第二十二話 幼顔の兵
「──なるほど、旅の方々でしたか。それは着いて早々にお見苦しいところをお見せしてしまいましたね」
「いえ、とんでもない。…しかし、先程のバロ族とかエイレン族というのは…」
イリアスの問いに、幼顔の兵が頷く。
「地方ではなかなかその目に触れることはないので分かりづらいかも知れませんが…このマハタイトには複数の民族が点在しています。一番多いのがゴウ族。そして二番目にウカ族。その他に先程のバロ族やエイレン族など、様々な少数民族が。エル=エレシアには多くの民族が集まっているのです」
「その、少数民族に対してなんらかの弾圧が行われているということですか?」
ウルヴンの問いに、兵は首を振った。
「いえ、先程も申しました通り、民族間での差別は法により禁じられております。しかし…中には賄賂を受け取り、特定の民族に便宜を図るものが…」
「はあ、はあ…ここにおられましたか」
がしゃがしゃと音を立てながら案内役の門兵がイリアス達の元に駆け寄った。
「全く、勝手に行動されては困ります。さあ、早くこちらへ…」
「…そうか、どうやら邪魔をしてしまったようですね」
「あ、これは…」
門兵は深々と頭を下げ、その高い背を縮こまらせて恐縮している。幼顔の兵はそれを気にせずイリアスに向き直った。
「さあ、用事がおありなのでしょう。こちらは上手くまとめておきますので、お早く」
「ありがとうございます、助かりました」
幼顔の兵は答えるイリアスを見やると、笑顔を浮かべた後に踵を返し去っていった。イリアス達はしばらくその颯爽とした後姿を見送っていた。
「立派な若者だな」
「ええ。この国をどのような人物が治めているのか、どのような者たちが支えているのか…興味が湧いてきましたね」
ガトラの呟きにウルヴンが答える。イリアスはその横で何かを思いつめるように立ち尽くしていた。
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