第2話
「で、どうやって雪合戦すんの?」
結局雪合戦をすることになった僕たちは、着替えて庭に出ていた。吐いた息が白く染まる。今すぐにも布団の中に戻りたいくらいだ。
とは言え、南に位置するこの地域では滅多に雪は降らない。生まれて一度も見たことない人さえ居るんじゃないだろうかっていうくらいだ。
「ふっふっふ」
君はそれは楽しそうな笑みを浮かべる。そのまま後ろ手に隠し持っていた何かをこちらに向けた。
「さて、これはなんでしょう?」
風船よりも重い、ぷよぷよした感触。水風船、だった。ということは、まさか。自分の思いついた考えが嘘であって欲しいと願いつつ、君を見た。
「そう、雪合戦ならぬ、水風船合戦だよ!」
このくそ寒い季節に、割れたら濡れる水風船? 想像するだけで余計寒くなる企画にうんざりするけど、突拍子もないことを言い出すのはいつものこと。ここは素直に従っていた方がよさそうだ。それに…。
僕は遠い目を君の傍らにあるポリバケツに向ける。君の腰ぐらいの高さの青いポリバケツには、色とりどりの大量の水風船があった。空気ありも空気なしも、繋がっているものまである。僕が夜中バイトに勤しんでる間に、こんなものを作っていたのか。淋しくさせていたのかと思うと、君の労力を無駄にしてしまうのは、あまりにも忍びなかった。
「よし、じゃあ投げるよ」
青をひとつとって、君に投げる。勿論手加減したけど、青玉は綺麗に君の肩にヒットした。
「やったな!」
君はピンクの水風船を全力で投げてきた。正直避けられるものだったけれど、そのまま当たる。コートのボタンの角に当たり、水が弾けた。焦げ茶のシミが広がる。
「ご、ごめん!」
慌てて駆け寄ろうとする君を手で制し、
「気にしないで。続けるよ」
と、今度は緑の水風船を投げた。
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