけであり。僕は小声で、「獅子見参」と言うにとどめておいた。


 瞬間、星々の流れる暗黒空間の彼方から、疾駆してくる六つの影。


 紅の鳳凰、碧の鯨、黄の豹、桃色の虎、そして赤き獅子。……もうひとつ金色の五角形そのものの物体も飛来してきたけど、僕らの許に近づくにつれて、そのカリカチュアライズされた造形ながらも、均整のとれたフォルムが露わになってくる。


 僕らが搭乗する「ロボ」。……「メカ」と称してもいいかも知れない。その雄々しき姿を目にし、僕は自分の疲弊していた体に、得も言われぬ力が漲ってくるのを感じている。

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