「この都には、空がないのよ」
始まりの、この言葉が、どうして、こんなに哀しげなのか、わたしには疑問だった。
舞台は、亡き魔女の呪いによって空の色が失われたとある王都近郊の村……。
その呪いを浄化させるために、国が動こうとする矢先、主人公は単身で乗り込んでいく。
そこに渦巻いていたのは、裏切られたことへの憎しみ。見捨てられたことへの悲しみ。
主人公は、それを、どう受け止め、どう昇華させていくのだろう。
最後に疑問が解消された時、主人公の憂いが消えたとは思えなかった。でも哀しいだけの物語ではない。
それが素敵だと思う。
しばらくは、読後の余韻に浸りたい物語……である。